サイエンス

「人類の起源は20万年前のアフリカ南部に広がる湿地にあった」という研究報告

by pixabernhard

「人類共通の祖先である『ミトコンドリア・イブ』は12~20万年前のアフリカ大陸に住んでいた」というアフリカ単一起源説が、現代の人類学における主流学説となっています。そんな人類の起源を、ゲノムの解析と現地調査によってより具体的な地域に絞り、「現代人の祖先はアフリカ南部にかつて存在していた広大な湿地に住んでいた」と主張する研究論文が発表されました。

Human origins in a southern African palaeo-wetland and first migrations | Nature
https://www.nature.com/articles/s41586-019-1714-1


Ancestral home of modern humans is in Botswana, study finds | Science | The Guardian
https://www.theguardian.com/science/2019/oct/28/ancestral-home-of-modern-humans-is-in-botswana-study-finds


人類の起源を探る鍵となるのは、ミトコンドリアDNAです。ミトコンドリアDNAは母親のみから遺伝するため、ミトコンドリアDNAの遺伝子型を調べることで遺伝的な系統をさかのぼることができます。

研究チームがアフリカ南部に住む人たちから採取した1217点のミトコンドリアDNAサンプルを分析した結果、アフリカ南部のナミビアからボツワナにかけて、ミトコンドリア・イブに最も近い遺伝子型を持つL0グループとその派生型を持つ人が多く確認されたとのこと。

次に、研究チームは考古学・地質学の側面から調査を行いました。その結果、ボツワナ北部に広がるマカディカディ塩湖がある場所には、広大な湿地があったことが判明。研究チームは、「現代人の起源となる祖先はこのマカディカディ塩湖周辺の湿地帯で、およそ7万年にわたって生息していた」と論じました。

by freekvanootegem

研究チームによると、L0グループの一部集団がおよそ13万年前に湿地帯から北東へ移動し、およそ11万年前に別の集団が湿地帯から南西へ進んだと考えられるとのこと。北東へ移動した集団は農業を覚え、南西へ移動した集団は沿岸部で狩猟や漁を覚えたと、研究チームは主張しています。

ガーバン医学研究所の遺伝学者であるバネッサ・ヘイズ教授は「現代人の起源が約20万年前のアフリカにあったことは以前から知られていましたが、これまで正確な位置はわかっていませんでした」「北東や南西へ移動した集団は、人類最初の探検家でした」と述べました。

しかし、ロンドン自然史博物館で人類史を研究するクリス・ストリンガー氏は「ヘイズ教授らの研究はわずかなゲノムや地域、物的証拠に焦点を当てたものであり、他のデータを検討すると人類の起源は複雑で、把握できません」と語り、ヘイズ教授らの研究には懐疑的な見方をしています。

by quicksandala

ストリンガー氏は、「父系遺伝であるY染色体を分析すると、その起源が西アフリカにあることが示唆されている」と指摘しています。「ミトコンドリアDNAだけではなく、他のゲノムについても調査を重ねると、現代人の起源はアフリカ大陸のさまざまな地域に求めることができます。もちろん、大陸外のグループからの交配があった可能性も示唆されています」とストリンガー氏。

また、ペンシルバニア大学の遺伝子学者であるサラ・ティシュコフ氏も「研究には含まれていない遺伝子型の古い系統が他の地域にないことがどうしてわかるのでしょうか? アフリカにおける現代人の地理的起源については、長距離の移動が含まれるため、現代人の変動パターンに基づいて推論することは不可能です。私たちの祖先は過去8万年以内にアフリカを出て世界中に広がっていったのです」とコメントしています。

ケープタウン大学の考古学者であるレベッカ・アッカーマン氏は「現代ゲノムのわずかな解析から、現代人の地理的起源について包括的な結論を出すことは非常に問題が多く、時代遅れです」と批判しました。

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in サイエンス, Posted by log1i_yk

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