SNSでユーザーが公開した情報を第三者が収集することは合法なのか?LinkedInとhiQ Labsの場合
SNSで公開された情報の取扱いが争点となっているLinkedIn対hiQ Labsの訴訟では、2017年と2020年に「公開されたプロフィールの収集は誰が行っても許される」という見解が裁判所によって示されていました。しかし、2021年6月14日にはアメリカ合衆国最高裁判所がこれまでの判決を覆す決定を下し、情報保護に関する法律である「Computer Fraud and Abuse Act(CFAA)」の法的解釈に注目が集まっています。
U.S. Supreme Court revives LinkedIn bid to shield personal data | Reuters
https://www.reuters.com/technology/us-supreme-court-revives-linkedin-bid-shield-personal-data-2021-06-14/
LinkedInでは、ユーザーのプロフィールが誰でも見られるように公開されています。hiQ Labsはこのプロフィールデータをスクレイピングによって取得し、業務に活用していました。LinkedInは、このhiQ Labsによるスクレイピング行為がCFAAに反していると主張し、2017年にはLinkedInがhiQ Labsからのアクセスを制限したことから、両社による訴訟が展開されました。
訴訟の結果、裁判所は「hiQ Labsが収集しているデータは、誰でもアクセスできるように公開されたプロフィールデータである。そのため、プロフィールデータを使えないようにアクセスを規制するというLinkedInの行動は、相手を問わずアクセスを規制することと等しい」という見解を示し、LinkedInに「hiQ Labsに対するアクセス制限を解除する」ように命じる判決を下しました。
スクレイピングでLinkedInの公開情報を活用することに問題はないと裁判所が判断 - GIGAZINE
上記の判決に対して、LinkedInは「LinkedInは、ユーザーが公開している情報をコントロールする力を守るために戦い続ける」とコメントし、アメリカ合衆国第9巡回区控訴裁判所に控訴しました。しかし、控訴審でも「公開された情報はCFAAの適用範囲外である」として、一審と同様に「訴訟の継続中はhiQ Labsに対するアクセス制限を禁じる」という判決が下されました。
2020年には、控訴裁判所が「CFAAは、ハッキングなどによって故意に特定の相手の情報を抜き取ることを規制する法律であり、認証を経なければ閲覧できないような情報にのみ適用される」というコメントを公開。LinkedIn対hiQ Labsの訴訟は「公開情報の取り扱いに関する問題を根底から揺るがすことになる」として大きな注目を集めました。
インターネットに公開された情報は「法律による保護の対象ではない」と裁判所が認める - GIGAZINE
2020年まではLinkedInに不利な判決が続いていましたが、2021年6月14日、これまでの判決を覆す決定が下されることになります。これは、2021年6月3日の裁判の結果を受けてのもの。
6月3日の(PDFファイル)裁判では、警察官が業務とは無関係なナンバープレートの照会を行ったことが問題となり、CFAAに規定される「権限を越えたアクセスとは何か」が争点となりました。この判決を基に、アメリカ合衆国最高裁判所は、アメリカ合衆国第9巡回区控訴裁判所に対してLinkedIn対hiQ Labsの訴訟を再検討するように求めました。今後、CFAAが裁判所によってどのように解釈されるのか、大きな注目が集まっています。
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