大規模な山火事「メガファイア」の消防活動はそもそもが間違っているという指摘
by Daria Devyatkina
近年、アメリカ・カリフォルニア州では大規模火災「メガファイア」がたびたび発生し、住民の多くが避難する事態となっています。火災が発生すると消防機関が出動し消火活動にあたることになりますが、そもそも防火活動としてこのようなアプローチが間違っているという指摘が行われています。
They Know How to Prevent Megafires. Why Won’t Anybody Listen? — ProPublica
https://www.propublica.org/article/they-know-how-to-prevent-megafires-why-wont-anybody-listen
アメリカ・カリフォルニア州は毎年大規模な山火事に見舞われており、多くの住民に被害が及んでいます。
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1980年代から消防士として活躍するティモシー・インガルズビーさんは、より深く山火事を理解するために環境社会学の博士号を1995年に取得し、オレゴン大学の教員研究員としても働いていますが、「山火事の管理方法」と「実際の最前線」のギャップにいらだちを感じているそうです。2005年にインガルズビーさんはFirefighters United for Safety, Ethics, and Ecology(安全・倫理・生態学のための消防士団/FUSEE)を設立してからというもの、「間違った火事のポリシーがメガファイアを引き起こしている」と主張しロビー活動や教育活動を行ってきましたが、なかなか声は届かなかったとのこと。
今日、カリフォルニア州で発生しているメガファイアを目の当たりにしてインガルズビーさんは「この状況を目にするのは最悪です。科学的にはずっと明白でした。私はカサンドラ症候群の状態にあります」「私は毎年『災害がやってくる。私たちは変わらなければいけない』と言ってきましたが、誰も聞かず、何も起こりませんでした」と語っています。カサンドラ症候群はアスペルガー症候群の配偶者やパートナーを持つ人が、コミュニケーションに失敗し、相手に分かってもらえないことから自信を失い、身体的・精神的症状を示すことをいいます。
インガルズビーさんが説く、山火事への対抗手段は「地面を燃やし、燃料となるものを排除する」という方法。「火で火を制する」という方法は、直感的には危険そうに聞こえますが、昔から山火事を防ぐ方法として取られてきました。
カリフォルニア州は気温が高く乾燥しており、もともと山火事が起きやすい環境であるため、学説によると、有史以前には毎年440万~1180万エーカー(約1万7000~4万8000平方km)の土地が焼かれていたとのこと。また1982年から1998年の間には平均3万エーカー(約121平方km)の土地が焼かれていましたが、1999年から2017年の間には1万3000エーカー(約52平方km)にまで縮小。2018年には意図的な野焼きを増やすよう法律が改定されましたが、これによって状況が大きく変化するとはみられていないそうです。
では、野焼きが避けられるのはなぜかというと、これは文化・欲・責任・善意などが合わさり、ゆがんだことが原因とのこと。
文化的背景としては、1905年に設立されたアメリカ合衆国森林局が軍事的な考え方を持っていたことが挙げられています。哲学者のウィリアム・ジェームズ氏は「アメリカ人は格闘の衝動を人間から『自然』に向けるべきです」と述べており、このような「炎と戦う」というメンタリティはカリフォルニア州で多く見られるとのこと。カリフォルニア州は火の扱いを熟知し野焼きを行っていた先住民族を排除し、ゴールドラッシュによって街を繁栄させました。ゴールドラッシュから半世紀後には、1906年のサンフランシスコ地震とそれに伴う大火災で3000人が亡くなり、22万人が家を失いましたが、死者のほとんどが火災を原因としています。
また、カリフォルニア州の火災鎮圧は、ビジネスとして大きな成長を遂げている点についても指摘されています。カリフォルニア州森林保護防火局(Cal Fire)は1999年より前は年間100万ドル(約1億円)以上の費用を費やしていませんでしたが、2007~2008年には年間コストが524万ドル(約5億5300万円)となり、2017年~2018年には773万ドル(約8億1700万円)に。
これらの多くは難燃剤を空から投下する飛行機やヘリコプターの使用によるものですが、問題は、消火活動を行う人員や装置は、多くが民間企業に委託されているということ。Cal Fireの消防士に対する支払いもよく、「5年~15年ごとに、残業代をかせぎたい消防士が、自ら火事を起こすという出来事が起こります」とカリフォルニア大学の消防科学准教授であるクリスタル・コールデン氏は述べています。
メガファイアの問題を解決するための動き全くないわけではありません。2020年8月12日にはアメリカ合衆国森林局の代表らが「カリフォルニア州は野焼きを増やすべき」とする了解覚書(MOU)に署名しました。ただし、MOUに法的拘束力はないため、インガルズビーさんはMOUをほとんど意味のないものと見なしています。非営利団体であるウォーターシェッドセンターのニック・グレット氏は、Cal Fireが既存のシステムから脱し、年間予算内に何ができるかを再考する必要があると指摘しています。
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