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不足する人工呼吸器を睡眠時無呼吸症候群の治療機器で代用するプロジェクトとは?


新型コロナウイルス感染拡大に伴う患者の急増で、医療機器が各地で不足しており、人工呼吸器も大量に必要とされています。そんな中、睡眠時無呼吸症候群の治療機器を改造することで、人工呼吸器の代用にしようというオープンソースのプロジェクトが登場しています。

Airbreak Overview - airbreak
https://airbreak.dev/

GitHub - osresearch/airbreak: CPAP jailbreak to allow it to be used as a temporary ventilator
https://github.com/osresearch/airbreak/

アメリカでは人工呼吸器の不足に備え、体内への挿管や切開による気道確保を行わないバイレベル気道陽圧(BiPAP)による人工呼吸器の開発が進んでいます。BiPAPは、患者が息を吸う時と吐く時に合わせて空気の圧を調節し、患者の自発的な呼吸をサポートすることで肺の換気を促す方法です。


アメリカ食品医薬品局(FDA)は、BiPAPを採用した人工呼吸器の開発を承認しており、いくつかの研究チームによってBiPAPによる人工呼吸器の設計が進んでいます。

BiPAPと同じく、切開などを行わない経鼻的持続陽圧呼吸療法(CPAP)は、主に睡眠時無呼吸症候群の治療に使用されています。BiPAP端末よりもCPAP端末の方が安価ですが、新型コロナウイルス感染者の人工呼吸器として使用するには機能が不十分で、医療機器メーカーのResMedは「CPAPを新型コロナウイルス感染者の人工呼吸器として流用するには、デバイスの大幅な再構築が必要である」とコメントしています。

睡眠時無呼吸症候群の治療を目的としたCPAP端末である「Airsense 10」を、新型コロナウイルス感染者用の人工呼吸器として応用できるように改造したのがトランメル・ハドソン氏です。以下の画像がハドソン氏によって改造されたAirsense 10。


Airsense 10には、気道を開くための空気を送る機能はありますが、BiPAP端末のように患者の呼吸に合わせて空気圧を調整するような機能はありません。

ハドソン氏は、CPAP端末とBiPAP端末の違いはハードウェアではなく、ソフトウェアのプログラムにあると考えAirsense 10の改造を行いました。患者の呼吸に合わせて送り込む空気の圧力を切り替えるプログラムを実装することで、Airsense 10はBiPAPによる人工呼吸器とほぼ同じ機能を搭載したとのこと。


改造したAirsense 10は、記事作成時点でFDAからは未承認の状態ですが、ハドソン氏自ら専門家や研究者にレビューを依頼し、性能の検証は十分なされているとのこと。一方でハドソン氏は「CPAPデバイスを改造したものなら何でも新型コロナウイルス感染者の治療に使用できるというわけではありません」と述べており、専門家らの十分な検証が必要であることを主張しています。

なお、CPAPを応用した人工呼吸器は、マイコンボードのArduino Nanoを使って改造したものなども開発されています。3Dプリンターを使ってオープンソースで人工呼吸器を作る方法は以下の記事を読むとよく分かります。

新型コロナウイルス対策で「人工呼吸器をオープンソースで開発するプロジェクト」が登場 - GIGAZINE

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in ソフトウェア,   ハードウェア,   サイエンス, Posted by darkhorse_log

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