沈没船から回収された謎の円盤が世界最古の航海用測量器具だったことが最新のレーザースキャンで判明
15世紀に活躍したポルトガルの探検家であるヴァスコ・ダ・ガマは、ヨーロッパからアフリカ南岸を超えてインドへの航路を初めて確立した人物として知られています。ダ・ガマの率いた艦隊の1隻とみられる沈没船から回収された謎の円盤は、最新のレーザースキャン調査によって世界最古の航海用測量器具だったことがわかりました。
An Early Portuguese Mariner's Astrolabe from the Sodré Wreck‐site, Al Hallaniyah, Oman - Mearns - - International Journal of Nautical Archaeology - Wiley Online Library
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1111/1095-9270.12353
Earliest known Mariner's Astrolabe research published today to go in Guinness Book of Records | EurekAlert! Science News
https://www.eurekalert.org/pub_releases/2019-03/uow-ekm031519.php
1998年にオマーン沖で沈没船が確認され、調査の結果、「ダ・ガマが率いた艦隊の1隻で、1503年に艦隊がポルトガルへ戻った時に嵐に遭って沈んだといわれるエスメラルダ号である可能性が高い」と、オマーンの遺産文化省が発表しました。王の艦隊船であることを示すものとして沈没船の中にはポルトガル王家の紋章と、マヌエル1世の紋章が飾られていたそうです。
この沈没船から回収されたおよそ2800点の遺物のなかにあった円盤が以下の写真。aが発見された時の様子、bの左が表面で、右が裏面。cが表面のスケッチで、dがX線で撮影した写真です。表面にはポルトガル王家の紋章と思われる図柄があしらわれていることがわかりますが、裏面は特に何も描かれておらず、何の用途に使われたものかは不明でした。
しかし、考古学者のマーク・ウィリアムズ氏率いるウォーリック大学の研究チームが2016年に難破船から回収された遺物をレーザースキャンしたところ、この円盤が測量器具であるアストロラーベであることが判明しました。アストロラーベとは占星術師や天文学者、航海士、測量士によって用いられていた機器で、太陽、月、星の高さを測量するためのものです。イスラム圏で発明されたと考えられているアストロラーベは11世紀にはヨーロッパに伝えられ、18世紀に六分儀が発明されるまで広く使われていたと考えられています。
円盤の裏面をレーザースキャンしたところが以下の画像。円盤の裏面右上部分に、5度という一定の角度でディスクの周囲に目盛が刻まれていたことがわかりました。航海士はこの円盤を使って正午に太陽の高さを測定することで、海上の船の位置を正確に把握していたと考えられます。また、沈没船から回収されたアストロラーベは1496年から1501年の間に作られたもので、これまでに発見されている航海用のアストロラーベ108例の中で最も古いものだったとのこと。
アストロラーベは「世界最古の航海用測量器具」として、船から回収された鐘と共にギネスブックへ申請されるとのこと。調査に携わった難破船ハンターのデヴィッド・マーンズ氏は「ウォーリック大学によるレーザースキャンがなければ、肉眼で見えない測量目盛の存在に気づくことはできなかったでしょう。レーザースキャンの分析は、この円盤が航海用のアストロラーベであることを証明しました。これまでの研究と照らし合わせても正しい年代のものであり、航海のための重要な手段だったと考えられます」と語りました。
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