FBIへの協力を拒んだ男性が航空機への搭乗を禁止されてしまう
アメリカでは、テロリストなどの重大犯罪に関わる可能性のある人物の航空機の利用を制限するノーフライリストが運用されています。ミシガン州で自動車エンジニアとして働いていたアーマッド・チェブリ氏は、FBIからの協力要請を拒否したことを理由にノーフライリストに記載され、航空機を利用できなくなったことをアメリカ自由人権協会(ACLU)を通して告発しています。
I Refused to Become an FBI Informant, and the Government Put Me on the No Fly List
https://www.aclu.org/news/national-security/i-refused-to-become-an-fbi-informant-and-the-government-put-me-on-the-no-fly-list/
CHEBLI V. KABLE: LAWSUIT CHALLENGING PLACEMENT ON NO FLY LIST | American Civil Liberties Union
https://www.aclu.org/cases/chebli-v-kable-lawsuit-challenging-placement-no-fly-list
チェブリ氏はシカゴで生まれ、高校と大学の3年間をレバノンで過ごした後、ミシガン州で大学を卒業しました。その後、チェブリ氏は妻と2人の息子と共にミシガン州で暮らしていました。
チェブリ氏は2018年8月に市役所から「市の許可違反を解決する手続きを行ってください」という連絡を受け取ります。しかし、市の要望に応じて市役所へ向かったチェブリ氏を待っていたのは2人のFBI捜査官でした。
FBI捜査官は「チェブリ氏が属するコミュ二ティの人々がアメリカに危害を及ぼす可能性がある」と述べ、コミュニティに関する情報を提供するように迫ったとのこと。さらに、FBI捜査官はチェブリ氏のアラビア語やレバノンでの経験、エンジニアとしての能力をFBIのために役立てるように要求しました。
チェブリ氏は「情報提供者になることは、個人的な倫理に反する」と考え、FBIに対して「協力したくない」と繰り返し主張しました。しかし、FBI捜査官はチェブリ氏へ協力するように迫り続け、チェブリ氏を「テロリストグループと関係があるのではないか」と疑い始めたとのこと。さらに、FBI捜査官はチェブリ氏が情報を提供しなかった場合、チェブリ氏の妻が逮捕され、移民ステータスに影響を与える可能性があると述べ、チェブリ氏に対して「アメリカにとどまり、情報提供者になる」か「情報を提供せず、アメリカを去る」かの2択を迫った上に、もし情報提供者にならずに国内に居続ければ、チェブリ氏とチェブリ氏の家族は監視対象になると脅迫しました。
チェブリ氏は「アメリカ政府が私たちイスラム教徒を差別的な疑いの目で見ていることは知っています。FBI捜査官は政府の力を背景に、私がやったこともないような事柄を非難してきました。私はとても恐怖を感じました。また、家族の安全も心配でした」と述べ、FBI捜査官の高圧的な要求を振り返っています。
その後、FBIからチェブリ氏への協力要請は2カ月以上続きました。その間、チェブリ氏は不安とストレスで十分に眠ることも食べることもできなかったと語っています。FBIからの要求に対して身の危険を感じたチェブリ氏は、家族をレバノンへと退避させました。
その1カ月後、チェブリ氏もレバノンへと渡航しようとします。しかし、航空機へ搭乗しようとするチェブリ氏は、航空会社の係員から「あなたは搭乗できません。アメリカ政府に連絡する必要があります」と告げられます。その後、チェブリ氏は自らがノーフライリストに記載されていることを知りました。
チェブリ氏はレバノンへと渡航するために、アメリカ政府が提供するノーフライリストからの救済手続きを行おうとしました。しかし、アメリカ政府がチェブリ氏をノーフライリストに記載した正当な理由の開示を拒んでいるため、2年が経過しても手続きを進めることができていないとのこと。チェブリ氏は「政府の対応は、私のアメリカ人としての権利を侵害しています」「ノーフライリストに名前が記載されているため、私は海外の家族や友人を訪ねたり、仕事のために海外へ出かけたり、イスラム教徒としての宗教的な巡礼の義務を果たしたりすることができません。また、妻の帰化申請が危険にさらされている可能性もあります」と主張し、ACLUの助けを借りて、政府の行動とノーフライリストへの記載に対する異議を申し立てる訴訟を起こしています。
なお、アメリカのニュースメディアCNNがFBIに対して意見を求めたところ、「FBIは係争中の訴訟についてコメントすることはありません」と回答されたとのことです。
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