「暗黒物質(ダークマター)」の研究を行う謎の研究所「SNOLAB」に潜入
宇宙を構成する物質の約25%は、人間が認識できていない謎の物質「暗黒物質(ダークマター)」であるといわれています。このダークマターなどについて研究を行っているカナダの研究所「SNOLAB」に海外ニュースメディア・Motherboardが取材に向かったということで、その様子が動画で公開されています。
SNOLAB: Inside the Dark Matter Lab Buried Over a Mile Underground - YouTube
地下の坑道のような場所
通路には「避難場所」と書かれています。
「SNOLABの内部」
SNOLABはカナダのオンタリオ州サドバリーに位置します。
研究所に取材に行くのはMotherboardのケイト・ルナウさん。まだ外が暗い午前6時から研究所に向かうとのこと。
今回取材に訪れるSNOLABは地中2kmの位置にあるニッケル採掘坑の側に建設された「世界一地中深くにある研究所」のひとつ。
この研究所では、宇宙を構成するいくつかの粒子についての研究が行われているそうです。
SNOLABに到着。
研究所に向かうには、炭鉱作業員が着用する作業着を着る必要があります。
そして、炭鉱作業員と同じエレベーターに乗り地下7000フィート(約2100メートル)へ降りていきます。
採掘坑ではニッケルと銅が採れるそうですが、エレベーターを降りてからさらに1、2km程歩いて研究所を目指します。
そうこうしている内に、ようやく研究所っぽい見た目の通路に到着。
研究所に入るには、坑道を通ってついた汚れを全てきれいに落とす必要があるので、靴は洗浄して……
撮影用の機材など研究所内に持ち込むものも消毒殺菌します。
さらに、作業着も清潔なものに着替えるという徹底ぶり。
続いて、なぜかリフトで持ち上げられる男性が写ります。
男性が中に入っていたのは、超純水を用いてニュートリノの検出を行うための検出器でした。
検出器の写真が写し出されます。
この実験について解説してくれるのはSNOLABの研究員であるエリカ・ケイデンさん。
ニュートリノというのは、太陽で起きる核反応により生じる素粒子です。
ニュートリノは絶えず地球を通過しているにもかかわらず、観測が困難なことで知られています。
ルナウさんが「なぜニュートリノについて調査するのですか?」と質問したところ、「ニュートリノは『ニュートリノが発生する原因となった反応』に関する情報をたくさん含んでいるため、これを調べることで多くのことが明らかになります。我々は何十年間もニュートリノに関する研究を続けていますが、ニュートリノはまだまだ多くの謎を秘めています」とケイデンさん。
2015年に「ニュートリノが質量を持つことを示すニュートリノ振動の発見」で、東京大学宇宙線研究所の梶田隆章教授とカナダ・クイーンズ大学のマクドナルド名誉教授はノーベル物理学賞を受賞しましたが、このSNOLABも同研究に関わっていたとのこと。ケイデンさんの研究チームは調査範囲を広げており、地球の内部から発生した「地球ニュートリノ」に関する調査も行っているそうです。
続いてダークマターに関する研究を行っているエリアへ。
このデバイスはまだ誰も発見したことのないダークマターを検出するための装置。
SNOLABのダークマターに関する研究について解説してくれるのはケン・クラークさん。
ダークマターは確かに存在するものの、まだ人類が認識できていない物質を指す言葉です。宇宙を構成する物質の27%がこのダークマターであると考えられています。
科学者たちは何十年もかけてダークマターについて研究してきましたが、SNOLABでは今年の後半にもダークマターが検出できることを望んでいるとのこと。ただし、見つからない場合は新しい検出方法を考案する必要があるとのこと。
SNOLABでは常時150人が働いているそうですが、ここにはたくさんのルールが存在します。例えば携帯電話の持ち込みは不可能で、Wi-Fiも飛んでいないため、SNOLABで働く研究者たちは実生活から隔離されたような錯覚に陥ることもあります。また、間違えてドアを開けて研究や実験の邪魔をしないように注意する必要もある、とルナウさん。
研究所内で働くのは科学者だけではありません。研究所内を清掃する人々もおり、ブレンダ・ラウリンさんもそんな清掃員のひとり。
実験に使用するのか実験で使用する装置に使用するのかはわかりませんが、ナットのひとつひとつまで細かく清掃。
タンクも洗浄液を使って入念に洗います。
「これは1番クールなものだよ」とルナウさんがつぶやいた先には……
研究所を上から見下ろせるスペースが広がっていました。
続いてやってきたエリアではシャーレが写し出され……
シャーレが入った冷蔵庫には「バイオセーフティーレベル1」という、細菌・ウイルスなどの微生物・病原体等を取り扱う実験室や施設に張り出されるバイオセーフティーレベルが張り出されていました。
ここで働くクリス・トーミさんは、宇宙線や地球上に存在する放射性物質などを指す「バックグラウンド放射線」による影響や、これらを除去する方法について調査しているとのこと。
実験では白色魚卵を被ばくさせ、成長率を調査。クリスさんによると、被ばくした方が優れた成長を見せるものもあったとのこと。人間はそもそもバックグラウンド放射線にさらされた状態で生きているわけなので、もしも人類が地下に住まざるを得なくなり、バックグラウンド放射線にさらされなくなった場合、生物にとって有害な影響が出る恐れもあるとクリスさんは語っています。
続いて研究者のトーマス・メリットさんが登場し、5億ドル(約560億円)もの研究設備に囲まれて仕事をこなすことは「とても消耗すること」とコメント。
ここではショウジョウバエを用いた実験が行われていました。
なお、SNOLABはカナダ政府から数百万ドルの資金援助を受け、今後も宇宙の謎を解き明かすための研究に従事していきます。
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