「親が子どもに罰を与える動画」がTikTokで増加中、フェイクでも悪影響の可能性
ショートムービー共有SNSのTikTokは多くの若者から支持を集めている一方で、子どもの親世代にも広く利用されています。しかし、必ずしも健全なものとはいえない「親が子どもに罰を与えるムービー」が増加しており、その悪影響が懸念されています。
Kid-Shaming on TikTok: When Parents Are the Online Bullies - WSJ
https://www.wsj.com/articles/kid-shaming-on-tiktok-when-parents-are-the-online-bullies-11617454801
近年では「オンライン上でのいじめ」が社会問題となっていますが、親が子どもをオンライン上で辱めるケースも見られます。TikTok上で増加しているのが「悪いことをした子どもに対する罰」を撮影したムービーであり、「けんかした罰として床の拭き掃除をさせる様子」や「騒いだ罰として子どもたちを並んで座らせる様子」などをTikTokに投稿する親が増えているそうです。
これらのムービーが全て本物というわけではなく、子どもと親が協力して撮影したフェイクのムービーも多く含まれているとのこと。アメリカのウェストバージニア州に住むデレク・ヘンズリー氏の一家は、フェイクの「子どもを罰するムービー」を頻繁に投稿するアカウントを運営しています。ヘンズリー氏が投稿してTikTok上で1200万回近く再生されたムービーがこれ。
@derek_hensley Caption this parents ##CleanTok ##VisionBoard ##tiktokpartner ##learnontiktok ##SeaShanty ##fyp ##foryou ##funny ##viral ##joke ##HomeImprovement
♬ original sound - derekhensley
ゲームをしている子どもの部屋に……
ヘンズリー氏が入ってきます。どうやらヘンズリー氏は、娘のキアラさんが部屋を掃除せずにゲームで遊んでいたことに怒っている様子。
床に落ちていたギターを拾い上げ……
テレビをギターで殴って破壊しました。
事情を知らないととんでもない虐待映像に見えますが、ヘンズリー氏とキアラさんによればこれはフェイクで、ムービーを撮ろうとした時点でテレビはすでに壊れていたものであり、撮影後、新たなテレビに交換したとのこと。
ムービーを見た人々の中にはこれがフェイクだとは考えず、ヘンズリー氏が子どもたちを虐待しているとして児童保護サービスに通報した人もいました。その結果、ヘンズリー氏の一家は事情を説明する羽目になりましたが、フェイクのムービーを投稿したことを後悔しておらず、その後も似たムービーを投稿し続けています。
ヘンズリー氏がこうしたムービーを投稿するようになったのは、2020年11月8日に投稿した「家のドアを取り去ってしまうムービー」が発端でした。
@derek_hensley ##fyp ##funny ##comedy ##aintnodoorsinthishouse
♬ WAP (Instrumental) - DJB
アメリカのヒップホップミュージシャン・Cardi Bの「WAP」という曲の替え歌で、「Ain’t no doors in this house… We ain’t raising brats.(この家にはドアがない……俺たちはガキを育てているんじゃない)」と歌うヘンズリー氏。ドアのちょうつがいに電動ドライバーを当ててネジを外し……
ドアを取り外しました。
子どもの抵抗も気にせずそのままドアを運んでいきました。このムービーはTikTokで570万回も再生されており、ヘンズリー氏はこの系統のムービーを投稿し続けることで人気を集め、記事作成時点では80万人近いフォロワーを獲得しています。
子どもに対してやり過ぎな罰を与えるヘンズリー氏のムービーには、「これが正しい子育てです」「お父さんは正しい!」「よくやった」といったコメントが付く一方、ヘンズリー氏を虐待だとして非難するコメントも多数寄せられています。中にはヘンズリー氏に殺害予告を送るユーザーや、キアラさんのアカウントに「助けが必要なら次のムービーに黒い服を着て映ってください」とコメントするユーザーもいるそうです。
ウォール・ストリート・ジャーナルに対し、ヘンズリー氏は「子どもたちは私のムービーで実際に罰せられているわけではありません」とコメント。むしろ、こうして人気を集めたムービークリップを使って自前のTシャツを作成・販売することで、これまでに4000ドル(約44万円)の利益を上げているとのこと。
小児科医であり子どもの保護に関する専門家であるフリー・ヘス博士は、TikTokで増加している「子どもを罰するムービー」について、「たとえフェイクであっても悪影響を及ぼす可能性がある」と主張しています。たとえば、フェイクのつもりのムービーを見た人が「他の家ではこうしてしつけをしているのか」と真に受け、自分の家で実践する恐れがあるためです。
当然、ムービーがフェイクではない場合は言うまでもなく有害です。多くの人々がオンラインに接続できる環境で子どもを辱めるムービーをネットに投稿することは、公衆の面前で子どもに恥をかかせるのと同様だからです。子どもを公の場で辱めることは効果的な教育方法ではないとわかっており、ヘス博士は「羞恥心は行動を変えさせるものではなく、プライドを傷つけます。恥をかかされた子どもは誰かを憎まなければならないと感じ、恥をかかせた親か自分自身を憎むようになってしまいます」と述べました。
ヘンズリー氏は自身が投稿したムービーが他の家庭に与える影響について、「私たちは大人です。誰かが私のムービーを見て子どもをこらしめることにした場合、私は責任を負いません」と述べました。なお、娘のキアラさんはウォール・ストリート・ジャーナルの取材に対し、ムービーに出演するのもフェイクのムービーを作成するのも楽しいと言ったそうです。
近年では子育てに関するムービーをTikTokに投稿する親が増えており、新たなトレンドを生み出すこともあります。2021年には、赤ちゃんがオムツの中にウンコをして絶妙な声や表情で不快感を示す様子を撮影した、「Tell Me Your Kid Is Pooping Without Telling Me」というトレンドも発生しているとのことです。
"Tell Me Your Kid Is Pooping Without Telling Me" Viral TikTok Trend Is LOL | Fatherly
https://www.fatherly.com/news/tell-me-your-child-is-pooping-without-telling-me-viral-tiktok/
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