ハードウェア

Armが新アーキテクチャ「Armv9」を発表、追加された機能とは?


Appleが開発した高性能チップ「M1」や、多くのAndroid端末に採用されるQualcommのSoCSnapdragon」シリーズは、CPUアーキテクチャとしてARMホールディングスが開発する「Armアーキテクチャ」を採用しています。そんなArmアーキテクチャの10年ぶりの新アーキテクチャである「Armv9」が2021年3月30日に発表されました。

AI、セキュリティ、用途特化型コンピューティングの未来を切り拓く、Armの最新アーキテクチャv9を発表 – Arm
https://www.arm.com/ja/company/news/2021/03/31-3-2021-arms-answer-to-the-future-of-ai-armv9-architecture

Armv9: The Future of Specialized Compute - Arm Blueprint
https://www.arm.com/blogs/blueprint/armv9

ARMホールディングスによると、Armアーキテクチャを採用したチップの出荷数は増加し続けており、過去5年間で1,000億台以上のArmアーキテクチャ採用デバイスが出荷されたとのこと。ARMホールディングスのサイモン・シガースCEOは、「AIの形作る未来を見据えた上で、私たちは最先端のコンピューティング基盤を構築し、今後訪れるであろう類を見ない課題に備える必要があります。そして、その回答となるのがArmv9です」と述べ、新アーキテクチャArmv9を発表しました。


シガースCEOはArmv9について、「今後出荷される3,000億個のArmベースチップの中核として、汎用コンピューティングの持つ経済性、設計の自由度、入手の容易さを兼ね備えながら、広範に普及し、セキュリティにも優れ、パワフルな用途特化型プロセッシングへの需要に応えていきます」と述べ、セキュリティ面やプロセス技術面での強化をアピールしています。

◆セキュリティ
ARMホールディングスのチーフアーキテクトであるリチャード・グリセンスウェイト氏は、コンピューティングにおける最大の課題は「セキュリティ」だと指摘。その上で、Armv9にハードウェアベースのセキュアな環境での演算を可能にするセキュリティ技術「Arm Confidential Compute Architecture(CCA)」を導入することを発表しました。CCAは特権的なソフトウェアを含む全てのソフトウェアがデータにアクセスしたり、変更を加えたりすることを防ぐ技術で、「コンピューティングインフラの信頼性が格段に向上します」とグリセンスウェイト氏は述べています。

グリセンスウェイト氏によると、CCAではOSやハイパーバイザーと分離された「Realm」と呼ばれる概念が用いられるとのこと。各アプリケーションがRealmを用いてデータを管理することで、例えOSが破壊されたとしても、データを確実に保護することが可能になります。


また、グリセンスウェイト氏は、「私たちは、過去数十年に渡ってメモリの安全性の低さによるセキュリティリスクに直面してきました」と主張。Armv9には、Googleと共同開発したメモリの安全性検証システム「メモリ・タギング拡張(MTE)」を搭載し、Android 11openSUSEでサポート予定であることを発表しました。


◆SVE2
ARMホールディングスによると、2020年中に、世界中で利用されるAI対応音声アシスタント機器が80億台を超え、出荷されるソフトウェアの90%以上にAIの要素が含まれることが予想されているとのこと。さらに、「AIが多様な用途に用いられている現状では、用途特化型のソリューションが求められています」と述べ、多様な用途に適応できる計算処理システムの必要性を強調しています。

Armv9は多様な用途に適用するために、世界最速のスーパーコンピュータ「富岳」の中核を支える「Scalable Vector Extension(SVE)」を拡張した「SVE2」を搭載するとのこと。グリセンスウェイト氏は、「SVE2は、画像処理・5Gシステム・VR・AR・機械学習といった幅広い用途での計算性能を向上します」とアピールしています。


また、ARMホールディングスは、周波数・帯域幅・キャッシュサイズの向上とメモリレイテンシーの低減に取り組んでおり、Armv9ベースCPUの性能を、現行のCPUよりも30%以上向上させる予定とのこと。


グリセンスウェイト氏は、「Armv9によってハードウェア・ソフトウェア間の溝が埋まることで、開発者にとっては、将来に向けた信頼できる演算プラットフォームの構築とプログラミングが可能になります。一方、標準化を活用することで、Armのパートナー各社は、市場投入期間の短縮やコスト管理と、独自ソリューションの開発能力向上を両立させることができます」と述べ、Armv9が開発者とユーザーの双方にメリットがあるアーキテクチャであることを強調しています。

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in ハードウェア, Posted by log1o_hf

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