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AI搭載の「自動飛行ドローン」を警察が運用している


アメリカの南カリフォルニアでは、警察が人工知能(AI)を搭載した自動飛行が可能なドローンを運用しているとThe New York Timesが報じています。自動飛行可能なドローンを警察が運用することで、市民のプライバシーが侵害されると公民権団体からは懸念の声があがっています。

Police Drones Are Starting to Think for Themselves - The New York Times
https://www.nytimes.com/2020/12/05/technology/police-drones.html

Go read this NY Times report about how police departments are using drones - The Verge
https://www.theverge.com/2020/12/6/22156987/go-read-this-police-drones-skydio-dji-privacy

カリフォルニア州サンディエゴ郡の都市であるチュラビスタでは、地元警察が「911」の通報を受けた際、ボタンを押すだけでドローンを飛ばすことができます。

実際、チュラビスタ警察が運用するこのドローンは、麻薬捜査などの役に立っているそうで、麻薬捜査官が目視では確認できなかった犯人の挙動(拳銃とヘロインをゴミ箱に捨てるなど)をドローンのカメラで撮影することに成功したことで、逮捕が円滑に進んだという事例があるそうです。

チュラビスタ警察でドローンが運用されるようになったのは2018年からで、それ以来、1日15回ほどの緊急通報に対してドローンが出動しています。そのため、過去2年間でのドローンの出動総数は4100回以上にもなるとのこと。


チュラビスタ以外にもドローンを運用している警察は多くあり、ハワイやニューヨークでは何年も前からドローンを運用してきました。ただし、これらの都市で運用されているドローンは手動で飛行するもので、パトカーのトランクにドローンを積んで現場へ急行し、現場でドローンを飛ばすというのがほとんどだそうです。

一方で、チュラビスタ警察の運用するドローンは、自動運転車に用いられているのと同じ最新テクノロジーを導入した、荷物の配達・建物の検査・軍事偵察など、さまざまな分野を変革させる可能性のあるドローンです。自動飛行可能であり、高性能なカメラも搭載していることから、1度のフライトで数十万円もの費用がかかるヘリコプターの代替になるものとして期待されています。


しかし、これらのドローンに新しく導入された自動化技術が市民のプライバシーを侵害するものであるとして、公民権団体から批判されています。特に懸念されているのは自動化されたドローンが「車両と人を自動で追跡することができる」という点です。警察が多くのドローンを運用すればするほど、警察は都市で生活する市民をカメラで監視できるようになり、市民のプライバシーが大きく侵害されていくことになると主張しているわけ。

アメリカ自由人権協会の上級政策アナリストであるジェイ・スタンリー氏は、「コミュニティは警察の運用するドローンプログラムについて、厳しい指摘をするべきです。このテクノロジーの力と適用範囲が拡大するにつれ、プライバシー保護の必要性が高まっていきます。ドローンは既知の犯罪を捜査するために使用することができますが、同時に犯罪を引き起こす可能性のあるセンサーにもなり得ます」と語り、警察が運用するドローンに懸念を示しました。

新型コロナウイルスのパンデミック下において、人との距離を保ちながら捜査を行うことができるということで、ドローンの運用を決めた警察署がチュラビスタ以外にもあります。カリフォルニア州レドンドビーチの警察署も新しくドローン運用を決めた警察のひとつ。同警察のRahul Sidhu氏は、ドローン運用について「他人との露出を制限しようとしているだけです。時には警察官を派遣せずに、ドローンだけを派遣することが可能になります」と語り、あくまでも人との接触を極力減らすためにドローンを導入したと主張しています。


Sidhu氏は同時に、ドローンがより安価で強力なものになるにつれ、都市部での取り締まりにおいて「ドローンがより効率的な方法になる」と語りました。実際、チュラビスタ警察ではすでにドローンが緊急事態に対応するためのシステムの一部となっており、同警察にとって不可欠なテクノロジーとなっているとのこと。同警察のドローンはチュラビスタ市内の約3分の1をカバーすることが可能で、緊急通報の70%に対応することができるそうです。

チュラビスタ警察は連邦航空局(FAA)に3つめの発着場を設置するための許可を申請しており、この発着場が完成すれば、サンディエゴからメキシコ国境にかけて広がるチュラビスタ市内全域をドローンでカバーすることが可能になる模様。なお、FAAの規制により、ドローン操縦者が目視できる範囲を超えてドローンを飛ばすことはできませんが、チュラビスタ警察はこの規制に対する免除を受けているため、操縦者は発着場から3マイル(約4.8km)の距離までドローンを飛ばすことが可能です。


チュラビスタ警察の運用するドローンが搭載する「車両や人を追跡するためのシステム」は、ドローン開発企業のSkydioが提供しています。このシステムによりボタンひとつでドローンを現場へ急行させたり、現場から撤収させたりすることが可能です。また、Shield AIがサンディエゴ警察に提供しているドローン用の自動運転システムは、操縦者なしでドローンを建物内に侵入させることが可能で、SkydioやDJIといった企業も同様のシステムを構築中であると報じられています。

チュラビスタ警察では、ドローンが撮影した映像を警察官が装着するボディカメラと同じように扱っています。つまり、ドローンが撮影した映像は証拠として保存され、承認を得た場合にのみ公開されます。ただし、ドローンは定期的なパトロールには使用されておらず、あくまでも緊急通報に対してのみ出動が許可される模様です。

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in ハードウェア, Posted by logu_ii

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