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Googleの考案する新たな「Cookieレスの仕組み」に独占禁止法違反の目が向けられている


Googleは検索エンジンの運用や、Facebookと不正な広告契約を結んでいたことをめぐって、独占禁止法(反トラスト法)違反の疑いで提訴されています。これに加え、Googleが記事作成時点で新たに試みている「Cookieに替わる仕組みの考案」についてもまた、独占禁止法違反の目が向けられています。

Why Google's approach to replacing the cookie is drawing antitrust scrutiny
https://digiday.com/media/why-googles-approach-to-replacing-the-cookie-is-drawing-antitrust-scrutiny/


インターネット上に表示されるターゲティング広告サードパーティーCookieを使った仕組みとなっていますが、この仕組みは過度にユーザーの行動を追跡し、個人のプライバシーを侵害するという懸念から、Googleは2022年までにGoogle ChromeでのサードパーティーCookieサポートを廃止すると発表しています

その上で、GoogleはサードパーティーCookieに替わる仕組みを検討中であり、「プライバシー・サンドボックス」という形で内容が提案されています。プライバシー・サンドボックスは記事作成時点で議論中であり、いくつもの提案が却下されたり、反対にテスト段階へ進んだりしています。

2021年1月には、ユーザーを数千人単位の「コホート」にわけ、コホート単位で興味や関心といったデータ分析を行う「FLoC」が発表されました。Google Chrome 89のベータ版では「FLoC」機能の搭載が確認されており、まもなく大規模なテストが始まるものだとみられています。

Googleが提案するサードパーティーCookieなしの新しい広告の仕組み「FLoC」とは? - GIGAZINE


一方、Googleは2020年10月12月に独占禁止法(反トラスト法)違反で提訴されていますが、上記のような「Cookieレスの新しい広告の仕組み」もまた独立禁止法違反の目が向けられています。イギリスの公正取引委員会(CMA)は2021年1月8日にプライバシー・サンドボックスに対する調査を開始したと報告しており、「Googleの新しい仕組みにより企業が多くの広告費を、競業他者を犠牲にしたGoogleのエコシステムに集中させる可能性がある」と指摘しました

12月に提訴された訴訟やパブリッシャーによって提訴された集団訴訟でも、Googleは膨大な情報をアドバンテージとして利用し、広告の仲介業者としてGoogleを利用しないパブリッシャーに害を与えてきたことや、Cookie排除というGoogleの決断が「排他的である」ことが述べられています。

またMarketers for an Open Webのジェームズ・ロズウェル氏は「プライバシー・サンドボックスはオープンで相互運用されるテクノロジーをGoogleのコントロール下に置こうとするものです」「これによりマーケターはGoogleの壁に囲まれた庭に入ることになり、独立したオープンなウェブは終わりを迎えることになるでしょう」と述べました。

プライバシー・サンドボックスがこのように批判されるのは、その仕組みがChromeというブラウザを中心にしすぎているため。Googleが提案する新しい広告の仕組みでは、広告運用がブラウザレベル、かつデバイス内で行われるため、「ターゲティング広告を表示するためのデータ分析はGoogleだけが知るところになる」という情報の一点集中が問題視されています。また膨大なデータの保存と処理が必要になるとみられているため、データプランが限られた人を差別することにもつながりかねないと指摘されています。


このためリターゲティング企業Criteoのアルノー・ブランチャード氏は、ブラウザだけで完結するのはなくクラウドサービスのプロバイダーやSSPといった「独立したゲートキーバー」が間に入り、多くの人が広告のコントロールに携わる透明性のある仕組みの実現を提案しています。

実際に、Google側もこのような仕組みについて検討しています。当初提案されたTURTLEDOVEはブラウザだけで広告運用を行うものでしたが、新たにGoogleはTURTLEDOVEを発展させ、「信頼されるサーバー」を組み込む「Fledge」を発表しました。

プライバシー・サンドボックスはオープンイニシアチブであるため、Googleのプロダクトマネージャーであるチェトナ・ビンドラ氏はFledgeの「信頼されるサーバー」をどのようにして決めるのかや、誰が信頼されるサーバーをコントロールするのかといった問題について「プライバシー・サンドボックスに参加している人々と話し合って決めていく」としています。また「Fledgeが特定の誰かを信頼されるサーバーとして指定することはありません」ともビンドラ氏は述べました。

近年は広告主・出版社・アドテク企業からGoogleへの不満が高まっており、Googleの信頼が揺らいでいます。プライバシー・サンドボックスへの非難の中核にも、この「信頼の欠如」があるとプライバシー法律事務所のアラン・チャペル氏は指摘。問題を解決するには、「Chromeがユーザーにとって最善の選択肢で、Googleが示す数字は正確であり、Google自身もオープンウェブに向かっており、新しい仕組みが完成したら他のテクノロジー企業も競争力を持てる」と人々が信じられるようになる必要があるとチャペル氏は述べました。

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in ソフトウェア,   ネットサービス, Posted by darkhorse_log

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