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児童人身売買の反対運動を利用してネット上で暗躍する陰謀論者グループ「QAnon」が拡大


アメリカの陰謀論者集団「QAnon」は、FacebookやTwitterなどのSNSや匿名掲示板で陰謀論やフェイクニュースを広める活動で知られています。そんなQAnonが、児童の人身売買に反対する「Save the Children(セーブ・ザ・チルドレン)」の運動を隠れ蓑にして、SNS上での勢力を大幅に広げたとニューヨーク・タイムズが報じています。

How ‘Save the Children’ Is Keeping QAnon Alive - The New York Times
https://www.nytimes.com/2020/09/28/technology/save-the-children-qanon.html

ニューヨーク・タイムズによると、2019年には主要な活動場所であった画像掲示板の8chanでスレッドが閉鎖されるなどの影響もあり、QAnonの活動がやや下火になっていたとのこと。しかし2020年には、新型コロナウイルスのパンデミックに関連してマスク着用やワクチンに関する陰謀論を広げたり、ブラック・ライブス・マター運動に乗じて活動を活発化させたりと、QAnonは勢力を盛り返しています。

ところが、カナダのコンコルディア大学でQAnonについて研究している博士課程学生のMarc-André Argentino氏によると、2020年に最もQAnonの盛り返しに寄与したのはパンデミックでも人種差別問題でもなく、児童人身売買に反対する「セーブ・ザ・チルドレン」の運動だそうです。

そもそも「セーブ・ザ・チルドレン」運動とは、子どもの権利保護を目的としたイギリスのNGO「セーブ・ザ・チルドレン」への募金活動を目的として始まったものでした。Instagramのインフルエンサーが児童人身売買の現状を訴え、「#SaveTheChildren」のハッシュタグを用いて呼びかけたところ、多くの人々がこの問題に注目しました。当初は純粋な気持ちからスタートしたセーブ・ザ・チルドレン運動でしたが、そこにQAnonが目を付けたとのこと。


QAnonは以前から、「ヒラリー・クリントン氏の関係者が人身売買や児童性的虐待に関与している」とする陰謀論をはじめとして、「世界のエリートたちが児童の人身売買に関与している」と訴えてきました。セーブ・ザ・チルドレン運動は、QAnonが自分たちの過激な政治的主張を隠しつつ人々の間に陰謀論を浸透させることに適した話題といえます。

「#SaveTheChildren」のハッシュタグを乗っ取って、「民主党員やハリウッドのエリートたちが率いる世界的な児童人身売買の組織が存在する」と訴えるQAnonの勢力は、Facebook上でグループを作って勢力を拡大しているとのこと。


Argentino氏がFacebook上で調査を行ったところ、善良な考えから児童人身売買への懸念を表明していると見せかけつつ、実際にはQAnonの陰謀論が支配するグループが少なくとも114個、Facebook上に存在しているそうです。また、2020年7月以降だけでこれらのグループの参加者が30倍も増加しており、グループ内での活動も急速に活発化しているとArgentino氏は指摘しています。

「セーブ・ザ・チルドレン運動は、TwitterとFacebookがQAnonに対策を起こした後、QAnonのコミュニティを本当に活性化させました。これはQAnonに全く新しい人口をもたらしました」とArgentino氏は述べており、これまではQAnonの陰謀論が広まらなかった人々にまで、セーブ・ザ・チルドレン運動に乗じてQAnonの勢力が拡大していると主張しました。


元々、QAnonが主張する陰謀論の中には「クリントン氏が赤ちゃんの肉を食べている」といった、明らかに疑わしく嫌悪感を引き起こすものも多く、こうした発言を忌避する人はQAnonのコミュニティに近寄りませんでした。しかし、セーブ・ザ・チルドレン運動を唱えることで、グロテスクな話を嫌う人や子育てをする親たちをQAnonのコミュニティに引き込むことに成功しているとのこと。

子どもの搾取を止めようという訴えは超党派的な共感を呼び起こすものであり、QAnonは児童を守るという考えを隠れ蓑にしつつ、さまざまなSNSで児童の人身売買に関する誤った情報を広めています。これによってQAnonは幅広い世代に影響力を持っているそうで、Argentino氏は「これはQAnonフォロワーの平均年齢を下げています」「2019年の段階では、QAnonは主に中高年世代の運動でしたが、今では20代~30代が参加しています」とコメントしました。

プラットフォーム側としてはQAnonの活動を取り締まりたいものの、「#SaveTheChildren」のハッシュタグを使った活動を取り締まることには困難が伴います。「#SaveTheChildren」のハッシュタグを使う人の中には、QAnonと関係なく心の底から児童の人身売買に問題意識を持っている人も多いため、「このグループやユーザーはQAnon関係者だ」と判断することは難しいとのこと。この曖昧さにより、QAnonはSNS上での取り締まりを回避しているとニューヨーク・タイムズは述べています。


もちろん、現実の児童人身売買に反対する声を挙げることは何の問題もありませんが、QAnonがセーブ・ザ・チルドレン運動に参入したことは大きな問題を引き起こしました。QAnonが主張する「著名人が児童の人身売買に関わっている」「児童の性的搾取を行う地下組織がある」といった主張は、あくまでも荒唐無稽な陰謀論に過ぎません。既に児童の権利問題を扱ういくつかの団体には、QAnon信者やQAnonの陰謀論にだまされた人々からの電話が殺到し、現実に対処すべき問題に割り当てるリソースが削がれているとのこと。

Argentino氏によると、QAnonが関連するFacebook上のセーブ・ザ・チルドレン運動関連のグループの成長は、ここ最近は鈍化しているそうです。しかし、セーブ・ザ・チルドレン運動が落ち着けば、QAnonはコミュニティを夢中にさせる新鮮な物語を求め、別の話題に参入する可能性があるとArgentino氏は主張しました。

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in メモ,   ネットサービス, Posted by log1h_ik

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