サイエンス

新型コロナウイルスの変異株にワクチンは有効なのか?


病原体などの働きを抑制する中和抗体は、ウイルスに感染、あるいはワクチンを接種した後急速に体内で出現し、その後数カ月間体内に存在し続けます。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を引き起こす新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)にはさまざまな変異株が確認されていますが、ある変異株に有効な抗体が他の変異株にも有効なのかという研究が行われています。

Neutralizing Antibodies Against SARS-CoV-2 Variants After Infection and Vaccination | Infectious Diseases | JAMA | JAMA Network
https://jamanetwork.com/journals/jama/fullarticle/2777898

人間はウイルスに感染、あるいはワクチンを接種した際、体内に入ったタンパク質などの抗原に対し、それを排除する役割を担う抗体を生成します。抗原の部位・領域ごとに生成される抗体のうち、抗原が細胞に対して及ぼす生物学的な影響を中和して、細胞を防御する働きを持つものを中和抗体と呼びます。エモリー大学のVenkata Viswanadh Edara氏らは、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のある変異株に対する中和抗体が、別の変異株に対してどのように働くのかという調査を行いました。

Edara氏らは「新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の症状の発症から5~19日後の感染者グループ」から20人分、「新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の症状の発症から32~94日後で、症状が回復しつつある感染者グループ」から20人分、「第一相臨床試験を終えたモデルナのワクチン『mRNA-1273』の2回目の投与から14日後の患者グループ」から14人分の血液サンプルを入手しました。


そして血液サンプルを新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)とその変異株「EHC-083E」「B.1.1.7」「N501Y」に分け、血液中の抗体を調査し、中和抗体の力価を計測。3つのグループの中和抗体が、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)と3つの変異株にどのように働くのかを調査しました。

その結果、すべてのグループから検出した抗体は、4種の新型コロナウイルスに対する働きに統計的に有意さなしと判断される成果が生じました。この結果は、新型コロナウイルスのある種に対する免疫を獲得した場合、他の変異株に対しても継続して効果を示す可能性があるというものとEdara氏らは論文に記述しています。


一方、この調査はサンプルサイズが少なく、選択バイアスが生じている可能性があるなどといった問題が指摘されています。

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in サイエンス, Posted by log1p_kr

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