最大7000MB/秒の超高速NVMe SSD「WD_BLACK SN850」徹底レビュー、最高速クラスとの比較で真の実力が明らかに
Western Digitalから最高読み込み速度7000MB/秒を誇るPCIe 4.0対応M.2 NVMe SSD「WD_BLACK SN850」が登場しました。同社の高パフォーマンスシリーズ「WD_BLACK」の最新SSDが一体どれほどの実力を持っているのか、スペックが近い「Samsung 980 PRO」とベンチマークを比較して徹底的に検証してみました。
WD_BLACK™ SN850 NVMe™ SSD | Western Digital ストア
https://shop.westerndigital.com/ja-jp/products/internal-drives/wd-black-sn850-nvme-ssd
◆外観
WD_BLACK SN850の外箱はこんな感じ。名称の通り黒を基調としたデザインとなっています。
外箱の裏側にはスペック情報などが記載されていました。
スペック上は最高7000MB/秒の読み取り速度、100万IOPSでのアクセスが可能とのこと。
SN850はヒートシンクなしのモデルとヒートシンク付きのモデルがラインナップされており、今回レビューするのはヒートシンクなしのモデル。ヒートシンク付きのモデルは2021年に登場予定とのこと。
マザーボードとはM.2で接続し、PCIe 4.0を4レーン使ってデータ転送を行います。
SN850の裏面はこんな感じ。特に冷却機構はありません。
Samsung 980 PROの裏面には冷却用の銅板が付いているので、冷却性能では980 PROに軍配が上がりそう。
WD_BLACK AN1500と同じく、SN850もWestern Digital ダッシュボードで各種ステータスの確認や設定を行うことが可能。SN850で設定できる「ゲームモード」をオンにすると、パフォーマンスを最適化して高速なデータ転送ができるそうです。
◆ベンチマーク
WD_BLACK SN850はストレージ容量によって書き込み速度などのスペックが異なります。(PDF)データシートを元にスペックを表にまとめました。
500GB | 1TB | 2TB | Samsung 980 PRO(1TB) | |
---|---|---|---|---|
品番 | WDS500G1X0E-00AFY0 | WDS100T1X0E-00AFY0 | WDS200T1X0E-00AFY0 | MZ-V8P1T0BW |
記録方式 | TLC | 3bit MLC | ||
連続読み込み速度 | 7000MB/秒 | |||
連続書き込み速度 | 4100MB/秒 | 5300MB/秒 | 5100MB/秒 | 5000MB/秒 |
ランダム読み込み速度(4KB, QD32) | 100万IOPS | |||
耐久性 | 300TBW | 600TBW | 1200TBW | 600TBW |
動作時の温度範囲 | 0℃~70℃ | |||
非動作時の温度範囲 | -55℃~85℃ | N/A |
今回比較するのはスペックが近いWD_BLACK SN850の2TBモデルとSamsung 980 PROの1TBモデル。SN850の通常時、ゲームモードオン時、980 PROでそれぞれベンチマークを実行し、パフォーマンスを比較していきます。
今回ベンチマークに使用したマシンのスペックは以下。
・マザーボード:ASRock B550 PG Velocita
・CPU:Ryzen 9 3900X
・RAM:16GB
・OS:Windows 10 20H2
まずはCrystalDiskMarkで読み書き速度を計測。ゲームモードでの連続読み込み速度が7018MB/秒、連続書き込み速度が5164MB/秒と、公称を超える数値となりました。CrystalDiskMarkではゲームモードのオンオフで速度に大きな違いは見られず。980 PROとの比較ではSN850が勝利するという結果に。
AS SSD Benchmarkでは、ゲームモードをオンにしたことによる読み書き速度の差が顕著に現れました。
ATTO Disk Benchmarkでも、ゲームモードのオンとオフで書き込み速度に100MB/秒ほど違いが見られます。いずれのベンチマークでもSN850が980 PROに対して読み書き速度で勝るという結果になりました。
