なぜチョコの香りと味が「微生物による発酵」によって決まるのか?


「発酵食品」というとヨーグルトやみそが思い浮かびますが、実はチョコレートの製造工程でも「微生物による発酵」が重要であり、カカオ由来であるチョコレートの香りや味は発酵によって生み出されていると、コロラド州立大学で食品科学を研究するケイトリン・クラーク氏が解説しています。

Chocolate's secret ingredient is the fermenting microbes that make it taste so good
https://theconversation.com/chocolates-secret-ingredient-is-the-fermenting-microbes-that-make-it-taste-so-good-155552


カカオからチョコレートを作る工程は以下の通り。
1:カカオの実を割って、中に入っている種子を果肉ごと取りだす。
2:取り出した種子を3日~10日かけて乾燥させ、さらに天日干しする。
3:乾燥した種子を焙煎(ばいせん)する。
4:焙煎した種子の殻をむいてから粉砕し、ペースト状にする。
5:ペースト状になったカカオに砂糖や粉乳を加えて、さらに何十時間も混ぜる。
6:テンパリングを行い、温度調整をする。
7:ペーストを型に流し込んで固める。

発酵は、カカオの種子を乾燥させる段階で起こっています。酵母が豆にこびりついている果肉を分解し、さまざまな香り分子を生成します。


また、果肉が分解されたことでカカオの内部に酸素が加わり、酵母の数が減り、酵母が生成したアルコールを酢酸に変える好気性のバクテリアが繁殖します。このバクテリアは酵母が生成したアルコールを酢酸に変えてしまいます。そして、この酢酸がカカオの種子に染みこむことで、カカオの種子に含まれる脂肪が凝集し、タンパク質が分解され、焙煎段階でチョコレート特有の香りを生み出します。

バクテリアはチョコレートの香りだけではなく、味にも大きな影響を与えます。酢酸菌は渋みを生み出すポリフェノールを、キノンと呼ばれる化学物質に分解します。これによって、カカオは単なる苦い物質から、ナッツに近いうま味を持つようになります。さらに、カカオに含まれる赤紫色のポリフェノールが茶色のキノンに変化することで、チョコレートは茶色になります。

また、酢酸がゆっくりと蒸発し、カカオに含まれる糖分が使い果たされると、枯草菌などが繁殖します。チョコレートの製造過程で温度管理を間違えて枯草菌が増殖しすぎると、腐ったチーズのような香りが加わってしまい、チョコレート作りは失敗してしまいます。


チョコレートの香りや味は微生物の発酵によって決定されるため、カカオ農家の環境や風土に大きく依存します。チョコレートメーカーは、求めている香りや味に応じて豆を厳選し、さらにフレーバーを加えることで、多種多様なチョコレートを製造しているというわけです。

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
日本のチョコレートメーカーは環境や労働にとって「世界最悪」という評価 - GIGAZINE

世界で2番目に高価なスパイスであるバニラ栽培の歴史 - GIGAZINE

「チョコレートの雪」が降る事態がスイスで発生 - GIGAZINE

100グラムあたり6万7000円の「世界一高価なチョコレート」が販売開始 - GIGAZINE

世界初、80年ぶりとなるチョコレートの新フレーバー「ルビー」を使ったキットカットを食べてみました - GIGAZINE

in , Posted by log1i_yk

You can read the machine translated English article here.