Facebookがオーストラリアでニュースを配信できなくなった件について説明
2021年2月17日、Facebookは突如オーストラリアでのニュースの共有を停止すると発表しました。記事作成時点ではすでにニュースを再配信しているのですが、オーストラリアでいったい何が起きたのかについて、Facebookがまとめています。
The Real Story of What Happened With News on Facebook in Australia - About Facebook
https://about.fb.com/news/2021/02/the-real-story-of-what-happened-with-news-on-facebook-in-australia/
Competition watchdog expects Google and Facebook to strike deal with small publishers | Australian Competition and Consumer Commission (ACCC) | The Guardian
https://www.theguardian.com/australia-news/2021/feb/24/competition-watchdog-expects-google-and-facebook-to-strike-deal-with-small-publishers
Bill to Make Facebook, Google Pay for News Clears Last Major Hurdle in Australia - WSJ
https://www.wsj.com/articles/bill-to-make-facebook-google-pay-for-news-clears-last-major-hurdle-in-australia-11614163071
現地時間で2021年2月17日、Facebookはオーストラリアのユーザーやパブリッシャーが国内外のニュースコンテンツを共有・閲覧することを制限すると発表しました。これはオーストラリアで制定が進められている「ニュースメディア交渉法」という、ニュース使用料の支払いを義務付ける法律に対応するための動きとみられていました。
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この影響でオーストラリアのApp Storeでは、地元報道機関の公式アプリがダウンロード数ランキングで1位に躍り出る事態となっています。
Facebookがニュースの共有を禁じた影響で地元報道機関の公式アプリがApp Storeランキングで1位に躍り出る - GIGAZINE
Facebookがオーストラリアでニュースを配信しなくなったことによる影響は甚大であったため、オーストラリア政府はニュースメディア交渉法にいくつかの修正を加えると発表。この修正によりプラットフォームが自発的にニュースメディアに支払いを行った場合は完全な法適用を避けられるようになりました。Facebookがすぐにメディアに対する支払いを強制されることはなくなったため、Facebookはオーストラリアでのニュースコンテンツを復活させることに合意しています。
Facebookがオーストラリアでのニュース配信停止を一転させてコンテンツ復元へ - GIGAZINE
オーストラリアで起こった一連の事態について、Facebookの広報・国際戦略担当ヴァイスプレジデントのニック・クレッグ氏が説明しています。
クレッグ氏は「我々の見解としては、今回の問題の中心にあるのは、Facebookとニュースメディアの関係についての根本的な誤解です。ソーシャルメディア上でストーリーを共有する、あるいは他の人が共有できるようにすることを選択するのはパブリッシャー自身です。そうすることで価値が得られるため、パブリッシャーはコンテンツをネット上で共有しています。そして、共有をより簡単にするためにサイト上にはシェアを促すためのボタンなどが配置されます。また、Facebookで共有されているリンクをクリックすると、パブリッシャーの運営するウェブサイトに移動します。Facebookは2020年にオーストラリアニュース業界に推定4億700万オーストラリアドル(約340億円)の価値を生み出しました」と語り、Facebookはあくまでリンクを共有しているだけであり、ニュースメディアにとっても収益を上げるために欠かせないプラットフォームになっていると主張しました。
続いて、「Facebookが利益のためにオリジナルの報道を盗んでいるという主張は、最近何度も繰り返し行われていますが、これは間違った認識です」とクレッグ氏は語りました。
また、ワールドワイドウェブの発明者であるティム・バーナーズリー氏が警告したように、オーストラリアで制定が進められているニュースメディア交渉法は「私たちが知っている既存のインターネットを実行不可能にする可能性があります」とクレッグ氏は指摘。また、特定のリンクに対して金銭の支払いを求めることは、「インターネットの基本原則に反する」とクレッグ氏は主張しています。
また、クレッグ氏は「広告が印刷物からデジタルに移行し始めた際、ニュースの経済学も変化し、業界はインターネットへの適応を余儀なくされました。オンラインの世界に移行して成功したメディアもあれば、適応に苦労しているメディアもあります。一部のメディアコングロマリットがFacebookを明確な資金源とみなしていることは理解できますが、それは彼らが好きに支払いを求められることを意味するのでしょうか?」と語り、Facebookはニュースメディア交渉法の下でメディアに無制限の金額を支払うことを余儀なくされたと主張しています。
Facebookが陥った状況は、「車の中でラジオを聴く可能性があるため、自動車メーカーにラジオ局への支払いを強制するようなもの」であるとクレッグ氏は述べました。
このような状況でFacebookが取れる選択肢は「メディアにオープンエンドの助成金を提供する」あるいは「オーストラリアでのニュース配信を停止する」の2つのみであったそうです。そして、Facebookは後者を選択することとなったわけ。幸い、さらなる議論の末にオーストラリア政府はニュースメディア交渉法にいくつかの修正を加えたため、公正な交渉が行えることとなり、Facebookはオーストラリアでのニュース配信を再開できるようになったとのこと。
なお、Facebookがオーストラリアでのニュース配信を停止するという決定を下したのは、突然のことではなく3年間にわたってオーストラリア政府と協議してきた事案だったそうです。
また、Facebookはニュース出版社との提携を進めており、質の高いジャーナリズムの必要性を理解しているとのこと。実際、Facebookは今後3年間で少なくとも10億ドルの投資を計画しており、The Guardian、Telegraph Media Group、Financial Times、Daily Mail Group、Sky Newsといったメディアに対してコンテンツ配信に伴う支払いを行うと発表しています。
最後にクレッグ氏は「インターネットには、大手メディア企業だけでなく、すべての人に役立つ新しいルールが必要です。インターネットに関する規制を更新する際に、私たちは何が最善かを考え、人々が自分自身を表現する自由と起業家が新しいものを構築する自由を維持することができます。新しいルールは、より多くの人々に利益をもたらす場合にのみ機能すべきであり、少数の人々の利益を保護するためのものとなるべきではありません」と語りました。
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