サイエンス

世界中で食べられている米はたった2種の「母親」から生まれた


米は日本だけでなく世界各地で重要な食用作物とされており、世界人口の実に半分が米を主食にしているといわれています。そんな米を実らせる稲3000種以上のゲノムを解析した結果から、全世界の米はたった2つの系統に分類することができると判明しました。

Two divergent chloroplast genome sequence clades captured in the domesticated rice gene pool may have significance for rice production | BMC Plant Biology | Full Text
https://bmcplantbiol.biomedcentral.com/articles/10.1186/s12870-020-02689-6

Rice has many fathers but only two mothers - UQ News - The University of Queensland, Australia
https://www.uq.edu.au/news/article/2020/11/rice-has-many-fathers-only-two-mothers

近い将来、気候変動により農業が深刻な打撃を被ることが予想されていることから、重要な食用作物である米の遺伝的多様性を理解して気候変動に備える食料安全保障の強化が急務だといわれています。


そこで、オーストラリア・クイーンズランド大学に勤めるロバート・ヘンリー教授らの研究チームは、世界各地から集められた稲3018種のゲノム配列を解読した「3000 Rice Genomes Project(3KRGP)」のデータベースに注目しました。3KRGPとは、フィリピンにある国際稲研究所(IRRI)などが中心となって、世界89カ国で栽培されている全3018種の稲のゲノム配列を解読した国際プロジェクトです。

ヘンリー教授らが3KRGPから稲の葉緑体ゲノムを取得して分類したところ、3018種の全てが「A系統群」か「B系統群」の2つのグループに属していることが分かったとのことです。

以下は、ヘンリー教授らが分類した稲の系統図で、紫色が「A系統群」、青色が「B系統群」を表しています。また、この研究により、人間によって栽培化された2系統の稲は赤色で示された「オーストラリア種」や、緑色で示された「アジア野生種」の稲の遠い親戚だったことも分かりました。


この結果について、ヘンリー教授は「我々は、約100万年前に分岐した2種の野生の稲が、別々に栽培化されたと考えています」とコメントしました。

米の種類というと、ジャポニカ米インディカ米の区分が有名ですが、この区分は今回ヘンリー教授らが特定した2系統の分類とは直接のつながりはありませんでした。以下は、「A系統群」に属していた亜種の内訳です。「A系統群」はインディカ種が大半でしたが、熱帯ジャポニカ種温帯ジャポニカ種といった亜種も少数含まれていました。


「B系統群」にもこれらの種の稲は含まれていましたが、「A系統群」とは割合が大きく異なっていました。


この研究結果について、ヘンリー教授は「稲における母系の遺伝子は種子に保存されており、稲作農家は代々田んぼから種を集めているため、各地の米はその地の野生種に非常によく似ることが分かりました」と述べています。

ヘンリー教授はまた、「稲の栽培化の過程に関する調査は、人類が野生の稲の多様性を稲の遺伝子プールに採り入れながら、稲を改良してきた努力についての手がかりとなってくれます。また、以前は稲がこれほどはっきりと2つの母系の機能型に分かれていることが知られていませんでしたが、今後は母系の遺伝子型を理解することが稲のパフォーマンスの観点からも重要であることが示されました」と話しました。

研究チームは今後、数学者らと共同で稲のデータをより詳細に分析する手法の開発に取り組み、さまざまな稲の亜種の関係を調査していく予定だとしています。

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in サイエンス,   , Posted by log1l_ks

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