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パンデミックでは失業だけでなく「努力と報酬の不均衡」が問題になっているとの指摘


新型コロナウイルスのパンデミックは世界経済に深刻な打撃を与え、世界各国で多くの人々が失業に追い込まれたといわれています。その一方で、仕事を続けることができた人々においても「努力と報酬の不均衡」が問題になっている可能性があると、オーストラリアのアデレード大学で物理療法の講師を務めるジェシカ・スタンホープ氏らが解説しています。

Do you feel undervalued and overworked? COVID-19 is likely to affect the employed too
https://theconversation.com/do-you-feel-undervalued-and-overworked-covid-19-is-likely-to-affect-the-employed-too-143461

失業率の上昇は間違いなくパンデミックの悪影響であり、失業は健康状態の悪化と関連していると示されていますが、仕事を続けている人も健康問題の悪化とは無縁ではないとスタンホープ氏らは指摘。パンデミックの中で働き続けている人々は、労力の増加と報酬の減少という問題に直面しているとのこと。

労働者が「自分が仕事に費やしている労力に見合う報酬をもらっていない」と感じることは努力と報酬の不均衡と呼ばれています。研究によると、努力と報酬の不均衡を抱える労働者はストレスホルモンの量が増加し、うつ病心血管疾患糖尿病筋骨格の問題を抱えるリスクが高いとのこと。


パンデミックの間も働き続けている人々は、コストカットで失業に追い込まれた人々の分まで仕事をする必要に迫られたり、大きく変化した労働環境に対応することを余儀なくされたりしています。また、子どもの世話をしながらの在宅勤務や不慣れなリモートでのやり取りなど、パンデミック中の仕事は労力が増す可能性があるため、労力の増加を経験しやすい状況にあるとのこと。

さらに悪いことに、パンデミック中は経済状況が不確実になるため、従業員の報酬が減少する可能性もあるとスタンホープ氏らは指摘。減少までは行かなくとも、本来で上がるはずだった賃上げが見送られたり、昇進の機会が先延ばしにされたり、雇用保障が弱まったりするケースもあるそうです。

以上のことから、パンデミック中は従業員がより多くの労力を費やしていると感じているにもかかわらず報われているとは言いがたく、努力と報酬の不均衡を経験しやすいといえます。その結果、パンデミックの間も働いている人々に健康の問題が生じる危険性があるとスタンホープ氏は警鐘を鳴らしています。


労働者が努力と報酬の不均衡を感じているからといって、すぐに仕事を辞められるわけではありません。思い描いた理想のキャリアを守りたかったり、仕事にコミットしていたり、パンデミックの中で次の仕事を見つける自信がなかったりと、多様な要因によって仕事を続けることを選ぶ可能性があります。その結果として仕事の労力と報酬が釣り合わない状態が持続することになれば、健康が悪化するリスクが高まります。

雇用者側は従業員が努力と報酬の不均衡を感じないように配慮する必要がありますが、パンデミックの状況下では報酬を上げにくいこともあります。その場合、従業員を称賛したり感謝の言葉をかけたりすることで、多少は不満を改善できる可能性があるとのこと。また、従業員と管理職が連係して仕事の割当を変更して、従業員がやりたい仕事や将来のチャンスにつながる仕事を与えることで、タスクに圧倒されてしまうリスクを減らすことができるかもしれないとスタンホープ氏らは述べています。

パンデミックのような時期は「仕事があるだけ幸せ」といった声も職場の内外から聞こえますが、こうした発言は従業員が仕事における問題を話し合う機会を妨げてしまいます。そのため、職場が仕事関連のストレスをオープンに話し合える場を設けるなど、従業員が健康問題を抱えるリスクを抑える対策を取ることが重要だとのことです。

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in メモ, Posted by log1h_ik

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