中国製ドローンがペンタゴンの調査をクリアして政府機関による利用が推奨されたことが判明
アメリカ政府は中国によるサイバー攻撃への懸念を強めており、2019年10月末にはアメリカ内務省が保有する800機以上の中国製ドローンを使用停止にするなどの措置を執っています。そんな中、ドローン最大手の中国企業・DJI製のドローンについて調査したアメリカ国防総省(ペンタゴン)が、「ドローンにセキュリティ上の問題は見られなかった」と報告するレポートを作成していたことが判明しました。
Pentagon report clears use of drones made by top Chinese manufacturer | TheHill
https://thehill.com/policy/defense/556370-pentagon-report-clears-use-of-drones-made-by-top-chinese-manufacturer
Pentagon audit cleared two DJI drones.
https://dronedj.com/2021/06/01/report-pentagon-audit-clears-at-least-two-dji-drones/
The government’s been worried about DJI drones — the Pentagon now says they’re safe - The Verge
https://www.theverge.com/2021/6/1/22463946/dji-drone-ban-pentagon-department-of-interior
中国とアメリカの貿易摩擦が深刻化する中で、アメリカ商務省はさまざまな中国企業を規制対象のリストに追加しています。DJIも2020年12月に、「遺伝子収集やハイテク監視技術などを提供することによって広域な人権侵害を可能にしたこと」を理由として、アメリカ商務省による禁輸リストに追加されました。
ドローン世界最大手の中国企業「DJI」をアメリカ商務省が禁輸リストに追加、理由は「人権侵害への技術的荷担」 - GIGAZINE
そんな中、アメリカの政治専門紙であるThe Hillは現地時間の2021年6月1日、ペンタゴンが5月6日付けで作成した内部レポートを入手したと報じました。このレポートは、DJIが製造するドローン「Mavic Pro」「Matrice 600 Pro」についての調査結果を記したものだそうです。
The Hillによると、レポートには「DJI製のドローンは悪意のあるコードを有していない」と記されており、「アメリカの政府機関や軍隊による利用が推奨される」と結論付けられているとのこと。なお、レポートの著者とされているアメリカ陸軍特殊作戦コマンド所属のAdam Prater氏は、The Hillのコメント要請に応じませんでした。
以前からDJI製ドローンのセキュリティについてはさまざまな調査が行われてきましたが、アメリカ国土安全保障省が2019年に行った(PDFファイル)調査やコンサルティング企業のブーズ・アレン・ハミルトンが2020年6月に発表した調査でも、DJI製ドローンにセキュリティ上の問題は見つかっていません。
今回のレポートはDJI製ドローンのうち2つのモデルしか調査していないものの、従来の調査結果を裏付けるものであり、アメリカ政府のドローン利用を再開させるDJIの取り組みを後押しする可能性があります。DJIの広報担当者であるAdam Lisberg氏は、「このアメリカ政府のレポートは、私たちやその他の独立したセキュリティ検証機関が何年も前から言ってきた、『DJIのドローンは政府や企業の業務において安全である』ということを最も強力に裏付けるものです」と、The Hillに述べました。
なお、ペンタゴンのレポートでDJI製ドローンの使用が推奨されても、依然としてアメリカ商務省による禁輸リストにはDJIが登録されているため、アメリカの企業がDJIに技術を販売することはできません。また、2021年5月にアメリカ合衆国上院に提出された「U.S. Innovation and Competition Act(アメリカイノベーションおよび競争法)」が可決されれば、2023年から5年間はアメリカ政府がDJI製のドローンを購入できなくなるとのことです。
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