「今年の冬は帰省してもいい?」を3人の専門家に聞いてみた結果とは?
海外では、クリスマスから始まるホリデーシーズンには多くの人が休暇をとって、自宅や実家で家族団らんの時間を過ごし、日本でも年末年始は帰省して親元で過ごすという人が多くいます。学術系ニュースサイト・The Conversationが「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が依然として猛威を振るっている2020年のクリスマスは家族の元を訪ねてもいいか?」との質問をイギリスの専門家3人にぶつけて、その回答をまとめました。
Should you visit your family this Christmas? Three experts weigh in
https://theconversation.com/should-you-visit-your-family-this-christmas-three-experts-weigh-in-152147
2020年12月8日からアメリカの製薬大手ファイザーが開発した新型コロナウイルスワクチンの接種プログラムをスタートしたイギリスのボリス・ジョンソン首相は、クリスマスシーズンへの対策を問われた2020年12月16日の議会で「ワクチン接種プログラムが非常に良好なスタートを切ったと報告できるのを、大変うれしく思います。しかし、クリスマスを祝う方法には最新の注意を払わなくてはなりません」と答弁し、12月23日~27日の間に集まるのを最大3世帯に限定する「クリスマスバブル」政策の緩和はしないとの方針を示しました。
こうした状況を踏まえた、「今年のクリスマスは家族と会ってもいいのか?」という質問に対して、3人の専門家は次のように回答しています。
◆1:ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンの環境工学准教授のLena Ciric氏
Ciric氏の答えは「決定的にノー」とのこと。イギリスではCOVID-19の症例報告が増加傾向にあることから、ルールを緩和すれば新年には新しいピークが到来する危険性が高いためです。
Ciric氏は「一家が集まるということは、COVID-19の重症化リスクが高い高齢者や、若すぎて距離を保つのが難しい子どもが一堂に会するということを意味しています。そうした状況で、COVID-19対策として求められている2メートルの社会的距離を保つのは事実上不可能でしょう」と述べました。
また、室内が換気が不十分になりがちなことや、家で家族とくつろいでいる人がマスクを着用し続けることは現実的ではない上に、クリスマスに欠かせないシャンパンなどを飲むと一層ルールがおざなりになりかねないことを、Ciric氏は懸念しています。こうした要因からCiric氏は、「クリスマスの家族の団らんは、リスクに見合う価値はないと考えます」と結論付けました。
◆2:オックスフォード大学地理学教授のダニー・ドーリング氏
ドーリング氏は、「高齢者次第」と答えました。例えば、普段は会わない高齢の親に会いに行くということは、それ自体が感染リスクを高める行為です。一方、子どもがいる夫婦が高齢の両親のそばに住んでいて、これまでも度々週末に子どもを預けているようなケースでは、クリスマスに限って会わずにいてもCOVID-19の感染リスクはさほど変わらないと、ドーリング氏は指摘しました。
またドーリング氏は、「70代以上のCOVID-19感染者数は、10月末から12月上旬にかけて0.80%から0.48%に減少した」との調査結果から、イギリスに住む高齢者の99.5%以上がCOVID-19に感染しておらず、すでに多くの高齢者が感染リスクを減らす取り組みを続けているという実態がうかがえることも強調しています。
こうした要因を踏まえて、ドーリング氏は「最も簡単なのは、高齢者にクリスマスをどう過ごしたいか聞いてみることです。彼らが人に会うリスクは、他の全ての世代のリスクを合算したものより何倍も高いものです。一方、高齢者はこれまでの人生で多くのリスクを吟味し、少なくとも今のところは命を落とさないことに成功しています。高齢者がどう答えるにせよ、それは尊重されるべきでしょう」とまとめました。
◆3:シェフィールド大学健康関連研究科のアンドリュー・リー博士
公衆衛生専門の査読付き医学誌Global Public Healthの編集者を務めるリー氏は、医療サービスに負荷がかかることを念頭に、「クリスマスに家族で集まることは避けるべき」との見方を示しました。
リー氏は、そもそも冬は医療サービスにとって厳しい季節だと指摘し、COVID-19感染者が増加すればCOVID-19以外の治療まで遅れると指摘。その上で、「クリスマスに家族が1カ所に集まるのを許可することは、火に油を注ぎ、感染症のまん延を助長するようなものです」と述べました。またリー氏は、COVID-19感染者数が増加すれば医療機関のみならず学校や介護施設、職場といった他の環境にも影響が及び、より大規模な社会的・経済的混乱が起きることも反対理由の1つに挙げています。
こうした理由から、「ワクチン接種プログラムによる保護が約束されているこの状況においては、国民保健サービスが可能な限り多くの感染症に対して弱い人々にワクチンを届ける時間を稼ぐために、あらゆる努力を払うべきです。クリスマスに家族が1カ所に集まるのは、不必要なリスクを取ることであり、命を失う代償を伴うものです」とリー氏は結論付けました。
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