サイエンス

紀元前に作られた世界最古のコンピューター「アンティキティラ島の機械」の構造を解き明かす復元モデルが作成される

by Tony Freeth / UCL

紀元前に作成された歯車式機械であり、世界最古のアナログ式計算機とも呼ばれる「アンティキティラ島の機械」の復元CGモデルが作成されました。

A Model of the Cosmos in the ancient Greek Antikythera Mechanism | Scientific Reports
https://www.nature.com/articles/s41598-021-84310-w

Scientists unlock the 'Cosmos' on the Antikythera Mechanism, the world's first computer | Live Science
https://www.livescience.com/antikythera-mechanism-worlds-first-computer-modeled.html

Scientists solve another piece of the puzzling Antikythera mechanism | Ars Technica
https://arstechnica.com/science/2021/03/scientists-solve-another-piece-of-the-puzzling-antikythera-mechanism/

世界最古のアナログコンピューターと呼ばれる「アンティキティラ島の機械」は、紀元前3世紀から紀元前1世紀中頃にかけて製作されたとされる歯車式機械です。「アンティキティラ島の機械」は1900年にギリシャの考古学者であるヴァレリオス・スタイスが海中で発見した難破船から回収したもの。発見されたのは靴箱サイズの破片ですが、複数の歯車で構成された「天体の動きを予測するための機器」だったと考えられています。

なお、難破船から回収された「アンティキティラ島の機械」の破片は以下の通り。全体の3分の1程度を構成するパーツであると推定されています。

by National Archaeological Museum, Athens, Greece

「アンティキティラ島の機械」については長年にわたる研究・議論が繰り広げられてきましたが、回収された破片はボロボロに腐食した状態であり、紀元前に作られたとは思えない精密なメカニズムを有していたこともあり、その構造を完全に再現することができずにいました。

しかし、ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドンの研究者たちが、「アンティキティラ島の機械」で採用された計算式から「アンティキティラ島の機械」の構造全体を再現することに成功しました。「アンティキティラ島の機械」の復元に関する研究論文はオープンアクセスジャーナルのScientific Reports上で公開されています。研究チームは「『アンティキティラ島の機械』は、美しい構想が優れた技術によって天才的な装置に変換されたものであることを明らかにしました。これは古代ギリシア人の技術力に関する私たちの先入観を覆すものです」と記しています。

ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドンの研究者たちが公開した「アンティキティラ島の機械」の分解図が以下の通り。複数の歯車を用いたかなり精巧な構造であることがわかります。

by Tony Freeth / UCL

これまで「アンティキティラ島の機械」に関して明らかになっている情報と調和するような復元モデルは作成されていませんでした。その理由について、同研究に参加したユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドンの材料科学者であるAdam Wojcik氏は、「『アンティキティラ島の機械』の複雑さを考えると、パーツ間の関係は無限大のように思えます。そのため、『アンティキティラ島の機械』はこれまでに発見されてきたものとは根本的に異なる理の外にあるモノです」と語っています。

古代ギリシア時代にも歯車は存在しましたが、バリスタのような兵器に用いられる巨大なものがほとんどでした。しかし、「アンティキティラ島の機械」の破片はこれまで発見されてきた歯車とは一線を画するほどコンパクトなものであったため、これはオーパーツなのではともウワサされました。

「アンティキティラ島の機械」の構造を復元するという行為について、Wojcik氏は「『アンティキティラ島の機械』の破片が見つかった船は何をしていたのでしょう?破片は全体の3分の1程度しか見つかりませんでした。残りの3分の2はどこにあるのでしょう?そして破片はなぜ腐食したのでしょう?また、『アンティキティラ島の機械』は実際に機能したのでしょうか?といった疑問が浮かび上がりますが、これに答えるには実験考古学分野の知識が必要です。例えるなら、ストーンヘンジがどうやって作られたかを考察するようなものです。私たちの行っている研究は、ソールズベリー平原で実際に巨大な岩石をロープで引っ張ってみるようなものです」と語り、暗中模索の中で作成された復元モデルであることを強調しています。

研究チームは過去の「アンティキティラ島の機械」に関する研究などを参照し、その構造に関するテキストや、古代ギリシアの哲学者であるパルメニデスが提唱した惑星の動きに関する数学的モデルなどを用いて、わずか1インチ(2.54cm)の中に収まる複数の歯車により構成される構造をCGモデルで復元しています。

各歯車は惑星・太陽・月が古代の星図を横切って移動し、日食や月食のタイミングを知らせてくれるようになっています。当然ですが、当時は天動説が主流であったため、それに基づいて地球ではなく天体が動くように設計されているとのこと。

by Tony Freeth / UCL

なお、Wojcik氏は「古代ギリシア人がこのようなものを作ることができた証拠はありません。そのため、『アンティキティラ島の機械』の存在は本当に謎に包まれています」と語り、復元モデルを作成しても「アンティキティラ島の機械」の存在は謎に包まれたままであるとしています。

また、「アンティキティラ島の機械」が誰のために誰が作ったのかという疑問について、多くの研究者が古代ギリシアの科学者であるアルキメデスの名前を挙げます。Wojcik氏も「アルキメデスは『アンティキティラ島の機械』が作られたのとほぼ同じ時代に生きていた人物であり、同時代に彼と同レベルの工学的な知識を有していた人はいません」と述べました。

なお、「アンティキティラ島の機械」の歴史については以下のムービーにわかりやすくまとめられています。

ゆっくりオーパーツ解説 #19 - ニコニコ動画


この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
「紀元前200年の電池」や「最古のアナログコンピュータ」など、いまだ科学で解明できていない不思議な6つの発見 - GIGAZINE

世界最古のアナログコンピューターと言われる「アンティキティラ島の機械」の秘密が明らかに - GIGAZINE

沈没船から回収された謎の円盤が世界最古の航海用測量器具だったことが最新のレーザースキャンで判明 - GIGAZINE

最も危険な職業の1つ「ローマ皇帝」の死のパターンと機械の故障率の間には共通パターンがあるとする研究 - GIGAZINE

in サイエンス,   動画, Posted by logu_ii

You can read the machine translated English article here.