「火災はミステリアスな現象」火事の謎を探る研究所「Fire Lab」に潜入したムービー
アメリカでは毎年、大規模な山火事が起こっており、その被害額は総額で何千億円にものぼります。山火事は人や財産に被害を与えるだけでなく、2017年12月におきたロサンゼルスの大規模な山火事によってシリコンバレーの歴史の一部である「HP創業者のアーカイブ」が焼失するなど、文化的な被害を与えることもあります。そんな山火事など火災のメカニズムを理解するための研究をしてる機関「Fire Lab(火事の研究所)」では、火事が起こす「不思議な現象」が日々研究されています。そんなThe Fire Labについてのムービー「The Fire Lab」が、海外メディアAtlanticの公式YouTubeチャンネルで公開されています。
The Fire Lab - YouTube
ここがモンタナ州のミズーラにある火災科学研究所、またの名をFire Labです。
ムービーの案内はFire LabのMark Finneyさんが行います。Finneyさんは、アメリカ合衆国ミズーリ州でおきた住宅街火災の時から山林学の調査部門に属しています。
Fire Labは、火事の仕組みを理解するために1960年に設立されました。
アメリカ連邦政府の統計によると、山火事により毎年約3350億円もの国家予算が使われ、約1万6000平方メートルが焼き払われています。
「そして、もっと火事について多くのことを理解する必要がある」とのこと。
ムービーでは研究所で行われている実験の一部が紹介されます。
ここは風を起こせる風洞実験のトンネルで、今回はここで火事の実験を行います。
「このトンネルには、レーザーで正確に同じ大きさに切りそろえられた厚紙が並べられています」
今回の実験では、厚紙と燃料がある床に火を付けることで「原野火災」を再現し、原野火災の広がり方、つまり「延焼」という現象を解明する実験を行うとのこと。
この実験風景を撮影するために至る所にカメラを設置してあります。
設置してるカメラのうち2台はスーパースロー映像を撮影できるハイスピードカメラです。このような実験はデジタルビデオカメラなど機器の進歩で解析が進みやすくなったとのこと。
「この実験は一発勝負です。何が起こるか見てみないとわかりません」
実験がスタート。ムービーではおごそかなピアノのBGMと共に、勢いよく厚紙の原野が燃え上がります。
その模様を観測するFire Labのスタッフたち。
火の燃え方をじっと見て観察します。
実験が終了。大量の厚紙でできた原野が大量の燃え殻になりました。
デジタルビデオカメラで撮った映像をPC画面で確認し、どんなふうに火が横に広って延焼が起こるのかを分析します。
映像では、厚紙を燃やしたことによる炎が2つの大きな火に分かれて、2つの山になっています。この実験で、上昇する炎が横方向への延焼の原因になっていることがわかりました。
2つの火がそれぞれ内回りと外回りの縦に回転する大きな渦になり、火を横から引き上げ、「お互いが大きな火になるサイクルをを生み出している」とのこと。
この実験により、「延焼」は1つの大きな炎が広がる現象ではなく、一定のパターンがある現象だということがわかりました。
また、石油貯槽の火災や木造建物の火災でおきる「液面燃焼」という燃え方と、直径100メートルほどの原野火災の燃え方は近いということがわかっています。
この研究結果はFire Labが行った長年の研究成果によるたまもので、これにより原野火災の延焼を解明する鍵になるとのこと。
この女性、Sara McAllisterさんは物理的な火災プロセスを研究しています。
この実験室でMcAllisterさんは、葉の茂っている部分「樹冠」が燃え、次に樹木全体が炎に包まれる「樹冠火」がどうやって起こるのかを調べています。
「私たちが本当に理解していないことの1つは、『生きている燃料』である植物たちがどうやって燃えているかです」
McAllisterさんによると、火事で燃えている葉や木々は生きているので、葉や針の中に糖や脂肪、タンパク質を作りだし、変換して保存しています。
葉や幹に含まれる水分が熱によって「爆発」し、破裂によってあらわになった可燃性の糖分やでんぷんなどに着火することで火災が起こっている可能性があるとのこと。
「しかし、私たちは、これらはただの推測であることを前提に置いたほうが良いでしょう」
この男性はJack Cohenさん物理学の専門家です。
Cohenさんによると、実験室規模でどのように火災が起こるのかを知らなければ、大自然の規模で働く火事に対する信頼性の高い仮説は得られません。そうなると社会は、いつも火災の起こりそうな山林や「やぶ」におびえ続けることになってしまいます。
「火の広がり方を解明するというのは学問的な意味をはるかに超えています」
「山火事を制度や社会の一部のように天然災害として私たちが対処し始めることができるということです。人災として捉える必要はありません」
Finneyさんが最後に火事について語ります。「火事は避けられないものです。実際には私たちのコントロールを超えた極端な状況が起きます」
「火災のメカニズムには非常に多くの矛盾する点があります。それ故に、火災はミステリアスな現象なのです」
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