AppleのM1チップはスティーブ・ジョブズの「最後の賭け」を実現するもの
Appleは2020年11月11日、Apple初のMac向けの独自開発チップとなる「M1」を発表しました。そのパフォーマンスの高さが各界を驚かせたM1チップですが、テック系ジャーナリストのオム・マリク氏は「M1チップはスティーブ・ジョブズの最後の賭けだ」と述べています。M1チップがAppleにとって重要な意味をもち、Appleの転換点になるとも考えられている理由を、マリク氏が論じています。
Steve Jobs’s last gambit: Apple’s M1 Chip – On my Om
https://om.co/2020/11/17/why-m1-chip-by-apple-matters/
Appleは発表の中でM1チップについて「前世代のMacよりも2倍長いバッテリー寿命でありながら、最大3.5倍のCPUパフォーマンス、最大6倍のGPUパフォーマンス、最大15倍の機械学習速度を実現した」と述べました。Appleの主張するM1チップの性能の高さから、「誇張ではないのか」と疑いを持つ人も多くいたとのこと。
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M1チップはシステムオンチップ(SoC)であり、CPU、GPU、メモリ、機械学習などの多くのテクノロジを1つのチップ上の単一の集積回路で結合しています。このようなM1チップは、Appleの元CEOであるスティーブ・ジョブズのビジョンを実現するものだとマリク氏は述べています。
ジョブズの創設したAppleは1984年、初代iPhoneが発売される23年前に初代Macintoshを発売しました。しかしパーソナルコンピューターが全盛期を迎えていた当時、MicrosoftとIntelの組みあわせが主流となり、Macが市場を支配することはありませんでした。MicrosoftとIntelが依存関係にあったため、Appleは数値的にはパフォーマンスが劣るIBMやモトローラのチップをMacに搭載することになります。その後、AppleはIntelのチップを採用し、Intelの市場シェアはさらに拡大しました。
ジョブズは自らの経験から「競争力を維持するためにはAppleが全てを作成・制御しなければならない」と考え、iPhoneを生み出しました。iPhoneはソフトウェア・ハードウェア・ユーザーエクスペリエンス・チップのすべて、つまりジョブズの言う「ウィジェット全体」をAppleが開発しています。Appleの「A」シリーズのチップはiPhone 4と初代iPadに搭載され、以後、チップはより強力になり、多くのタスクを行えるように進化していきます。Aシリーズのチップが消費電力を増やすことなくパフォーマンスを上げることができたのはAppleがウィジェット全体をコントロールしており、ハードウェア・ソフトウェア・チップのバランスを調整できたゆえだといわれています。
一方で、長年、AppleにおいてMacだけがジョブズの考えである「ウィジェット全体のコントロール」を実現できていませんでした。
M1チップの登場は、2011年にジョブズが死去してから9年たって初めて、Appleが「ウィジェット全体のコントロール」を完全に実現したことを意味しているとのこと。
M1チップはiPhoneやiPadのチップよりもずっと強力ではあるものの、その構造はほぼ同じです。つまり1つのチップの上に、CPU・GPU・イメージプロセッサ・ニューラルエンジンへのアクセスを必要とするさまざまなコンポーネントとDRAMが搭載されているため、チップ全体が複数のコンポーネントをまたいで即座にデータにアクセスしたり相互接続したりが可能になっています。
この仕組みによりバッテリー消費を抑え、パフォーマンスを向上させることが可能です。このような構造のM1チップが登場したことで、Appleはさらなる躍進を迎える可能性があると予測するアナリストもいます。
マリク氏は、AppleのライバルがAMDやIntelではなく、SoCシリーズで定評のあるQualcommであるとみています。
Appleのソフトウェアエンジニアリング担当上級副社長であるクレイグ・フェデリギ氏は、業界で一般的に使用されているスペックが、実際のタスクレベルを正確に示さないようになっている点を指摘しています。Appleのハードウェアテクノロジー担当上級副社長であるジョニー・スロウジ氏はこの点を、「重要なのはギガヘルツかメガヘルツかではなく、それによって顧客が何を得ているかです」と言い換えました。
たとえば、M1チップはハイエンドの統合型グラフィックエンジンを構築し、それをより高性能なUMAと組み合わせることでGPUを単体で搭載するマシンよりも多くのことを実現できます。現代のコンピューターでグラフィックとは多くのデータ移動により成り立つものであり、GPU単体を搭載しているコンピューターは、このようなデータの移動にパフォーマンスを奪われるためです。
またフェデリギ氏は「トランジスタをこれ以上シリコン片に搭載するのは難しい」と述べており、ハードウェアの迎えつつある限界を、ウィジェット全体をコントロールするAppleの方法で超えていく考えを示しています。
ジョブズの「ウィジェット全体のコントロール」という考えを受け継ぎつつ、Appleは3年後の将来を見据えて、ハードウェア・ソフトウェアの開発を続けているとのこと。
「私たちはプロダクトとその使用方法に完璧にフィットしたカスタムシリコンを開発しています。私たちがチップをデザインするとき、それは時間にして3~4年かかりますが、クレイグと私は同じ部屋に座って何を届けるべきかを定義し、手を取り合って作業します。IntelやAMD、その他の誰にもこんなことはできません」とスロウジ氏は語りました。
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