たった6万円で人工呼吸器を作れるオープンソースプロジェクト「MakAir」
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)により発生した人工呼吸器の不足に対応するため、オープンソースで人工呼吸器を開発するプロジェクトの「MakAir」が2020年3月に発足しました。人工呼吸器をオープンソースで作るプロジェクトとしては、MakAir以外にもマサチューセッツ工科大学(MIT)主導のプロジェクトや、睡眠時無呼吸症候群の治療で使われる装置を改造するプロジェクトが発案されていますが、MakAirはこれらに先駆けて、オープンソースプロジェクトとしては初めて臨床試験での認証を得ているとのことです。
Accueil - MakAir
https://makair.life/
GitHub - makers-for-life/makair: The first open-source ventilator tested on human patients. Mass-producible at a low cost (~2000€).
https://github.com/makers-for-life/makair/
これが、記事作成時点で最新バージョンのMakAirの本体です。かなり本格的な人工呼吸器ですが、1台当たりのコストは500ユーロ(約6万3000円)以下を想定しているとのこと。また、大量に生産する場合や、安価な既製品を組み込める場合には1台当たり100ユーロ(約1万2500円)~200ユーロ(約2万5000円)で作れる場合もあるそうです。
MakAirの作り方は次の通りです。
◆1:3Dプリンターで全てのパーツを用意する
MakAirの製造にあたっては、HP Multi Jet FusionのようなSLS方式の3Dプリンターか、Formlabs Form 3のような光造形(SLA)方式の3Dプリンターがベストだとのこと。FDM方式のプリンターでもSLAもしくはSLSのどちらかに対応していれば使用可能ですが、一部のパーツが適切にプリントできない場合もあるそうです。
プリントするパーツは以下の通り。
・ブロワー:1個
・圧力バルブ:2個
・酸素ミキサー:1個
・患者用フィルターボックス:1個
・機械用フィルターボックス(吸入/排気):1個ずつ
・圧力コネクタ(ブロワー用・酸素用・無圧用・加圧用):各1個ずつ
◆2:電子装置を組み立てる
電子装置は大きく分けて次の2つです。
・マザーボード
設計図に従い、マザーボードを作ります。
・コントロールユニットのスクリーン
コントロールユニットは、Raspberry Pi Touch Displayに接続されたRaspberry Pi 4を使用します。
◆3:ソフトウェア
人工呼吸器のハードウェアである機械部品と電子装置がそれぞれ準備できたら、次にソフトウェアを導入します。ソフトウェアは「ファームウェア」と「コントロールユニットランタイム」の2つです。
◆4:組み立て
最後に、全てのコンポーネントを組み立てます。空気バルブなどの接続方法はこんな感じで……
本体の組み立て方は以下の通りです。
MakAirは、フランスを中心とした世界中の専門家ら200人以上の協力により、2020年3月の発足からわずか1カ月で臨床試験にこぎつけ、既にフランスの保健当局の承認を受けているとのこと。2021年に入っても、MakAirのチームは人工呼吸器の改良を続けているそうです。
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