サイエンス

野ウサギが掘り起こした石ころが考古学的に貴重な「9000年前の石器」だということが判明、さらに土器のかけらも発見される


イギリスのスコークホルム島で、野生動物保護団体の職員が野生のウサギが巣穴近くで見つけた石が、実は「約9000年前ごろの人類が使っていた石器」だったことが分かりました。

The Skokholm Blog
http://skokholm.blogspot.com/2021/03/for-second-day-in-four-highlight-of-day.html

Rabbits dig up 9,000-year-old artifacts on 'Dream Island' | Live Science
https://www.livescience.com/rabbits-dig-up-uk-artifacts.html

風光明媚なことから「夢の島(ドリームアイランド)」とも呼ばれるスコークホルム島は、希少な渡り鳥を始めとした野生生物が多数生息していることから、イギリスの自然保護法に基づく特別科学的関心地区に指定され、環境の保全と動物の観察を職務とする住み込みの監視員が配置されています。

2013年からスコークホルム島の監視員を務めているリチャード・ブラウン氏とジゼル・イーグル氏は2021年3月に、同島にあるウサギの巣穴近くで細長い形状をした小石を発見しました。

by Richard Brown & Giselle Eagle/WTSWW

小石が「面白くて珍しい形をしている」と思ったブラウン氏らは、石の写真を撮ってウェールズ古代歴史遺跡王立委員会の研究者であるトビー・ドライバー氏に送りました。そして、ドライバー氏が写真を先史時代の石器に詳しい考古学者のアンドリュー・デイビッド氏に写真を見せたところ、小石はスコークホルム島に移住した初期の人類が使っていた石器だということが判明しました。

デイビッド氏は、ブラウン氏らにあてたメールの中で「写真の石は、明らかに中石器時代後期の『面取りされた石器(bevelled pebble)』でした。この石器は、約6000~9000年前に狩猟採集社会を営んでいた人類のもので、アザラシの皮を使ったカヌーを作る時や、貝などの食べ物を調理する時に使われた道具だと考えられています」と述べています。

by Richard Brown & Giselle Eagle/WTSWW

同様の石器は、イギリスのコーンウォール州やフランス北部の海岸沿いにある遺跡などでよく見つかりますが、スコークホルム島から出土したのはこれが初めてとのこと。そのためデイビッド氏は、この石器は中石器時代の人類がスコークホルム島に住んでいたことを示す有力な証拠になると見ています。

思わぬ発見から、ウサギが掘り返した石を注意深く観察するようになったブラウン氏らは、デイビッド氏からメールを受け取った数日後にさっそく陶器片を見つけ、その写真をウェールズ国立博物館の考古学者であるジョディ・ディーコン氏に送りました。

by Richard Brown & Giselle Eagle/WTSWW

ディーコン氏によると、陶器片は紀元前2100年~1750年ごろの青銅器時代初期に作られたものだとのこと。ディーコン氏は問題の陶器片について、「当時のウェールズ西部の地域では、死者は火葬されてからつぼに入れて埋葬されていました。この陶器のかけらも、そのつぼではないかと思います」と話しています。

また、デイビッド氏らはブログで「2つは非常にエキサイティングな発見でした。何千前年も前に人々がこの島にいて、ある者はアザラシの皮を加工して船を作り、ある者は死者を埋葬していたということに思いをはせると、思わず感動してしまいます」とコメントしました。

考古学的に重要な遺物が立て続けに2つも見つかったことから、島の管理をしているウェールズ王立委員会は、2021年中に本格的な発掘調査の実施を予定しているとのことです。

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in サイエンス,   生き物, Posted by log1l_ks

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