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AppleとFacebookは敵対関係に見えつつ実は利害が一致している


Appleは2020年秋にリリース予定のiOS 14で、広告識別子のIDFAを実質的に役に立たないものに変える仕様変更を行います。これはターゲティング広告で収益を上げるFacebookや広告主にとって大きな痛手となるとみられています。このようにAppleとFacebookは戦略アプローチが大きく異なり、敵対関係にあるともとられがちですが、実はこれまでのところ利害が一致してきたのだとアナリストのベン・トンプソン氏が指摘しています。

Apple and Facebook – Stratechery by Ben Thompson
https://stratechery.com/2020/apple-and-facebook/

Apple・Google・Microsoft・Amazon・Facebookといったテクノロジー企業はそれぞれ競合優位制や強みを持ちます。GoogleやAmazonの場合はわかりやすく「インフラ」と「データ」が強みとなっていますが、AppleはiPhoneが成功した後、何年にもわたってビジネスの持続可能性という問題に直面してきました。しかし、いまやAppleは「優れたチップ」と「ユーザーエクスペリエンス」という点で競合優位制を獲得しているとトンプソン氏は述べています。


一方でFacebookは広告によって収入を上げています。Appleが製品を販売し、ユーザーエクスペリエンスを向上させるためにデータ収集を最小限にとどめるのに対し、Facebookはデータ収集を最大化させるという点で、両者は正反対の方向を向いているように見えます。しかし、両者は敵対するかのように見えて、非常に複雑な形で利害が一致してきたとのこと。

まず、iPhone登場当時、FacebookはもともとiOS向けアプリを開発しない方向で進んでおり、代わりに「全てのプラットフォームで動くウェブアプリ」の開発が行われていました。しかし、iPhoneの爆発的人気によってモバイルアプリ需要が増加したため、慌ててFacebookはモバイルアプリ開発に着手することに。このためモバイルアプリとしてのFacebookは出遅れており、実際にアプリが公開された後もコードの書き直しが行われるという状態でした。

しかし、iOS向けモバイルアプリの開発という転換期を迎えたことで、Facebookはアプリインストール広告という新たなビジネスチャンスをつかむことになりました。アプリインストール広告は従来のモバイル広告より8〜10倍も多くリーチを達成するということで、特にモバイルゲーム業界にとって重要なチャネルになったとのこと。


そして、モバイルゲーム業界から話題となったFacebook広告を使って、その後、消費者向けeコマース企業を中心に多くの企業がビジネスを成功させていきます。Facebookの行うターゲティングは非常に効果が強力であり、特に広告から直接購買につながるレスポンスを得るダイレクトレスポンス広告により、インターネット固有の新しいビジネスが生まれました。

一方でAppleは当初App Storeで収益を上げられず苦しんでいましたが、Facebookのアプリインストール広告が成功したことを受けて開発者の期待値が増加。多くのアプリがApp Storeからリリースされるようになることで、収益が急増したとのことです。

Facebookを中心として利益を得る企業が増加することにより、Facebookは同じく広告によって収益を上げるGoogleさえ持たない「抗脆弱性」を得たとトンプソン氏は述べています。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行により多くの経済活動がストップし、各企業の広告予算も減少しました。しかし、このような事態にも関わらず、Facebookの利益はプラットフォームの使用増加により上昇しています。


これはFacebookが自動化された広告システムを採用しているため。Facebookの広告は需要と供給で価格が決定し、一部の企業が広告を出さなくなると、広告の出稿費が下がります。「Facebookなしではビジネスが成立しない企業」はこのような事態をチャンスとみて、大規模なコングロマリットから顧客を盗もうと多くの広告を出稿するため、Facebookの広告システムは決してコンテンツ不足に陥ることがありません。このため、これまでFacebook広告を出していた大企業が広告を出さなくなっても、Facebookの収益は落ちないというわけです。2020年6月時点で多くの大手企業がFacebook広告をボイコットしていますが、財務的な観点からみればFacebookにとってボイコットは大きな問題とはならないとのこと。

一方、Facebookの脆弱性となっているのが、Appleです。

Facebookのターゲティング広告はiPhoneでいうIDFA(広告識別子)を中心に設計されています。しかし、Appleは2020年秋に公開予定のiOS 14で、ユーザーがアプリやウェブサイトにIDFAの追跡を許可するかということをオプトイン形式にすると発表。つまり、Facebookがこれまで自動化して行っていたターゲティング広告が、大きな変更を余儀なくされます。アプリインストール広告ビジネスを拡大しているAppleが、技術的にはIDFAを廃止せず「実質的に役に立たないもの」に変えるというのは、非常に巧妙であるとトンプソン氏は述べています。

Appleはユーザーエクスペリエンス向上のため、プライバシーの面からIDFAの変更以外にもSafariにおいてサードパーティCookieのブロックを実施しています。プライバシーに配慮しIFDAを無効化するAppleの決定はFacebookのビジネス課題となりますが、一方で、ウェブサイトにおけるCookieを取り締まるAppleの姿勢は、Facebookにとって役立つことをトンプソン氏は強調しています。

オンライショッピングサイトの多くはサードパーティの決済サービスを利用しており、Amazon打倒のカギとも呼ばれる「Shopify」も例外ではありません。このためサードパーティCookie排除によってShopifyはシームレスな決済が不可能になります。一方でFacebookは2020年5月にFacebookやInstagram上にオンラインショップを開設できるFacebook Shopsを発表しており、AppleのサードパーティCookie排除は、Facebookを直接消費者に販売を行う企業にとってより魅力的なものにしているとのこと。


上記の事例から明らかなように、FacebookとAppleはあらゆる面で反対方向を向いているように見えて、実は複雑な形で利害の一致が起こっているとトンプソン氏は指摘しました。全く異なるアプローチを取りながらも業界をけん引する2社の関係は、今後も続いていくとみられています。

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in メモ, Posted by logq_fa

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