新型コロナウイルスのパンデミックは「子育てをする親」にどのような影響を与えているのか?
新型コロナウイルスのパンデミックに伴いリモートワークの増加や遠隔教育の導入といった変化が起きており、子育てをする親は大きな苦労を経験しています。そんな中、オランダの研究チームが「パンデミック中の親に起きたこと」について調査した結果が、学術系メディアのThe Conversationで報告されました。
COVID Gender (In)equality Survey Netherlands
(PDFファイル)https://www.uu.nl/sites/default/files/Yerkes%2C%20Mara%20Policybrief%20EN.pdf
Five things we learned about Dutch parents during the pandemic – new research
https://theconversation.com/five-things-we-learned-about-dutch-parents-during-the-pandemic-new-research-151616
2020年3月、オランダは他のヨーロッパ諸国と同様に、パンデミック対策として厳しい都市封鎖を行いました。それから9カ月が経過した12月にも、クリスマスから年末年始を含めた5週間の都市封鎖が再導入されています。オランダの研究チームはパンデミックが子育て世代に及ぼす影響について調査するため、18歳未満の子どもを持つオランダの親を対象にした追跡調査を行っており、以下の5つのことが判明したと述べています。
◆1:労働時間が増加している
研究チームが調査を行った6月には、全体の45%の親が「パンデミック以前と労働時間が変わった」と回答しました。およそ15%の親が「パンデミック前より労働時間が短くなった」と答え、30%が「パンデミック前より労働時間が長くなった」と答えたそうで、全体的に労働時間は長くなる傾向が見られます。「労働時間が長くなった」と回答した労働者の割合は、社会の運営に不可欠なエッセンシャルワーカーで36%、非エッセンシャルワーカーでは25%だったそうで、エッセンシャルワーカーの労働時間がより長くなっているとのこと。
また、オランダはパートタイム労働者の割合が先進国の中でも高いことで知られており、パンデミック前は女性の3分の2、母親はさらに多い割合がパートタイムで働いていました。ところが、元々の労働時間が短いパートタイム労働者が、正社員以上の労働時間の増加を経験したわけではないそうです。「パンデミック前の労働時間は、両親が長時間働く可能性に影響を与えませんでした」と研究チームは述べており、パンデミックは父親と母親の労働時間の差を埋めなかったことを示唆しています。
◆2:母親の余暇時間が減少している
6月の調査では母親の半数が「パンデミック前より余暇が少ない」と回答した一方で、同様の回答をした父親の割合は31%でした。4月の調査では母親の57%、父親の36%が余暇の減少を報告したことから、以前よりは状況が改善しているものの、依然として余暇の減少は深刻です。
パンデミック以前から女性の方が余暇の質が低いとの研究結果も報告されており、余暇時間の減少はさらなる問題を引き起こす可能性があるとのこと。余暇は心身の健康にとって重要であり、十分な休息が取れない場合は燃え尽き症候群をはじめとする健康問題につながりかねないと研究チームは指摘しました。
◆3:子育てに関する口論が増加している
パンデミックに伴って両親の間で口論が増えており、母親と父親の両方が「お互いの労働時間について口論する頻度がパンデミック以前より増えた」と報告しています。また、パンデミックが起きた後は、両親の間で新たな子育て方法を巡る口論も増えているとのこと。
パンデミック前は「育児に関する口論を毎週行う」と回答した両親の割合は9%でしたが、パンデミックが起きた後の6月には25%に増えました。6月はすでに小学校や保育所も再開していたため、この増加は驚くべきものだと研究チームは指摘しています。
◆4:両親の役割転換が進んでいる
パンデミックは母親と父親の役割分担にも変化を及ぼしているようで、6月の調査では父親の31%が「パンデミック前よりも子育てに参加するようになった」と回答しました。4月の調査では父親の22%が「パンデミック前より子育てに参加するようになった」と回答したことから、時間が経つにつれて両親間のギャップが埋まっているといえます。
その一方で、「父親と母親で家事の分担が平等である」と回答した両親の割合はパンデミック前が32%、4月が36%、6月が31%だったそうで、子育ての分担と比べると家事の分担は進んでいないとのこと。
◆5:両親は状況に満足している
研究チームが子育ての満足度を1~10のスケールで評価するように求めたところ、父親は7.4、母親は7.1と回答しました。また、家事の満足度について同様に尋ねると、父親は7.3、母親は6.8と回答したとのこと。以前の研究は「母親が不公平な状況を公正であると考えている」という状況が、ジェンダーの不平等を減らす上での障壁になることを示唆しています。そのため、両親が比較的現状に満足している今の状況では、両親間のジェンダーギャップの解消が進まない可能性があると研究チームは指摘しています。
パンデミックは依然として継続中であり、両親の生活の質にパンデミックが与えた長期的な影響を軽減するには、政府や雇用主からの多くの支援が必要です。慎重に設計された支援策によって両親が仕事や子育てのバランスを摂りやすくすることが、ジェンダーの不平等を解消する役に立つと研究チームは主張しました。
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