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大手出版社エルゼビアとの契約終了が大学にもたらした悪影響はそれほど大きくなかったとの指摘


世界最大の学術雑誌出版社であるエルゼビアは、「科学誌の購読料が高額すぎる」とさまざまな大学や研究機関から非難されています。高すぎる契約を拒絶してエルゼビアとの契約を打ち切ったカリフォルニア大学が、「エルゼビアとの契約終了がもたらした悪影響はそれほど大きくなかった」と報告しました。

UC’s termination of Elsevier contract has had limited negative impact - Daily Bruin
https://dailybruin.com/2020/02/27/ucs-termination-of-elsevier-contract-has-had-limited-negative-impact

近年ではエルゼビアの独占的なシステムに対する不満を募らせたり、高額すぎる購読料の支払いに苦慮したりした大学や研究機関が、エルゼビアとの契約を打ち切るケースが続出しています。2019年には、アメリカ有数の名門大学であるカリフォルニア大学も、10のキャンパスや図書館、理事による協議を行ってエルゼビアとの購読契約を終了することを決定しました。

科学論文を出版するエルゼビアとの購読契約を完全に打ち切ったとカリフォルニア大学が発表 - GIGAZINE


カリフォルニア大学がエルゼビアとの契約を打ち切った背景には、高額すぎる購読料に対する不満だけでなく、カリフォルニア大学の研究者が発表する論文をオープンアクセスのジャーナルに掲載しようとする動きがあります。

カリフォルニア大学ロサンゼルス校の図書館および学術コミュニケーション委員会のメンバーであるアラン・バレカ氏は、カリフォルニア大学が主導する研究は公的資金で運営されているため、論文をオープンアクセスジャーナルに掲載する必要があると主張。「カリフォルニア大学は他の大学と同様に、税金を通じた公的資金が投じられています。私たちは研究結果を無料で一般の人々に提供するよう、道徳的に義務づけられています」と述べました。

エルゼビアとの契約中にも、カリフォルニア大学は「カリフォルニア大学の10キャンパスの研究者が発表した論文を無料で全世界に公開すること」を求めたそうですが、エルゼビアはこれに対し「論文著者が出版料を支払うこと」を求めてきたとのこと。カリフォルニア大学の大学評議会代表であるロバート・メイ氏は、「知識はお金を払うことができる人のみに公開されるべきではありません」「私たちが大学としての使命を果たすためには、フルオープンアクセスへの探求は不可欠です」との声明を発表しています。


結局、エルゼビアとカリフォルニア大学の交渉は決裂し、同大学は2019年7月にエルゼビアのオンラインデータベース・ScienceDirectへのアクセスを失いました。ところが、2019年以前に公開された全てのエルゼビアの記事にはアクセスすることが可能であり、外部のオープンアクセスリポジトリからアクセス可能なエルゼビアのコンテンツもあるとのこと。また、図書館間相互貸借という仕組みを利用し、外部の図書館からエルゼビアの資料にアクセスし、コンテンツを入手することもできます。

カリフォルニア大学ロサンゼルス校の図書館および学術コミュニケーション委員会によると、エルゼビアとの契約を打ち切った後も、大学の教員や学生からの問題報告や懸念の声はほとんど挙がっていないとのこと。カリフォルニア大学図書館のバージニア・スティール氏は、「たくさんのコメントを受け取ることを予想していましたが、6通のメールしか届きませんでした」と述べ、図書館間相互貸借の利用も予想の15~20%ほどしか増加しなかったと指摘。エルゼビアのサービスにアクセスできなくなっても、記事作成時点ではそれほど大きな混乱は起きていないそうです。


なお、カリフォルニア大学は2020年4月に、オープンアクセスの学術雑誌を出版するPublic Library of Science(PLOS)と2年間の契約を結んだと発表。学術論文のオープンアクセス化に向けた取り組みを、さらに推進していく姿勢を打ち出しています。

カリフォルニア大学とPLOSが、若手研究者に恩恵のあるOA協定に合意 | エディテージ・インサイト
https://www.editage.jp/insights/university-of-california-and-plos-sign-open-access-deal-for-early-career-researchers%E2%80%99-benefit

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in メモ, Posted by log1h_ik

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