MITが出版社エルゼビアとの契約交渉を終了、研究成果をオープン利用するための枠組みに沿った提案がなかったため
研究成果をオープンに使えるようにするため定められた「MIT Framework for Publisher Contracts」に沿った提案がなされなかったとして、マサチューセッツ工科大学(MIT)が、学術出版社エルゼビアとの新たな学術誌に関する契約交渉を終了しました。
MIT, guided by open access principles, ends Elsevier negotiations | MIT News
http://news.mit.edu/2020/guided-by-open-access-principles-mit-ends-elsevier-negotiations-0611
「MIT Framework for Publisher Contracts」はMIT図書館が2019年10月に定めた枠組みで、「研究により得られた成果や資料はオープンな状態で共有することによって知識の発展につながり、やがては世界的な課題への取り組みに活かされることになる」という発想が根底に存在します。その上で「研究成果と成果を広めることは学者と所属機関が管理するべきである」という包括的な原則のもと、研究成果が可能な限り多くの人に公開され、公平に利用できるようにするとともに、MITのコミュニティに対しても価値のあるサービスを提供するものであることを目指しています。
学術誌の出版社として知られるエルゼビアとの新たな契約において、MITはエルゼビアに「MIT Framework for Publisher Contracts」に沿った内容を求めてきましたが、エルゼビアは要求を満たす提案を出すことができなかったため、契約交渉は終了になったとのこと。
MIT図書館のクリス・ブール氏は、エルゼビアと契約に至らなかったことについて遺憾の意を表明しつつ、「MITのコミュニティが、公共の利益と科学の進歩を促すための『MIT Framework for Publisher Contracts』の重要性を支持してくれていると知り、とても誇りに思います」と語りました。
契約はならなかったものの、ブール氏は「エルゼビアがMITのコミュニティのニーズや価値観を反映した上で、MITの使命を果たせるような案を作り、生産的な交渉を再開できることを願っています」とコメント。
一方で「それまでの間、この枠組みを利用して、知識へのオープンアクセスを実現するための新たな道を追求します。カリフォルニア大学、カーネギーメロン大学、アイオワ州立大学とともにACM(計算機学会)と結んだ画期的な合意は、未来のビジネスモデル構築への一例となるでしょう」とも述べ、エルゼビアとの契約がなくても独自に進んでいく意志を明らかにしています。
・つづき
MITが学術出版社のエルゼビアと契約を打ち切ったことで「支出を8割(約3億円)削減できた」と報告 - GIGAZINE
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