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「TikTok禁止法」がモンタナ州で成立、2024年1月1日発効予定


アメリカでは中国発のショートムービーアプリ・TikTokを排斥する動きが強まっており、AppleやGoogleといったスマートフォン向けアプリストアを運営する企業に対して「TikTokを禁止するように」と規制当局が圧力をかけたり、「TikTok禁止法案」が議会に提出されたりしています。すでにアメリカの一部の州ではTikTokの利用が禁止されているのですが、モンタナ州ではアメリカ初となる「TikTok禁止法」が成立しました。

Montana says 1st-in-nation TikTok ban protects people. TikTok says it violates their rights | AP News
https://apnews.com/article/tiktok-ban-montana-325a33578a2bbfbe53e9c251d528c5fb


TikTok Ban Signed in Montana, Paving Way for First Amendment Legal Battle - WSJ
https://www.wsj.com/articles/tiktok-ban-in-montana-sets-off-first-amendment-legal-fight-5a06d701

Montana Governor Bans TikTok in the State - The New York Times
https://www.nytimes.com/2023/05/17/business/montana-tiktok-ban.html

現地時間の2023年5月17日(水)、共和党所属のモンタナ州知事であるグレッグ・ジアンドルテ氏が、TikTokの全面禁止を求めるアメリカ初の州法がモンタナ州議会を通過し成立したことを明かしました。このTikTok禁止法は2024年1月1日発効予定となっています。アメリカではTikTok禁止法案が議会に提出されるなどしているため、「TikTokのないアメリカ」を実現できるのかを試す実験場になるだろうとAP通信は報じています。一方で、セキュリティ専門家からは「TikTokの禁止を強制するのは難しい」という意見も上がっています。

2023年5月18日、ジアンドルテ知事が自身のTwitterを更新し「モンタナ州の人々とプライバシーデータを中国共産党から守るために、我々はモンタナでTikTokを禁止することを決めました」とツイート。

To protect Montanans’ personal and private data from the Chinese Communist Party, I have banned TikTok in Montana.

— Governor Greg Gianforte (@GovGianforte)


続けて、「TikTokは外敵と結びついたアプリのひとつにすぎません。本日、我々はモンタナ州の最高情報責任者に対して、個人情報やデータを州のネットワークから外国の敵対者に提供するアプリケーションを禁止するよう指示しました」とツイートし、モンタナ州で成立した新たなTikTok禁止法を発表しています。

TikTok is just one app tied to foreign adversaries. Today I directed the state’s Chief Information Officer to ban any application that provides personal information or data to foreign adversaries from the state network. pic.twitter.com/92Im6D9Jgx

— Governor Greg Gianforte (@GovGianforte)


TikTok禁止法の成立と同時に、ジアンドルテ知事はモンタナ州の国営設備および州事業において、外敵と関係のあるすべてのソーシャルメディアアプリケーションの使用を2023年6月1日から使用禁止とすることも発表しています。ジアンドルテ知事が使用を禁止したアプリのリストには、親会社を中国に持つWeChatや、ロシア発のTelegram Messengerなどの名前もあります。ジアンドルテ知事はTikTok禁止法を拡大し、外敵と連携するアプリケーション全体を禁止する法律の成立を目指していましたが、議会側がこれを承認しなかったため、TikTok禁止法と外敵と関係のあるアプリの禁止措置が別々で進められることとなっています。

モンタナ州のTikTok禁止法は、州内でのTikTokのダウンロードを禁止するもので、TikTokにアクセスしたりアプリをダウンロードしたりする「能力を提供」するごとに、アプリストアやTikTokなどの事業体に対して1日あたり1万ドル(約140万円)の罰金が科せられます。なお、ユーザー側への罰則はありません。


これに対して、TikTokの広報担当者であるブルック・オーバーウェッター氏は、「モンタナ州の内外でユーザーの権利を守るための取り組みを続ける中で、TikTokを利用して自己表現し、生計を立て、コミュニケティを見つけることができたというモンタナ州民を安心させたいです」と語り、TikTok禁止法はアメリカ合衆国憲法修正第1条の権利を侵害するものであると主張。ただし、オーバーウェッター氏はモンタナ州のTikTok禁止法に対して訴訟を起こすか否かに関する明言は避けています。

モンタナ州のアメリカ自由人権協会と、GoogleやTikTokを会員に抱える業界団体のNetChoiceも、モンタナ州のTikTok禁止法は違憲であると主張。モンタナ州のアメリカ自由人権協会で政策ディレクターを務めるキーガン・メドラノ氏は、「反中感情の名のもとに、TikTokを使って自己表現したり情報を収集したりしている何十万ものモンタナ州民の言論の自由を踏みにじっています」と、TikTok禁止法を批判しました。

アメリカでは中国発のショートムービーアプリであるTikTokが、中国政府によるアメリカ国民のスパイに利用されているのではと懸念されています。すでに2022年12月時点で13の州がTikTok禁止措置を講じており、2023年1月には新たにニュージャージー州およびオハイオ州がTikTokの使用を禁止する動きをみせていました。しかし、これらはいずれも州法でTikTokの使用を禁止するという、モンタナ州のような厳格な規制ではありませんでした。

TikTok使用禁止をニュージャージー州とオハイオ州が決定、さらにHuawei・ZTEなどの製品も禁止予定 - GIGAZINE


TikTok禁止法反対派は、VPNを利用すれば簡単にTikTok禁止法を回避してTikTokをダウンロードできると主張。一方、モンタナ州の規制当局はジオフェンシング技術を用いて一部の州でオンラインスポーツギャンブルアプリの使用が禁じられていることを挙げ、同じような対策がTikTokで取られる可能性を示唆しています。

なお、TikTokはモンタナ州の禁止法を阻止するためにインフルエンサーや中小企業を募集しており、このキャンペーンに参加している人以外にもTikTok禁止法に不満を抱いている人は少なくないとAP通信は報じています。

一方、TikTokに約17万人のフォロワーを抱えるコンテンツクリエイターのアダム・ポトキン氏は、約4万4000人のフォロワーしかいないInstagramの方が「稼げる」とし、「物事の動きに合わせて適応し、進化する必要があります」と述べ、TikTok禁止法が施行されればVPNを利用してまでTikTokを利用しようとは思わないと語りました。

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in モバイル,   ソフトウェア,   ネットサービス, Posted by logu_ii

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