中国では新型コロナの情報共有にGitHubが使われている
ソフトウェア開発プラットフォームであるGitHubは、Gitによるバージョン管理の下で、ソースコードをホスティングすることができます。そんなGitHubが、情報検閲が厳しい中国でアクセス可能な数少ないプラットフォームであることから、政府当局の検閲対象となる新型コロナウイルス感染症(COVID-19)関連の情報が大量にアーカイブされ、中国人にとって貴重な情報共有源となっています。
In China, GitHub Is a Free Speech Zone for Covid Information - Slashdot
https://yro.slashdot.org/story/20/09/10/1735241/in-china-github-is-a-free-speech-zone-for-covid-information
2020年1月にCOVID-19が中国で流行の兆しを見せた時、博士課程の学生であるWeilei Zengさんは、カリフォルニア州にあるアパートからオンライン上でCOVID-19の流行状況を見守っていました。故郷である中国から遠く離れたアメリカに住むZengさんは、隔離された患者の日記や過密状態の病院の映像、ウイルスを警告したことで「風評被害だ」と批判されてCOVID-19で命を落とした若い医師のニュースなどを、中国のソーシャルメディアを通じて逐一チェックしていたそうです。
しかし、ある日突然にそれまでアクセスできていたリンクが404のエラーコードを吐き、閲覧不可能になったとのこと。中国では、FacebookやTwitterなど世界中で使われているソーシャルメディアプラットフォームはアクセス禁止となっており、WeChatやWeiboなどの中国向けソーシャルメディアも政府によって厳重に監視されています。インターネット上にあったCOVID-19関連の情報は、政府の検閲によってほとんど削除されてしまったというわけです。
そんな中で、中国の技術産業に大きな影響力を持つGitHubだけは、中国国内からアクセスが可能でした。GitHubではトラフィックが暗号化されているため、政府当局も個々のプロジェクトを検閲できません。そのため、GitHubは中国国民にとって数少ない「聖域」となっており、オンライン上で展開される反政府運動のプラットフォームとしても活用されています。
大学の研究プロジェクトでGitHubを使っていたZengさんは、GitHubの「2020nCovMemory」というリポジトリに、検閲によって消滅したニュースや医療記事がまとめられていることに気づきました。そこでZengさんも、ソーシャルメディアでの個人の投稿やインタビューをまとめる「2020nCov_individual_archives」を立ち上げ、有志と共にCOVID-19関連情報の収集と保存に努めました。
しかし、2020年4月に中国・武漢市でのロックダウンが終わり、中国が「COVID-19の感染拡大は既に制御下にある」と発表した後、2020nCovMemoryはGitHubから突如消滅しました。香港の日刊紙であるサウスチャイナ・モーニング・ポストによれば、2020nCovMemoryを立ち上げた3人のユーザーはいずれも警察によって拘留され、行方不明になっているそうです。
記事作成時点では、2020nCov_individual_archivesはGitHubから削除されずに残っています。Zengさんは「境界線を越えず、許容範囲ギリギリまで活動を続けていきます。個人の投稿をアーカイブすることは、政府への抵抗行為になりますか?その線引きがどこにあるのかは決してわかることがないと思います」とコメントしました。
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