セキュリティ

WeChatは中国国内の検閲システムを強化するために海外ユーザーを利用している

by John Pasden

中国のメッセージアプリ「WeChat」が、海外ユーザーから送信されたメッセージを利用して、中国国内のアカウントの検閲アルゴリズムを強化・構築していることが明らかになりました。

We Chat, They Watch: How International Users Unwittingly Build up WeChat’s Chinese Censorship Apparatus - The Citizen Lab
https://citizenlab.ca/2020/05/we-chat-they-watch/

WeChat's surveillance of international users boosts censorship in China, researchers say | CBC News
https://www.cbc.ca/news/technology/wechat-surveillance-users-outside-china-1.5558503


WeChatは単なるメッセージアプリにとどまらず、公共料金の支払いや配車・宅配サービス・オンラインコースの支払いを行えることから、中国では「日常のあらゆる行動に利用されるアプリ」となっています。

WeChatは中国国外でも利用可能で、世界中に10億人以上のユーザーがいます。中国国内の検閲で利用されていることがかねてから指摘されてきたWeChatですが、検閲が海外の電話番号で登録しているユーザーに影響しているかどうかは、これまで明らかではありませんでした。そこで、カナダ・トロント大学のグローバルセキュリティ研究所「Citizen Lab」は2019年11月から2020年1月までの3カ月にわたってテストを実施。海外ユーザーのアプリ利用が検閲とどう関係しているかを調査しました。


Citizen Labのディレクターであるロン・デイバート氏によると、WeChatは海外のユーザーから送られたコンテンツについても体系的な監視を行っており、それを中国国内の検閲アルゴリズムの構築に利用しているとのこと。具体的にいうと、海外で登録されたWeChatユーザーが送信した画像や文書も検閲を受け、「機密」と見なされればデジタル署名が加えられブラックリストに入れられるとのこと。その後、これらの画像や文書は中国国内で登録されているユーザーによる送信・受信ができなくなります。

実際に、Citizen Labのテストでは、海外ユーザーが送信した画像や文書が、中国国内で送信された時に検閲の引き金になったことが確認されています。


この調査結果はもちろんセキュリティ面からWeChatの再評価を求めるものとなりますが、デイバート氏は「道徳上の問題」についても強く呼びかけています。海外ユーザーがWeChatを利用することで、中国国内の抑圧を強化する無料の労働力を提供することになってしまうためです。

「WeChatは本質的に、中国国外で国際版アプリを利用しているユーザーについても政治的監視を行っています。このデータは検閲アルゴリムの訓練や、中国国民の監視に利用されます。非常に衝撃的な事実です」とデイバート氏は述べています。

Citizen Labの研究者たちは中国内外のユーザーに対するWeChatの利用規約とプライバシーポリシーを調査しましたが、海外ユーザーのデータの利用について根拠が不明だったため、1月からTencentのデータ国際保護事務所に情報の開示を要求していますが、記事作成時点で意味のある回答は得られていないと研究者は述べています。また調査結果についての疑問点をTencentに送信していますが、Tencentからは連絡がないとのこと。

なお、2020年3月にはWeChatが新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に関する検閲を行い、キーワードをブラックリストに入れていたことが報じられています

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in ソフトウェア,   セキュリティ, Posted by darkhorse_log

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