260万円の損害賠償をLenovoからユーザーが受け取るに至った経緯とは?
現在出荷されている多くのPCにはWindowsがプリインストールされており、LinuxなどのオープンソースOSを使うユーザーは、使う予定のないWindowsのライセンス料まで支払う必要があります。1999年には、この状況に不満を感じたオープンソースOSのユーザーによってMicrosoftに返金を求める運動が行われていました。そして、2020年12月にはイタリアの裁判所がPCメーカーのLenovoに対して、Windowsのライセンス料の返金を求めたユーザーにライセンス料および2万ユーロ(約260万円)の賠償金を支払う命令を下しています。
Refund of pre-installed Windows: Lenovo must pay 20,000 euros in damages - FSFE
https://fsfe.org/news/2021/news-20210302-01.html
自由ソフトウェアに関する活動を行う団体「Free Software Foundation Europe(FSFE)」の支援者であるボニッシ・ルカ氏は、2018年にLenovoのPCを購入しました。購入したPCにはWindowsがプリインストールされていましたが、ルカ氏はWindowsを必要としていないため、Windowsライセンス分の料金を返金するようにLenovoのサポートセンターに連絡。しかし、返金の要求は拒否されました。
そこで、ルカ氏はLenovoに対してWindowsのライセンス料の返金を求める訴訟を起こしました。ルカ氏は、当初は弁護士を雇っていませんでしたが、Lenovoが裁判に対して積極的な姿勢を見せたため、弁護士を雇います。その後、裁判所は2019年6月にルカ氏が返金を受け取る権利を認め、Lenovoに対してWindowsのライセンス料42ユーロ(約5500円)と、訴訟費用130ユーロ(約1万7000円)の支払いを命じました。
しかし、Lenovoは裁判所の判決に対して15項目の異議を唱えて争う姿勢を見せます。その結果、ルカ氏は引き続き弁護士を雇う必要に迫られ、Lenovoとの裁判に2年以上の歳月と数百ユーロ(数万円)の費用を投じることになりました。その後、裁判所は2020年12月にLenovoの主張を全て却下し「ユーザーに対して不必要な法的手続きへの参加を強制させた」としてLenovoに対して2万ユーロ(約260万円)の損害賠償を課しました。
FSFEは、「ルカ氏の返金を受け取る権利を認めた今回の判決は、ユーザーがプリインストールされたソフトウェアの返金を受け取る権利を確立するための大きな勝利です。しかし、全てのユーザーがルカ氏のように多くの費用と長い時間を投じられるわけではありません。PCメーカーは、簡潔な返金システムを構築するべきです」と述べ、PCメーカーに対してプリインストールソフトのライセンス料返金システムを構築するように求めています。
なお、ルカ氏は受け取った損害賠償金のうち、1万5000ユーロ(約200万円)をFSFEに寄付。FSFEの公式Wikiで、PCメーカーにWindowsライセンス料の返金を求める方法を多言語で公開しています。
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