ワーキングメモリが多いカップルは「ケンカしても破局しにくい」との研究結果
恋愛や結婚生活にはケンカがつきものですが、101組の新婚カップルが参加した実験により「ワーキングメモリ(作業領域)が多いカップルは問題を乗り越えやすい」ということが確かめられました。
Romantic partners’ working memory capacity facilitates relationship problem resolution through recollection of problem-relevant information. - PsycNET
https://psycnet.apa.org/record/2019-40707-001
How Research on Working Memory Can Improve Your Romantic Relationship - Scientific American
https://www.scientificamerican.com/article/how-research-on-working-memory-can-improve-your-romantic-relationship/
1992年の調査によると、90%以上のカップルが口論をした経験があると答えており、半数以上は月に1度以上の頻度で口げんかをしていました。こうした口論は、金銭感覚やセックスなどについての「意見の相違」が原因となっていたとのこと。
カップルが意見の相違といった共通の課題を乗り越えられるかどうかと、ワーキングメモリの関係を探るため、ノースカロライナ大学グリーンズボロー校の心理学者リーヴァイ・ベイカー氏らの研究グループは、カップル101組を対象とした実験を行いました。実験に参加したのは結婚から3カ月未満のカップルで、カップルの性的指向の内訳は異性愛者93組、レズビアン7組、ゲイ1組だったとのこと。なお、ワーキングメモリとは、認知的な課題に関する情報を一時的に格納しておくための脳の記憶領域のことです。
実験ではまず、カップルそれぞれのワーキングメモリを測定するテストが実施されました。次に、カップルは「お互いの行動を変えることで解決できる問題」について8分間議論し、議論の前後に「問題の深刻度」を評価しました。最後に、カップルは別室に別れて議論の内容について思い出すよう指示され、相手の発言内容について可能な限り詳細に回答しました。
研究グループが、問題についてカップルが議論した日から4カ月後と8カ月後に被験者らにメールを送り、「問題の深刻度」がどうなったかを回答してもらった結果、「ワーキングメモリが多いカップルほど問題の深刻度が低下していた」ことが判明しました。また、ワーキングメモリが多いカップルは、問題について議論した後にその内容を尋ねられた際、相手の発言をより正確に思い出すことができたことも分かっています。
ワーキングメモリ以外の要因を排除するため、実験では自制心、苦痛に対する耐性、感情の制御力などに関するテストも実施されていますが、いずれも問題の深刻度の推移とは無関係でした。研究グループは、推論能力などテストが行われなかった認知能力の影響までは排除されていないことを認めつつも、「ワーキングメモリが多いことで、議論の内容がスムーズに長期記憶に移され、このことが問題の解決に寄与した可能性が高い」と結論付けています。
アメリカの科学雑誌Scientific Americanの記事の中で、ベイカー氏らの研究を取り上げたミシガン州立大学の心理学教授デビッド・ハンブリック氏は、「誰しも人の名前を聞いてから数秒後に忘れてしまったという経験があると思いますが、それはその人に関心がなかったため、ワーキングメモリの記憶を長期記憶に移すことができなかったのが原因です。同様に、パートナーの言葉に注意を払わないと、記憶に残らない可能性があります。なお悪いことに、相手が実際に言ったことを正確に覚えていないと、自分の都合のいいことばかり思い出してしまい、誤った記憶ができあがってしまいます」と指摘。
パートナーとの関係を長続きさせる方法については、「恋人と大切な話し合いをする時は、相手の言ったことによく耳を傾けることが大切です。また、話し合いをするなら両者が会話に集中できるように、リラックスしていて、飲酒しておらず、気が散らない環境が整っている時を選ぶべきです」とコメントしました。
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