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出版社「エルゼビア」が抱える学術誌の編集者が一斉に辞職、新しくオープンアクセスジャーナルを立ち上げることに

by StockSnap

エルゼビアが保有するJournal of Informetrics(情報学ジャーナル)の編集部委員全体が2019年1月11日(木)に辞職し、14日(月)に同チームが新たにオープンアクセスジャーナル「Quantitative Science Studies」をスタートさせることを発表しました。エルゼビアは科学論文を有料公開しており、閲覧システムの価格が高すぎるとしてたびたび問題となっており、情報学ジャーナル編集者の辞職はエルゼビアのやり方に対抗する動きの1つとなっています。

Open-access row prompts editorial board of Elsevier journal to resign
https://www.nature.com/articles/d41586-019-00135-8

Elsevier journal editors resign, start rival open-access journal
https://www.insidehighered.com/news/2019/01/14/elsevier-journal-editors-resign-start-rival-open-access-journal


情報学ジャーナルの編集部委員がエルゼビアへと送った文書は以下の通り。編集部委員は、学術誌は出版者ではなく学術コミュニティーによって所有されるべきであり、論文は公平な原則のもとオープンアクセスを可能にし、データを自由に引用できるようにすべきだと主張しています。

Resignation Letter
https://www.documentcloud.org/documents/5683932-Resignation-Letter.html

これを受けてエルゼビアのヴァイスプレジデントであるTom Reller氏は「彼らの懸念を聞いてから、我々は自身の立場について説明し、彼らと私たちとの差を埋める具体的な提案を行ってきました」「最終的に彼らはステップダウンすることを決断しました。我々は彼らの決断を尊重し、今後の発展を祈っています」と声明を発表しています。

Letter to JOI Board 09Oct18 NN
https://www.documentcloud.org/documents/5683714-Letter-to-JOI-Board-09Oct18-NN.html

エルゼビアの所有する学術誌の編集部がやめ、他の学術誌を立ち上げた事例は過去にもあります。しかし、情報学ジャーナルのようなその分野のトップである購読型の学術誌が完全にオープンアクセスの学術誌に転換するというケースはまれだとのこと。


エルゼビアは購読型の学術誌を出版していますが、購読料が高額すぎるとして論文購読契約を打ち切る大学は続出しているといわれています。また、マックス・プランク研究所ハンガリアン・コンソーシアムといった大口顧客が契約更新を見送ったこともニュースになりました。

情報学ジャーナルの編集長だったLudo Waltman氏はエルゼビアとの契約が切れ次第、新しい学術誌の編集長に就任する予定ですが、契約の終了日は記事作成時点で未定だといいます。Waltman氏によると、編集部委員は既に受け取っている論文についてはレビューするものの、新しく提出された論文についてはこれ以上レビューしないことで同意しているとのことです。「最も重要なのは、既に論文を提出している著者が今回の件に悪影響を受けないことであり、これにはエルゼビアと編集部委員の双方が同意しています」とWaltman氏は述べました。

by rawpixel.com

新学術誌「Quantitative Science Studies」はInternational Society for Scientometrics and Informetrics(科学計量学・計量情報学国際学会/ISSI)が母体となり、出版はマサチューセッツ工科大学出版局(MIT Press)が行う予定。ISSIのCassidy Sugimoto氏によると、情報学ジャーナルとエルゼビアとの交渉は18カ月以上にも及び、辞職は簡単ではなかったとのことです。

オープンアクセスジャーナルを運営する上で最も難しいのは資金確保ですが、この点、Quantitative Science Studiesはマサチューセッツ工科大学図書館(MIT図書館)の援助を受けて開始されます。また全ての論文をオープンアクセスにするために、ISSIメンバーには論文出版加工料として600ドル(約6万5000円)、非会員には800ドル(約8万7000円)が求められますが、これはエルゼビアの購読料(約20万円)よりもずっと低い料金となっています。そして、料金を支払う余裕がない研究者の分はドイツ国立科学技術図書館が3年間カバーするとのこと。

MIT図書館の代表であるChris Bourg氏は、「Quantitative Science Studies」の援助について「これは、『人類に力とインスピレーションを与える多くの有意義な情報に公平かつ持続してアクセスできる世界』という私たちのビジョンと一致する学術コミュニケーションの変化をサポートするために私たちのリソースを使うという、慎重に検討した戦略の1つです」と述べています。

by Element5 Digital

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in メモ, Posted by logq_fa

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