サイエンス

夏時間は健康に有害だとして「夏時間の廃止の要求」をアメリカ睡眠医学会が声明で発表


欧米では、夏を中心とする時期に太陽が出ている時間帯を有効利用する目的で夏時間が導入されています。昼間の明るい内に仕事をして夜の余暇時間を多く持てるようになる夏時間ですが、近年では健康への悪影響が懸念されており、EUでは廃止の検討が進んでいます。アメリカでも新たに、アメリカ睡眠医学会が夏時間の廃止を求める声明を発表しました。

Daylight saving time: an American Academy of Sleep Medicine position statement | Journal of Clinical Sleep Medicine
https://jcsm.aasm.org/doi/10.5664/jcsm.8780

American Academy of Sleep Medicine: Eliminate daylight saving time
https://aasm.org/american-academy-of-sleep-medicine-calls-for-elimination-of-daylight-saving-time/

アメリカの夏時間は毎年3月の第2日曜日午前2時に始まり、11月の第1日曜日午前2時に終了します。開始日には午前1時59分の次に、時計の針を1時間進めて午前3時にし、終了日の午前1時59分の次を、時計を1時間戻して午前1時とします。


基本的には日照時間を有効利用するという目的で導入されている夏時間ですが、アメリカやEUは範囲が広いため、この目的が全く意味をなさない地域もあります。フィンランドでは、夏時間の導入によって睡眠障害が発生し、職場でのパフォーマンスが低下し、健康上の問題につながるという研究結果が発表されています

このような研究報告を受けて、EUでは夏時間を廃止する動きが起こっています。そして、2020年8月27日にアメリカ睡眠医学会も夏時間の廃止を要求する声明を発表しました。

声明の筆頭著者でありメイヨークリニックの睡眠の専門家であるAdeel Rishi氏は「恒久的に、1年を通して標準時を維持することは、私たちの概日の睡眠・起床サイクルに一致する最善の選択です。夏時間は朝の暗い時間に起床し、夜の明るい時間に就寝することになることで、体が持つ自然のリズムを阻害します」と述べました。


声明の中では、夏時間が脳卒中や入院リスクを増加させ、病院への来院者を増加させたり、ストレスに対する体の反応を測る炎症マーカーの製造を増加させていると指摘されています。また、これまでの研究から、夏時間に切り替わった直後の数日間は交通事故の死者が6%増えることや、ヒューマンエラーに関連する医療事故が18%増加することについても言及されました

アメリカ睡眠医学会の代表であるKannan Ramar氏も「恒久的に標準時を受け入れることは公衆衛生にとって有益さと安全性をもたらします。アメリカ睡眠医学会は連邦レベルで法律の変更を求めます」とコメント。

なお、アメリカ睡眠医学会が2020年7月に行った調査では、夏時間の廃止に対して63%が賛成の意思を示し、反対した人は11%だったとのこと。また2019年の調査では、アメリカの成人の55%が夏時間の変更による生活リズムの変化に対して「疲れを感じている」と答えたそうです。

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in サイエンス, Posted by darkhorse_log

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