絵画が510億円で落札されるようになるまでに落札額の最高記録はどのように変遷してきたのか?
絵画は芸術作品であると同時に、近年では投資対象の一種としても注目を集めており、オークションで驚くほどの値が付くこともあります。そんな絵画オークションの落札額およびマーケットの変遷について、フランスのHEC経営大学院で金融学の准教授を務めるChristophe Spaenjers氏らが解説しています。
A history of the art market in 35 record-breaking sales | Yale School of Management
https://som.yale.edu/news/2016/06/history-of-the-art-market-in-35-record-breaking-sales
◆1700~1850年
1701年以降にオークションで落札された絵画の価格を調査したSpaenjers氏によると、1701年にアムステルダムで行われたオークションでは、ヘラルト・ドウの「Interior with woman and child」という絵画が当時の320ポンド(現代の価値に換算して約520万円)で落札されたという記録があるとのこと。18世紀はドウの絵画やアンソニー・ヴァン・ダイクの「エジプト逃避途中の休息」などが高値を付けていました。
18世紀から19世紀前半にかけて絵画に興味を示したヨーロッパの人々にとって、芸術作品を手に入れることは国の内外に権力を示す手段にもなっていたとのこと。中でもロシア帝国のエカチェリーナ2世は芸術作品の収集を通じて、ヨーロッパ諸国からロシアへの敬意を集めていたそうです。
18世紀後半にはレンブラント・ファン・レインの人気が高まり、1798年に「The Centurion Cornelius」が1522ポンド(現代の価値に換算して約1020万円)で落札されたほか、1811年には同じくレンブラントの「The Shipbuilder and his Wife」が5250ポンド(現代の価値に換算して約3700万円)で落札されました。
◆1850~1930年
1852年にはバルトロメ・エステバン・ムリーリョの「無原罪の御宿り」が、それまでの最高落札額を4倍以上も上回る2万4600ポンド(現代の価値に換算して約3億円)で落札されました。
その後はしばらく最高額が更新されなかったものの、世界の金融市場が結びついて世界人口が増加した20世紀に入って以降、立て続けに最高額が更新されるようになりました。1919年にはジョージ・ロムニーの「The Misses Beckford」が5万4600ポンド(現代の価値に換算して約2億4000万円)で、1926年にはトーマス・ローレンスの「ピンキー」が7万7700ポンド(現代の価値に換算して約4億8000万円)で落札されました。
◆1930~2010年
1910~20年代は立て続けに落札額の最高記録が更新されましたが、その後の世界恐慌や第二次世界大戦が美術品の市場にも影響し、しばらくは落札額が更新されませんでした。再びオークションでの落札額が更新されたのは1957年、ポール・ゴーギャンの「Apples」が10万4630ポンド(現代の価値に換算して約3億8000万円)で落札された時だったとのこと。
翌年の1958年にはポール・セザンヌの「赤いチョッキの少年」が22万ポンド(現代の価値に換算して約7億円)で、1961年にはレンブラントの「ホメロスの胸像を見つめるアリストテレス」が81万7052ポンド(現代の価値に換算して約26億円)で落札された後、1970年にはディエゴ・ベラスケスの「フアン・デ・パレーハ」が231万ポンド(現代の価値に換算して約50億円)で落札されました。
この時期は芸術作品が投機対象としての注目を強く浴びたため、各国の富裕層によって絵画の価格も大幅に押し上げられたとのこと。1980年代にバブル景気が到来した日本はこのブームに一役買っており、1987年には安田火災海上がフィンセント・ファン・ゴッホの「ひまわり」を2475万ポンド(約58億円)で落札して話題を集めました。
その後も1989年にパブロ・ピカソの「ピエレットの婚礼」が3293万4977ポンド(約75億円)で、1990年にゴッホの「医師ガシェの肖像」が4912万1762ポンド(約120億円)という過去最高額で、日本の実業家によって落札されました。
◆2010年~現代
2010年代に入ってもオークションでの最高落札額は更新され続けています。2012年にはエドヴァルド・ムンクの「叫び」が7400万3394ポンド(約96億円)で落札されたほか、2013年にはフランシス・ベーコンの「ルシアン・フロイドの3習作」が8941万1063ポンド(約142億円)、2015年にはピカソの「アルジェの女たち」が1億1620万ポンド(約215億円)で落札されました。
Spaenjers氏は今後、経済発展が著しい中国の実業家が美術品の市場で影響力を強めるだろうと予測しており、絵画オークションの最高落札額も中国人によって塗り替えられるかもしれないと述べました。
なお、記事作成時点で最も高額で落札された絵画は、2017年11月にニューヨークのオークションで落札されたレオナルド・ダ・ヴィンチの「サルバトール・ムンディ」。落札額は約4億5000万ドル(当時のレートで約510億円)となっています。
CNN.co.jp : ダビンチ絵画、510億円で落札 芸術作品として史上最高額 - (1/2)
https://www.cnn.co.jp/showbiz/35110516.html
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