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売却額3兆円といわれる「TikTok」が他のSNSと一線を画するその「仕組み」とは?


ショートムービー共有SNSのTikTokは主に若者の間で爆発的な人気を誇っており、世界中で数億人ものユーザーがTikTokを利用しています。TikTokがユーザーを引きつける上で重要な「ユーザーにオススメする動画を選ぶアルゴリズム」について、TikTokの幹部が語った内容が報じられています。

TikTok reveals details of how its coveted algorithm works - Axios
https://www.axios.com/inside-tiktoks-killer-algorithm-52454fb2-6bab-405d-a407-31954ac1cf16.html

TikTok Reveals More Insights into How its Algorithm Recommends Content | Social Media Today
https://www.socialmediatoday.com/news/tiktok-reveals-more-insights-into-how-its-algorithm-recommends-content/585034/

2020年8月、アメリカのトランプ大統領がTikTokに対し「2020年9月15日までに事業をアメリカ企業に売却しなければ国内での使用を禁止する」と通告したことから、Microsoftなどの企業がTikTokの買収交渉を行っています。その売却価格は3兆円に達するとも指摘されており、TikTokが多くのユーザーを引きつける魅力的なプラットフォームであることがうかがえます。

買収交渉の行方が注視されている中、9月9日にTikTok幹部らが記者団と電話会見を行いました。TikTokのMichael Beckermanアメリカ担当公共政策副社長は、「私たちはプラットフォームにおけるコンテンツの監視やアルゴリズムについて、多くの懐疑論がある時代の中で成長しました」と述べ、透明性確保の一環としてTikTokが用いているアルゴリズムについて説明を行いました。


他の多くのSNSプラットフォームと同様に、TikTokは機械学習アルゴリズムを用いてユーザーの好みを分析し、そのユーザーが好むと考えられる動画をオススメしています。このオススメ機能の精度が高い点が、TikTokが多くのユーザーを引きつける理由の一端といえます。

ユーザーが初めてTikTokを開くと、さまざまなトレンド、音楽、トピックを取り上げた8つの人気がある動画が表示されます。ユーザーがこの中から好きな動画を選んで視聴した後は、ユーザーがどの動画を最後まで見たのか、そしてコメントやいいね、フォロー、共有といった行動に基づき、アルゴリズムが新たにオススメの動画をユーザーに提供し続けます。これを繰り返すことでTikTokのアルゴリズムは精度を高めていき、よりユーザーの好みに合った動画を提供できるようになるとのこと。

アルゴリズムが分析する動画の情報はキャプションやハッシュタグ、音楽などの要素であり、この情報に基づいて「ユーザーを引きつけた動画と類似した動画」を識別します。また、ユーザーの言語設定や国、デバイスの種類といったアカウント設定の情報もアルゴリズムは考慮しています。


TikTokが十分な情報を収集すると、アルゴリズムはユーザーの特徴をマッピングして、類似するユーザーと共通する特定の「クラスター」に分類してグループ化していくそうです。同時に、ユーザーが投稿した動画についても、「バスケットボール」「ウサギ」といったテーマに基づいてグループ化されています。

アルゴリズムは「そのユーザーと類似する他のユーザーが好むテーマの動画」に基づき、ユーザーに動画をオススメしていくとのこと。つまり、TikTokは「特定の動画投稿者」をフォローするように働きかけるというよりも、特定のテーマに基づいて動画をオススメしています。これにより、特定の人気投稿者だけが注目を浴びるのではなく、多くの投稿者にオススメされるチャンスがあるといえます。

また、TikTokのアルゴリズムにおいて興味深い点だと指摘されているのが、「同じ音楽や同じ投稿者の動画を連続してオススメするなど、ユーザーを退屈させる可能性がある冗長性を回避する」というロジックです。ほとんどのSNSはユーザーの好みに合致するものをどんどんオススメする方式を採用していますが、TikTokではユーザーの好みを考慮しつつも、ある程度の新鮮さを得られる仕組みを構築しているとのこと。


TikTokのアルゴリズムはユーザーの好みを把握し、プラットフォームに釘付けにする上で非常に効果的です。しかし、一方でアルゴリズムがフィルターバブルを形成し、ユーザーが多様なコンテンツを見て視野を広げたり反対の視点を獲得したりすることを妨げているとの指摘もあります。

アルゴリズムがユーザーの好みを強化してフィルターバブルを作っている点はTikTokも認めており、必要に応じてフィルターバブルを壊す方法についても模索しているとのこと。また、フィルターバブルが陰謀論やデマ、その他の誤った情報拡散に役立つ可能性があるため、TikTokの製品およびポリシーチームは誤情報と紐付けられるアカウントや動画を調査しています。有害になり得るアカウントや動画が見つかった場合は、グローバルコンテンツレビュアーに送信され、ユーザーへのオススメに表示される前にTikTok側が管理できるようにしているそうです。

Beckerman氏によると、TikTokの透明性に対する取り組みは、同社をシリコンバレーのリーダーに位置づけることを目的としているとのこと。「私たちはリーダーシップを持って、どのようにTikTokアプリが機能するのかをもっと見せたいと思っています」とBeckerman氏は述べ、今後は製品について議員たちとも話し合っていきたいと主張しました。

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in モバイル,   ソフトウェア,   ネットサービス, Posted by log1h_ik

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