中国政府によるソーシャルメディア検閲の手は世界中に広がりつつある
by geralt
中国のテクノロジー企業Tencentが開発した無料のインスタントメッセンジャーアプリ「WeChat(微信)」では中国政府による検閲が行われていて、2019年香港民主化デモに関するものなど、政府に対する批判を含むコメントを投稿したユーザーはアカウントを停止されます。そんな中国政府による検閲の範囲が、中国に住む中国人のみならず、中国国外に住む中国系移民にも及んでいると報じられています。
WeChat keeps banning Chinese Americans for talking about Hong Kong - The Verge
https://www.theverge.com/2019/11/25/20976964/chinese-americans-censorship-wechat-hong-kong-elections-tiktok
権力監視機関であるCitizen Labの調査によると、WeChatでは中国ユーザーに対して厳しい検閲が行われている一方で、中国人以外については規制が緩和されているとのこと。しかし、中国で使ったことのある電話番号でアカウント登録を行った中国系アメリカ人はWeChatのシステムから中国人と判断され、検閲の対象となってしまいます。
中国政府は法律に基づいてユーザーデータにアクセスし、ソーシャルメディアに公開されたコンテンツを自由に検閲することができるため、WeChatに書き込んだ内容が検閲にひっかかるとすぐにアカウントが停止されてしまいます。フリーダム・ハウスの上級調査アナリストであるサラ・クック氏によれば政治的な話題だけではなく、宗教や経済に関する話題、公衆衛生に関する情報なども政府の検閲に引っかかってしまうとのこと。
by zhang kaiyv
テキサス州にあるM・D・アンダーソンがんセンターで情報セキュリティアナリストを務めるビン・ジー氏はWeChatで「親中の大統領候補者はすっかりいなくなった」と発言したところ、アカウントが停止されてしまいました。ジー氏はWeChatを利用できなくなってしまったため、WhatsAppを通じて他の中国系アメリカ人と情報交換を行っているそうです。「中国で検閲を行うのはかまいません。しかし、アメリカは関係ないでしょう?私たちは皆検閲されているのです」とジー氏は語りました。
また、WhatsAppでジー氏と同じグループに属している、ミネソタ州在住のWeChatユーザーは、表面的には中国政府を全面的に支持するようなコメントを投稿しているそうですが、実際は皮肉であり、よく読めば中国政府を支持していないことがわかるようになっているそうです。ただし、「中国本土に住んでいる家族の身の安全を考えて、政治的にデリケートなトピックについては話すことを避けています」とこのユーザーは述べています。
日間アクティブユーザーが10億人を超えるWeChatはインスタントメッセンジャーであるだけではなく、ソーシャルメディアプラットフォーム、ニュースアプリ、支払いプラットフォームでもあります。WeChatが無効になるということは、中国社会の中で日常生活を満足に送れないことを意味します。また、中国ではFacebookやTwitterがブロックされてしまっているため、中国本土に家族や友人がいる中国系アメリカ人にとって、WeChatは数少ない連絡手段です。
by Sinchen.Lin
IBMの従業員であり、WeChatを使っているというジョージ・シェン氏は、Tencentに「アメリカのユーザーに対する検閲をやめさせる」ための請願書をホワイトハウスへ提出するための署名を集めています。シェン氏は「Tencentはアメリカで事業を展開するにあたって、世論の検閲、反体制派の抑圧、アメリカ市民の言論の自由の侵害、アメリカの民主主義の妨害に体系的に取り組んでいます」と述べました。
ミネソタ州のWeChatユーザーは「私は自由と民主主義のためにアメリカにやってきました。しかし、ここ数年はアメリカ人であるにも関わらず監視されていると感じています。アメリカに住んでいるのに、以前のように自由に話すことができません」と述べ、連邦議会がこの問題に対して行動を起こしていないことに驚きを示しました。
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