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AppleにとってFBIとの法廷闘争は「会社を賭けた」決断だった

by Rishi Deep

あのスティーブ・ジョブズからAppleのCEOの座を受け継いだティム・クックCEOの伝記「Tim Cook: The Genius Who Took Apple to the Next Level(ティム・クック:Appleを次のレベルへと導いた天才)」が、2019年4月16日に発売されます。この伝記の中で、AppleとFBIが繰り広げた法廷闘争について言及された箇所があり、書籍の出版に先駆けて海外メディアのTechCrunchが一部抜粋した引用文を公開しています。

New book looks inside Apple’s legal fight with the FBI | TechCrunch
https://techcrunch.com/2019/04/01/inside-apple-fbi/

2015年12月にアメリカ・カリフォルニア州で起きた、サンバーナーディー銃乱射事件の捜査において、FBIは犯人が所有していたiPhoneを調べるためにAppleに端末のロック解除を要求しました。しかし、Appleはアメリカ政府のためにiPhoneのロック解除が可能となるツールを開発すれば、政府が「何百万台という端末に簡単にアクセスできるマスターキーを得るようなもの」であり、これはAppleが構築してセキュリティ面での信頼性を壊す行為に他ならないと政府の要求を批判しました。

「iPhoneの暗号を回避できるバックドアを作れ」という政府要請をAppleが拒絶 - GIGAZINE


その後もAppleとFBIは激しいやり取りを続けていたのですが、最終的にはFBIがApple以外の第三者に端末のロック解除を依頼したことで、法廷闘争は終結を迎えました。

iPhoneはAppleに頼らずとも独自にアンロック可能、法廷闘争は終結へ - GIGAZINE


約3年前のこれらの出来事について、書籍の中でAppleの元顧問弁護士であるブライアン・シーウェル氏は、クックCEOはFBIの要請に対抗するという決断に「会社を賭けた」と述べています。また、シーウェル氏はFBIの要求が、その後の「あらゆる活動」における転換点となったとも説明。FBIは裁判所からの命令を要求しており、その根拠となったのは「All Writs Act」というあいまいな法律でした。FBIは「法律でカバーされていない何かしらの行動」を要求するために、All Writs Actを利用したというわけ。

シーウェル氏によると、Appleが2014年にリリースしたiOS 8の段階で、FBIは「スマートフォンへのアクセス」を要求していたそうです。しかし、司法省が押収したiPhoneに保存されているデータにアクセスできるように、Appleに対して技術的な支援を求めたところ、Appleは最新のiPhoneの場合ロック解除は「不可能である」と回答しており、クックCEOの伝記の著者であるLeander Kahney氏によれば、これがAppleに圧力をかける大きなきっかけのひとつとなったとのことです。

Appleでも「iPhoneのロック解除は不可能」、パスコードを知らない限り端末内のデータにはアクセス不可能であることが明らかに - GIGAZINE


シーウェル氏は、「FBIにとって、これは最悪の事態であるという感覚がありました」と語っています。

AppleがFBIの要請を突っぱねた際、世論が二分されており、Appleはそれを理解したうえでロック解除要請を拒否することを諦めなかったそうです。FBIとの法廷闘争に発展した後、約2か月もの間にわたってApple本社のエグゼクティブフロアには24時間365日体制のシチュエーションルームが設けられ、対策が練られ続けた模様。


その後、法廷闘争はFBIが第三者にiPhoneのロックを解除してもらったことで解決へと向かいます。しかし、FBIはロック解除のためにハッカーに1億円以上の大金を支払ったともいわれています。

iPhoneのロック解除のためにFBIは1億円以上をハッカーに払ったことが判明 - GIGAZINE


なお、シーウェル氏によるとクックCEOは政府を相手に直接訴訟を起こせなかったことに「失望している」と語っていたそうです。

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in モバイル, Posted by logu_ii

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