ファイザーが開発する経口投与の新型コロナ治療薬「PF-07321332」とは?
by Can Pac Swire
新型コロナウイルスワクチンを開発している製薬会社のファイザーは、「PF-07321332」と呼ばれる新型コロナウイルス感染症治療薬の臨床試験を開始しています。第I相臨床試験は2021年5月25日に終了する予定で、さらに臨床試験が順調に進めば、年末までに市場へ投入される可能性があります。
Revealed: How a single pill home cure for Covid could be available this year
https://www.telegraph.co.uk/global-health/science-and-disease/revealed-home-cure-covid-could-available-year/
Pfizer's at-home pill to 'cure' COVID-19 might be available by the end of the year | Daily Mail Online
https://www.dailymail.co.uk/health/article-9513319/Pfizers-home-pill-cure-COVID-19-available-end-year.html
ファイザーが開発しているPF-07321332は「プロテアーゼ阻害薬」と呼ばれる種類の薬です。新型コロナウイルスは感染者の体内で増えていくために、必要なタンパク質を感染した細胞に作らせます。そして、細胞に作らせたタンパク質を適切に切断して完成させる酵素がプロテアーゼです。PF-07321332はこのプロテアーゼの働きを阻害することで、新型コロナウイルスの増殖を防ぐ働きをします。
あらかじめタンパク質を発現する遺伝子を取り込んで免疫を得るワクチンと異なり、PF-07321332はあくまでも体内での新型コロナウイルス増殖を抑える治療薬です。そのため、PF-07321332は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の初期症状が見られた時に処方されることとなります。
また、PF-07321332は経口投与の錠剤であり、家庭で常備することが容易なのもPF-07321332の大きな特徴といえます。
なお、PF-07321332は、臨床試験ではエイズの治療に使用される抗ウイルス剤「リトナビル」と組み合わされて処方されているとのこと。リトナビルは、被験者のPF-07321332の血中量を増やすための「ブースター」として機能するそうです。
イギリスの一般紙・テレグラフによれば、進行中の臨床試験は3つのフェイズで行われ、合計で145日間にわたるとのこと。最初のフェーズである第I相臨床試験は18歳から60歳までの被験者60人を対象に行われ、5月末に終了予定。順調にいけば、すべての臨床試験が2021年7月中旬に終了し、2021年秋には病院でも処方されるようになる可能性があるとのこと。
テレグラフは「ファイザーは効果のある薬を製造する必要があるだけではなく、新型コロナウイルスが依然として公衆衛生上の脅威となっている間に開発を終わらせる必要があります」と述べました。
アメリカのニュースメディアであるDailyMailが、PF-07321332についてアメリカ国立衛生研究所や保健福祉省にコメントを求めたところ、返答はなかったとのこと。また、ファイザーの広報担当者は、「アメリカ政府機関がPF-07321332の臨床試験に資金を提供しているか」「アメリカ政府がPF-07321332を注文したかどうか」という質問に対して答えることを拒否しました。
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