ATTO Disk Benchmarkの実行完了直後のSSD温度をCrystalDiskInfoで確認した結果が以下。ゲームモードは読み書きを高速化できるかわりに、高負荷時における本体温度が上昇。銅板が付いている980 PROの冷却性能が優秀であることがわかります。
SN850や980 PROが採用するマルチレベルセルは低コストでSSDを大容量化できる技術ですが、書き込み速度の低下という弱点も存在します。近年のSSDはそうした書き込み速度の低下を克服すべく、メモリの一部をシングルレベルセル(SLC)のキャッシュとして利用することで高速な書き込みを実現していますが、当然ながらキャッシュを使い果たすと書き込み速度は遅くなってしまいます。SN850と980 PROでキャッシュの性質にどのような違いがあるのか、ベンチマークツールのfioを用いて大容量データを書き込み、帯域の変化を確認していきます。
fioでのベンチマーク時に使用したパラメーターは以下。ドライブの全領域を使用する大容量ファイルを連続で書き込み、キャッシュを枯渇させて帯域の変化を見てみます。
・ブロックサイズ:1MB
・スレッド数:4
・iodepth:32
980 PROとの比較の前に、まずはSN850単体の実力を見てみます。ファイルシステムを経由して大容量データを書き込んだ結果が以下。
キャッシュ容量枯渇による速度低下が顕著に現れました。ゲームモードの方が高速に書き込める分、早いタイミングでキャッシュが枯渇しています。
キャッシュが枯渇した後は、通常モードもゲームモードもおよそ1000MB/秒程度まで書き込み速度が低下しています。
通常のファイルコピーなどはファイルシステムを経由して行われますが、OSのインストールなどはファイルシステムを経由せずデバイスに直接データが書き込まれます。SN850でファイルシステムを経由せず直接デバイスに書き込む場合と、ファイルシステムを経由してデータを書き込む場合での書き込み速度を比較すると、ファイルシステムを経由しない場合のほうが700MB/秒ほど高速に書き込めています。
今回のベンチマークではデータを並列に書き込むスレッド数を「4」に設定しています。試しにスレッド数を「1」に変更し、「4」の場合と比較してみたところ、大きな違いは確認できませんでした。
薄い青色をSN850、濃い青色をSN850のゲームモード、オレンジを980 PROとして、ファイルシステム経由での書き込み速度をプロットしたグラフが以下。キャッシュが枯渇するまではSN850が980 PROを圧倒しており、キャッシュの容量もSN850が圧勝。しかし、キャッシュ枯渇後の書き込み速度は980 PROに軍配が上がっています。
SN850、SN850ゲームモード、980 PROでファイルシステムを経由せず書き込みを行った場合の速度はこんな感じ。SN850と980 PROはファイルシステム経由時と傾向に変化はありませんが、SN850のゲームモードでは、ファイルシステムを経由しない場合はキャッシュによる高速書き込みがほとんど行われないという結果に。その分一貫して1800MB/秒程度の安定した書き込み速度を維持できています。
◆まとめ
WD_BLACK SN850はスペック通り最大7000MB/秒でデータを読み込める超高速SSDであることがわかりました。SLCキャッシュ容量も豊富で瞬間的な書き込み性能は同クラスのSamsung 980 PROを圧倒しています。しかし、キャッシュ枯渇後は980 PROの優秀さが光りました。ベンチマーク時の発熱についても、銅板を備える980 PROの方が冷却面で勝っていました。
ただし、980 PROはSLCキャッシュが少なかったり、公称の読み書き速度に少し達していなかったり……と、どちらも一長一短あります。「とにかく額面通りの最高速を手に入れたい!」という人にとっては、SN850は非常に魅力的なSSDになりそうです。
WD_BLACK SN850には3種類の容量があり、500GBモデルは1万6780円、1TBモデルは2万6230円、2TBモデルは5万9730円でAmazonにて販売されています。
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