古代のコンピュータ「アンティキティラ島の機械」はいつごろ作られたものなのか？

by National Archaeological Museum,Athens,Greece

最古の複雑な科学計算機と知られる「アンティキティラ島の機械」は、紀元前に誕生したとされるにもかかわらず、18世紀の時計と比較しても遜色ない程の構造を持っています。時代背景とはそぐわない技術や見識を含んだオーパーツと呼ばれる最古のコンピュータはいつごろ作られたのかという研究論文が、2022年3月にギリシャの研究者チームによって発表されました。

[2203.15045] The Initial Calibration Date of the Antikythera Mechanism after the Saros spiral mechanical Apokatastasis
https://arxiv.org/abs/2203.15045

Researchers home in on possible “day zero” for Antikythera mechanism | Ars Technica
https://arstechnica.com/science/2022/04/researchers-home-in-on-possible-day-zero-for-antikythera-mechanism/

青銅製の歯車式の道具「アンティキティラ島の機械」は、古代の沈没船から発見されて長らく使用方法や製造年代が不明でした。そこで、2005年に世界中の考古学者・天文学者・歴史家による研究プロジェクト「The Antikythera Mechanism Research Project」(AMRP)が発足し、X線スキャンにより機械に書かれた文字を読み取ることで使用目的などを割り出しました。

世界最古のアナログコンピューターと言われる「アンティキティラ島の機械」の秘密が明らかに - GIGAZINE

アンティキティラ島の機械は時間の経過や天体の動きを記録・予測していたと分析されており、古代に制作された小型の機械としては驚くべき精度で測定が行われていたと見られています。2021年には機械の構造を解明するための復元モデルが作成されましたが、依然として謎に包まれている部分は多く残りました。

紀元前に作られた世界最古のコンピューター「アンティキティラ島の機械」の構造を解き明かす復元モデルが作成される - GIGAZINE

2022年3月28日にarXivに提出されたギリシャの研究者チームの論文によると、アンティキティラ島の機械がいつごろ制作されたかという時期を正確な日時まで特定できたとのこと。研究チームは、デバイスの背面にあるらせん状のはめ込みで表された「サロス周期」と呼ばれる約223カ月のサイクルを分析し、そこで計測されている日食・月食の時期を特定しました。

アンティキティラ島の機械で計測されたと見られる太陽と月の軌道を、NASAのデータベースから検索したところ、紀元前178年12月23日に発生したものだと分かりました。そのため、アンティキティラ島の機械は同時期に制作されたと考えられるそうです。また同様に、紀元前178年12月22日には日食が発生したとされており、日食に伴う宗教的司祭にとって重要な役割をアンティキティラ島の機械が果たしたともギリシャの研究者チームのブルガリシタル氏は述べています。

2022年2月、ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)のアンティキティラ島の機械研究チームを率いるトニー・フリース氏が、アンティキティラ島の機械を設計したのは古代ギリシャのアルキメデスであると示唆しました。アンティキティラ島の機械は紀元前204年の夏に制作されたとする研究も多く、アルキメデスが紀元前287年から紀元前212年まで生きたとされることからも、紀元前204年という説が有力視されていました。一方ブルガリシタル氏は「紀元前204年の夏という結論は、デバイスに冬至が目立つように刻まれている理由を説明できていません」と反論し、紀元前178年の冬という説を主張しています。