サイエンス

新型コロナ対策に必要な「換気」の基準がないと専門家が指摘


2020年初頭から世界で猛威を振るっている新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)について、長らく感染経路は「飛沫感染」と言われてきましたが、それだけでは感染力の強さや屋内と屋外での感染の差を説明できないとして、「空気感染の定義を根本的に見直すべき」と提言されています。これに続くように、微生物学者や室内環境学者ら4人が、パブリックスペースの「空気の質」を問う論文を発表しています。

Why don’t we just open the windows? | The BMJ
https://doi.org/10.1136/bmj.n2895


論文はエディンバラ・ネイピア大学の微生物学者ステファニー・J・ダンサー教授、デルフト工科大学室内環境学のフィロメナ・M・ブルーセン教授、香港大学建築環境学のユーゴ・リー教授、レスター大学呼吸器科のウイルス学者ジュリアン・W・タン教授により書かれたもので、医学雑誌・The BMJに掲載されています。

論文の中でダンサー教授らは、感染対策として「ソーシャルディスタンス」「マスク着用」「ワクチン接種」などが行われてきた一方で、「適切な室内換気」は後回しになってきたと指摘しています。


その理由は、ほとんどの資金提供団体が緊急性の最も高いものや、商業的に有益な社会問題を優先していることが1つですが、「空気の質」の改善は、外気と内気の温度・湿度調節に大きなエネルギーを要することも挙げられています。

また、食品や水、公害に関しては公衆衛生戦略が確立されているのですが、パブリックスペースの空気の質に関してはこれといった統一基準がなく、また、適用にも一貫性がないと論文は指摘。

定期的なメンテナンスが求められる換気システムがなくても「窓を開ける」ことはできますが、COVID-19などに対する万能薬ではないということで、ダンサー教授らは、問題に取り組むため、科学者や政策立案者の支援が必要であると呼びかけています。

なお、換気をするにあたって「窓を開ける」ときも、うまく換気が進む窓の開け方とそうではない窓の開け方があるので、注意が必要です。

上手な換気の方法 | 空気とくらし | 空気で答えを出す会社 | ダイキン工業株式会社
https://www.daikin.co.jp/air/life/ventilation

オフィス・店舗編 | 上手な換気の方法 | 空気とくらし | 空気で答えを出す会社 | ダイキン工業株式会社
https://www.daikin.co.jp/air/life/ventilation/office

具体的には、ダイキン工業が示しているように、部屋の対角線に空気の通り道ができるように窓を開けることができればベスト。


開けられる窓が1つしかない場合は、扇風機やサーキュレーターを窓の外に向けて設置すると空気がうまく流れます。反対向きに、室外の空気を内側に送り込むように設置した場合、室内の汚れた空気が外に出ず、部屋の中にとどまってしまうことがあるとのこと。


部屋に窓がない場合は、部屋の外に向けて空気を送り出すように扇風機やサーキュレーターを設置。浴室やトイレ、台所の換気扇から空気を家の外に出せばOKだそうです。

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in サイエンス, Posted by logc_nt

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