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燃えやすい枯れ木などをあらかじめ焼いておく「野焼き」は山火事を防いでくれるのか?


数カ月も山火事が続いたオーストラリアは、その火災が収束した後に「火災に関する対策」に関する議論が盛んになっています。このような状況の中、野山に存在する枯れ木などをあらかじめ焼き払う野焼きについて、「山火事予防に効果がある」「効果がない」という相反する2つの研究結果が存在するとメルボルン大学火災生態学を教えるケビン・トルハースト教授が論じています。

The burn legacy: why the science on hazard reduction is contested
https://theconversation.com/the-burn-legacy-why-the-science-on-hazard-reduction-is-contested-132083

気候変動の情報をオーストラリアの国民に提供する非営利団体「Climate Council」は2020年1月に、「防止策を最大限講じたとしても、大規模火災から人間の命や資産、野生動物を守ることは不可能」と発表し、山火事の原因である気候変動こそが問題だと訴えました。


Climate Counsilの主張の根拠について、トルハースト教授は、そもそも山火事対策の1つである野焼きは「効果がある」「効果がない」という対立する2つの学説が存在することを指摘。Climate Counsilは「効果がない」という学説のみを取り上げたと批判しました。

Climate Counsilが論拠としているのは、オーストラリアのウーロンゴン大学とメルボルン大学の合同研究チームが2015年に発表した研究。この研究は、約34年分のオーストラリア南東部における火災や気象データを元に、山火事で焼かれた区域と野焼きで焼かれた区域を比較して、「実際に野焼きがどれくらい山火事を縮小させたのか」という結果を算出したもので、「干ばつが1年続いた森林地域でしか、野焼きの火災抑制効果は発揮されない」と結論付けています。


この研究に関して、トルハースト教授は「いくつかの仮定を前提とした論文で、土地管理に関する論拠として適切とはいえない」とコメント。問題の論文が「火災が起こった面積」のみに言及しており、消火において重要な要素である「火勢」などは無視しているとトルハースト教授は指摘しました。

また、トルハースト教授は1984年から2003年のビクトリア王立協会の調査を元にしたトルハースト教授自身の(PDFファイル)研究から、火勢が弱い山火事では、はるかに迅速に植物や動物、そして地中の栄養素が回復すると主張。ウーロンゴン大学とメルボルン大学の研究は意義のある研究だが、少なくともClimate Counsilの主張の論拠としては適切ではないと一蹴しました。


また、トルハースト教授は「野焼きは山火事に効果がある」という研究についても言及しています。その研究は、オーストラリアの森林火災共同研究センターが2009年に発表したもので、オーストラリア南西部の森林における約52年間の火災記録の分析です。この研究は、森林の4%以上を野焼きしないと効果が少ないとしているものの、「野焼きは火災の発生率を引き下げる効果がある」と結論付けています。

2015年の研究結果と2009年の研究結果が食い違ったことについて、トルハースト教授は2015年の研究が火勢を考慮に入れなかったことと、2015年の研究の対象となった野焼きは森林の2%しか燃やしていなかったと指摘。Climate Councilはより広い視野を持って科学研究に目を向けるべきだと述べました。

トルハースト教授は、山火事の面積のみを論じた研究を根拠としたClimate Councilを反面教師として、生態系の回復の向上、山火事の発生数と範囲の減少率、人体への影響、経済的損失、社会的影響などの幅広い要素を全て考えた上で結論を下すべきだと主張しています。

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in メモ, Posted by darkhorse_log

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