サイエンス

第二の「緑の革命」を起こし得る新しい品種の稲が開発される


従来の品種よりも多くの収穫をあげることができる稲や小麦などを開発するために、窒素吸収能力を強化する遺伝子を特定して少ない肥料でより多くの収穫が期待できるような新しい品種の稲を開発したという研究が報告されています。この研究はかつて「緑の革命」と呼ばれた大規模な農業革命を引き継いだもので、使用する肥料の量を減らすことで環境への影響を減らすことができると期待されています。

‘Green revolution’ crops bred to slash fertilizer use
https://www.nature.com/articles/d41586-018-05980-7


1940年代から1960年代にかけて、「より多くの収穫量を望める品種の導入」「より効率的な灌漑(かんがい)の敷設」「化学肥料や農薬の大量投入」などによって、穀物の生産性が飛躍的に向上した一連の取り組みを「緑の革命」と呼びます。その後も農業の革命は続き、1961年におよそ7億7400万トンだった世界全体の穀物収穫量は、1985年には倍以上の16億2000万トンに増加しています。


カーネギー研究所の植物科学者であるキャスリン・バートン氏は「『緑の革命はもう終わってしまった』と思っていたとしたら、それは間違いです」と語り、倍以上の収穫量を得てもなお、穀物の栽培技術にはまだ改善の余地があると指摘しています。

穀物を含め、植物が成長するためには窒素などの栄養分が必要です。栄養分や微生物を多く抱えた肥えた土地であれば、作物は十分栄養分を吸収できますが、そうでない場合は化学肥料が必要となります。2015年だけでも、世界全体でおよそ1億400万トンの肥料が使われたといわれています。

by U.S. Department of Agriculture

中国科学院農業化学部門の研究者であるシャンドン・フー氏は、大量の化学肥料の使用は農民にも環境にも有害であると述べています。「農地に含まれた過剰な栄養が川・湖・海に流れ込むと、藻類の大発生を招いて水中の酸素を消費し、魚をはじめとした水生生物を窒息させてしまう原因となってしまいます。そのため、少ない肥料で高い収穫量を得られるような品種を作り出す必要があります」とフー氏は主張しています。


フー氏率いる研究チームは、植物の窒素吸収不良と低身長の原因と特定されている「DELLAタンパク質」と呼ばれる物質に注目しました。従来の作物では、植物ホルモンのジベレリンによってDELLAタンパク質の分解が促進されます。しかし、「緑の革命」で開発された品種は、台風やモンスーンによって収穫前に倒伏するのを防ぐため、植物の丈が低くなるような品種改良が行われています。研究チームは、「緑の革命」で開発された品種の中でDELLAタンパク質の分解システムがなんらかの理由で機能していないと考えました。

そこで、研究チームは通常よりも丈が低い矮性(わいせい)を示す稲36種類のDNAを比較し、それぞれの品種の窒素吸収能力を調べました。そして、DELLAタンパク質のコードとなる遺伝子と、成長調節因子(GRF4)と呼ばれるタンパク質の遺伝子を同定しました。フー氏はGRF4が植物への窒素・炭素の吸収を促し、代謝と成長を促進させ、さらにこのGRF4がDELLAタンパク質の影響を打ち消すことを発見しました。

そこで、研究チームはGRF4をより多く発現するような稲を開発して栽培しました。その結果、「緑の革命」で開発された品種よりも少ない肥料で十分な収穫量を得られました。研究チームは、この稲を新しい品種として登録し、特許を申請しているところだそうです。


デラウェア大学の環境品質の専門家であるジェニファー・フォーク氏は、過剰な窒素や栄養素によって引き起こされる環境への害が軽減されるため、この戦略は有望だと述べています。しかし一方で、カーネギー研究所の環境技術者であるアンナ・ミカラック氏は「勝利したと思うような時はいつも、予想できなかったことが起こるものです。そして、何が起こるのかを予想できるほど、私たちは賢くありません」と、新しい品種の誕生に対して慎重な姿勢を示しています。

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in サイエンス, Posted by log1i_yk