サイエンス

新型コロナのパンデミックが終息して以前の日常生活に戻るのはいつ頃なのか?


新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックによって生活や行動様式が大きく変化する中で、人々は「いつになったらパンデミック前の生活に戻れるのか?」を知りたがっています。そんな疑問についてさまざまな科学者らが回答した内容を、アメリカ・アラスカ州の日刊紙であるアラスカ・ディスパッチ・ニューズがまとめています。

For scientists, path to COVID-19 endgame remains uncertain
https://www.adn.com/nation-world/2021/09/04/for-scientists-path-to-covid-19-endgame-remains-uncertain/

COVID-19のパンデミックがいつ終息するのかについては多くの見方があり、「2021年中には終わる」といったものから「2022年の春、あるいは2022年中には終わる」「2、3年は終わらないだろう」といったものまでさまざまです。カリフォルニア大学サンフランシスコ校の感染症専門医であるモニカ・ガンジー教授は、「私は本当に、本当にパンデミックが終息しつつあると考えています」と述べ、2021年10月中旬にはCOVID-19が管理可能となり、医療専門家は懸念するものの一般大衆は気にしない程度の病気になると主張しています。


ガンジー氏の考えは、これまでに発生した呼吸器ウイルスのあらゆるパンデミックが、ワクチン接種や自然感染による免疫の獲得で終息したという事実を根拠としています。もちろん、ウイルスは突然変異によって免疫を回避することがありますが、急速な変化はウイルス自身の弱体化につながるとのことで、記事作成時点で猛威を振るうデルタ株が新型コロナウイルスのピークだと推測しているとのこと。

一方、ペンシルベニア大学の医療倫理と健康政策の教授であるエゼキエル・エマニュエル氏は、1日に1000人以上が死んで多くの子どもたちが入院している現状は、とても正常なものとは言えないと指摘。エマニュエル氏は2020年3月に「2021年11月には正常化するだろう」と予想した際、友人からは悲観論者だと言われたそうですが、記事作成時点ではパンデミック以前の生活に戻るのは早くとも2022年春、おそらくもっと先になるだろうと考えています。


専門家たちはパンデミックの終息について、「COVID-19が風邪やインフルエンザのような病気の1つとなり、時には発症したり人が死んだりすることもあるものの、医療的な緊急事態ではなくなる状態」というコンセンサスを持っています。この認識に基づいて、スタンフォード大学の医学・健康経済学者であるジェイ・バタチャリヤ教授は、「COVID-19の緊急段階は終わりました」として、COVID-19をあくまで「人々に影響を与える病気の1つ」として扱うべきだと主張しています。

バタチャリヤ氏の主張は、ワクチン接種が高い確率でCOVID-19による死から身を守ることがわかっており、高齢者や基礎疾患を抱える人々の入院や死亡例の減少に成功していることを根拠としています。「私たちは大成功を収めました。そして私にとって、これが流行の終点です。なぜなら、それ以上の対策はできないからです」と、バタチャリヤ氏は述べました。

今後も新型コロナウイルスは変異を続け、時には季節的・地理的なクラスターが発生することはあるものの、症例数の増減で一喜一憂するべきではないとバタチャリヤ氏は指摘。既にバタチャリヤ氏はパンデミック以前の生活を再開する準備ができており、マスク着用ではあるものの、夏休みはイギリスへ海外旅行にも出かけたそうです。

デルタ株がCOVID-19パンデミックのピークであると主張するガンジー氏も、今後もCOVID-19が消えることはないものの、免疫の獲得によって死亡率が低くなって風邪やインフルエンザのようなものになると主張しています。デルタ株のまん延によってアメリカ人の中には不安が広がっていますが、より大きな問題はパンデミックに対する「過度な恐怖」だとのこと。

ガンジー氏は、「民主党は死亡率を過大評価しており、共和党は過小評価しています」と指摘。パンデミック以前の活動を再開することをためらう民主党員も、混雑した屋内でマスク着用を拒む共和党員も、それぞれがパンデミック以前の生活への復帰を妨げていると非難しています。


一方、ノースカロライナ州立大学のシステムエンジニアであり、2009年のH1N1インフルエンザのパンデミックで疾病予防管理センター(CDC)に助言したジュリー・スワン氏は、ガンジー氏が過度に楽観的だと指摘。スワン氏は、パンデミックの広がりに子どもたちが大きく関わっているため、パンデミックが終息して通常の生活に戻るには、「子どもたちへのワクチン接種」が必要だと考えています。

「子どもたちはウイルスをお互いに、家族に、そしてコミュニティに感染させます」「正常化に向けた最初のステップは、少なくとも5歳以上の子どもたちにワクチンを接種することです」とスワン氏は述べています。パンデミック終息に向けたシナリオには「構成員のほとんどがウイルスに感染して免疫を付ける」「リモート学習やマスク着用を徹底する」「強固な都市封鎖を行う」などがありますが、最も好ましいシナリオは「5~11歳の子どもたちへのワクチン接種を徹底する」ことだとのこと。

スワン氏は、記事作成時点から10年が経過すればCOVID-19がインフルエンザのようなものになり、人が死ぬ場合こそあるものの今回のような緊急事態は引き起こさない病気になるだろうと予想しています。この場合、時にはワクチン接種率の低いコミュニティでCOVID-19の症例が増加するものの、病院がCOVID-19患者で圧倒されることはないそうです。なお、スワン氏は既に国内旅行を再開したものの、子どもがワクチン接種を受けるまでは、海外旅行やパーティーを避けるつもりだとしています。


バタチャリヤ氏は、「予防接種を受ければパンデミック前の生活に戻ることができる」というメッセージを打ち出し、人々がワクチン接種を受けるよう説得するのは、公衆衛生当局の責任であると主張しています。スタンフォード大学ではキャンパス内の全ての関係者に予防接種を義務づけており、2021年の秋学期から対面授業を再開するとのことで、バタチャリヤ氏は学生と会うのが楽しみだとのこと。

一方、ペンシルベニア大学のエマニュエル氏は、ワクチン接種とマスク着用の義務があっても対面授業の再開には多少の緊張を感じるとのこと。エマニュエル氏は、「COVID-19がインフルエンザのように見えて、医療システムが正常に運用され、私の友人が『安全を保つために何ができる?』と尋ねてこなくなる時」が、生活をパンデミック以前に戻すタイミングだと主張しました。

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in サイエンス, Posted by log1h_ik

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