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「リンク税」などEUがデジタル著作権法を改正する「改正著作権指令案」に注目しなければならない理由

By James Ledbetter

ウェブサービスに著作権フィルタリングやリンクを貼るだけで著作権料がかかるリンク税を課すEUの改正著作権指令案についての投票が2018年9月に欧州議会で実施されます。この動きに対し、Wikipediaを運営するウィキメディア財団は「インターネットを破壊する」として警鐘を鳴らしています。

Your internet is under threat. Here’s why you should care about European Copyright Reform
https://medium.com/freely-sharing-the-sum-of-all-knowledge/your-internet-is-under-threat-heres-why-you-should-care-about-european-copyright-reform-7eb6ff4cf321

EUではインターネット上にアップロードされたコンテンツの著作権を保護するための法律を整える取り組みを進めています。しかしその中身はYouTubeのようにユーザーからのコンテンツ投稿が可能なウェブサービスに対して、著作権データベースに照らし合わせて著作物のフィルタリングを課したり、リンクを貼るだけで著作権料がかかる税金が導入されたりという仕組みが含まれており、自由なインターネット空間の存続の大きな障害になるものとして反対意見が寄せられていました。


2018年7月5日には改正案の是非を問う投票が欧州議会で実施され、反対318・賛成278・棄権31という結果で否決。案はいったん差し戻されて見直しが行われ、9月10日に2回目の投票が行われることになります。この案はEUの「指令」に相当するもので、改正案が議会を通過するとEU各国がその内容をもとに独自の国内法を制定するという流れになります。

EUの改正著作権指令案に対する投票は反対多数で否決 - GIGAZINE


2回目の投票を控え、ウィキメディア財団はMediumで声明を発表しています。欧州議会が最初にインターネットにおける著作権に関する法律を設けたのは2001年のこと。当時はまだウェブサイトの数が3000万以下で、その約20年後の現在のようにインターネットが社会のあらゆる所に浸透するとイメージできている人は一部でした。2018年時点のインターネットはより複雑で、世の中には数え切れないほどのサイトが存在し、数々のウェブサービスやアプリがインターネットを介して機能する時代となっています。

ウィキメディア財団の声明では、2001年に作られた法律はもはや「時代遅れ」と言わざるを得ない状態にあり、近年の実態に合わせてアップデートすることが必要であると認める一方、その中身に対する反対意見が述べられています。

Wikipedia上では何百万人というユーザーがコンテンツを読むと同時にコンテンツそのものを作り出すという役割を担っています。Wikipediaにアップロードされる写真はWikimedia Commonsのために提供されると同時に、知識を無料で提供する他のWikipediaプロジェクトにおいても貢献することになります。今回の改正案についてウィキメディア財団は、このようなWikipediaおよび類似の独立した非営利のウェブサイトに深刻な影響を及ぼす可能性があると指摘しています。

By Tommy Elmesewdy

その上でウィキメディア財団は、欧州議会の議員に対して芸術や歴史、文化に関するパブリックドメイン作品のための重要な保護を加えること、および、すでに著作権が消滅した既存の作品に対する新たな排他的権利を制限することを求める意見を表明しています。

またウィキメディア財団は、アップロードされたコンテンツがオンラインで公開される前に自動的にフィルタリングすることを可能にするシステムの導入を推奨する提言についても社会は注視する必要があると指摘。事前フィルタリングの義務化とユーザーアップロードに関する法的責任が増加することにより、各プラットフォームは高コストかつ多くの場合においてバイアスがかかるシステムをコンテンツのチェックとフィルタリングのために導入することを強いられます。このような仕組みはすでに一部で取り入れられてはいますが、例えばすでにパブリックドメイン化されているベートーベンやバルトークといったクラシック音楽をBGMに使ったYouTubeムービーが著作権侵害の通知を受け取り続けた一件のように、問題を含んでいるものでもあるとウィキメディア財団は指摘。

このように、欧州議会で審議が進められている改正著作権指令案は現在のインターネットの優れた点を損なうものになるとウィキメディア財団は問題点を提示しています。また、指令案を形作る際に行われた議論は大規模な著作権保有者と営利目的のウェブサイトによって支配されてきたとも指摘。そのような利害関係にある集団によって新たに形作られようとしている規制枠について、ウィキメディア財団は繰り返し警鐘を鳴らしています。

By Roger

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in メモ, Posted by darkhorse_log

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