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「花嫁衣装は白いウェディングドレスが定番」という常識はいつからできたのか?


結婚式で花嫁が着るウェディングドレスは、近年はピンクやブルー、イエローなどさまざまな色のドレスが登場していますが、白いドレスが一般的となっています。なぜウェディングドレスは白色であることが当たり前になったのか、その歴史についてオハイオ州立大学とコロンバス大学で非常勤講師を務めるモーリス・シェニー氏が解説しています。

Why do brides wear white?
https://theconversation.com/why-do-brides-wear-white-144395


そもそも花嫁がウェディングドレスを着るという慣習のルーツは、およそ2500年前の共和政ローマにさかのぼるとのこと。当時の女性は10代前半に結婚するのが当たり前で、新郎新婦両方がローマ市民であるか、「コンビウム」と呼ばれる特別な許可がなければローマでは結婚が許されず、恋愛結婚ではなく家族間の合意に基づいて婚約が交わされていました。

花嫁は白いチュニックを着て、ヘラクレスの結び目でしっかり腰帯を巻き、オレンジ色のベールと靴を履いて花婿がやってくるのを待っていたそうです。

また、共和政ローマの時代には、白という色に「純潔」という意味を見いだす文化はすでに共有されており、かまどの女神で処女神であるウェスタに仕えたウェスタの処女は純潔を30年間守る誓いを立て、常に白い服を着用していたことがわかっています。


しかし、ローマ帝国が崩壊した後、花嫁衣装に白い服を選ぶのは時代遅れになったとのこと。中世から19世紀半ばまで、花嫁は「自分が持っている最高のドレス」か「別の機会でも着られるようなドレス」を着る場合がほとんどでした。シェニー氏によれば、十分な水がないままで洗濯物を手洗いする世界では、汚れやすい白い衣装は実用的とみなされませんでした。

そんな中、花嫁衣装に大きなトレンドを引き起こしたのが、19世紀の大英帝国を象徴するヴィクトリア女王です。ヴィクトリア女王は1840年にドイツ・ザクセンのアルバート王子と結婚した時、「王は結婚式では戴冠式で着用したローブを着用する」という伝統を破り、白いレースで飾ったシルクのウェディングドレスとベールを着用しました。

以下が戴冠式の時のヴィクトリア女王を描いた絵。


そして、結婚式でのヴィクトリア女王のドレスが以下。このドレスはヴィクトリア女王の長女であるヴィクトリアも結婚式で着用したそうです。


ヴィクトリア女王が着用したドレスは女性が若くて魅力的に見えるようにデザインされていたことから、ヨーロッパ全土で大ブームとなり、同じようなドレスを結婚式に着たがる女性が続出。19世紀半ばの産業革命時代に、泥や汚れとは無関係な「清潔でエレガントな場所」で結婚することは裕福でなければ不可能だったため、このヴィクトリア女王式の白いウェディングドレスは「富と名声」を示すものとなりました。

なお、このヴィクトリア女王式の白いウェディングドレスは、顔の白さを引き立たせるため、やや黄色がかったアイボリーでした。そのため、19世紀当時、現代に見られるような鮮やかな純白のウェディングドレスはまったく人気がなかったそうです。

純白のウェディングドレスのブームの発端となったのは、第二次世界大戦下のアメリカでした。戦場から帰ってきた兵隊が結婚して子供を作ることでベビーブームが到来。結婚式の回数も非常に増加する中で、ウェディングドレスのデザインに大きな変化が起こったそうです。戦争中は物資不足を避けるために布の使用を規制する法律も作られましたが、ブライダル業界のロビー活動によって、ウェディングドレスに関しては規制を免除されたことも大きな影響を与えたと、シェニー氏は分析しています。


その後、あらかじめ型紙やサイズが用意され、カスタマイズ可能なウェディングドレスを手ごろな価格で注文できるようになり、レースやフリルがふんだんに用いられたプリンセススタイルの真っ白なウェディングドレスが登場。「多くの招待客の前で、豪華なデザインのウェディングドレスに身を包んだ花嫁と祝福される」という絵図はアメリカンドリームの象徴となりました。また、第二次世界大戦以降から、白いウェディングドレスは「純潔」「夫への献身」というイメージで語られるようになったといわれています

今でもアメリカ人の花嫁の5人中4人が「白いウェディングドレスを着てバージンロードを歩く」というプランを選択するとのこと。自身も白いウェディングドレスを着て結婚式を挙げたというシェニー氏は「白いウェディングドレスは結婚式を象徴するシンボルになりましたが、その歴史は比較的短いのです」と答えています。

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in デザイン, Posted by log1i_yk

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