インタビュー

「映像研には手を出すな!」湯浅政明監督インタビュー、「すごいアニメを作っている」作品をいかに作り上げたのか


好評のうちに全12話の放送を終えたアニメ「映像研には手を出すな!」を手がけた湯浅政明監督に、どういったスタンスで作品制作に挑んだのか、あのマンガをどのようにアニメに変換していったのか、オオルタイチさんの音楽とはどう合わせていったのかなど、放送が終わったからこそまとめて出せるような話をいろいろと伺ってきました。

TVアニメ『映像研には手を出すな!』公式サイト
http://eizouken-anime.com/

なお、インタビューは3月に実施したもので、湯浅監督には撮影のタイミングでマスクを外してもらっています。


Q:
湯浅監督は原作をもともとご存じであるという話がありました。

湯浅政明監督(以下、湯浅):
はい。エゴサで……

Q:
エゴサ(笑)

湯浅:
「湯浅がアニメ化するといいんじゃないか」みたいな話を見たので、原作を買って読んでみたら面白かった。それで「サイエンスSARUでアニメ化できないかな」と。でも「すでに映像化権はどこかが取った」というようなウワサを聞いたので、「他で作っているんだな」と思っていたら、NHKエンタープライズの坂田淳さんから話が来たので「ああよかった、やれるんだ」という感じでした。

Q:
「面白かった」とのことですが、原作を読んで、どこを魅力に感じられましたか?すごく表現も個性的な作品ですけれど。

湯浅:
「頭でイメージしたことを具現化する」というのは自分も仕事をしていてすごく感じているところで、そこが面白い部分でしたし、そのことが実際にマンガとしてウケている、エンターテインメントとして多くの人に受けるんだというのが面白いと思いました。もっとマニアックな内容なのかと思っていたので。


Q:
アニメの制作現場をよくご存じの立場から、作品の中で少女たちがアニメを制作している様子をどんな風にご覧になられましたか?

湯浅:
考えたことができちゃう才能のある人たちの集まりで、あまり苦労を描かないところがいいところなのかなという風に思いました。自分たちがやると、どうしても苦労を描きたがるので。

(一同、笑)

湯浅:
あまり苦労は描かずに、でも、自分たちが知ってることはさらに入れていきたいな、と。業界やアニメの制作をやっている人の「あるある」的なことは入れていきたいなと思いながら作っていました。

Q:
実際、作品作りに取りかかられるときに、大童澄瞳先生とはお話をしたんですか?

湯浅:
作品については、特に何かこうしてくれということはありませんでした。作っていく中で「ウサギの人形だけはどうしてもこうしてくれ」と言われて、「そこはすごくこだわるんだな」と思いました。大童さんが持っている絵のもとにしている人形も見て、忠実にやったつもりだったんですけれど「もっとこう」ということでした。


Q:
原作の魅力を映像化するにあたっては、何らかの映像として足し算、引き算があったと思います。湯浅さんの中で、映像の大きな方向性として「この辺がポイントだな」「このあたりを膨らませたいな、前面に押し出したいな」というところはありましたか?

湯浅:
原作は細かなところがたくさんあり、熱狂的な人はそこも読み込んで面白いと言っているんだなという部分を、アニメではもっとわかりやすく示せればいいかなと思っていました。お話をいただいた時点ではまだ2巻までしか出ていなくて、3巻が出たところで、1人1巻ずつ主人公になるような感じだったので、アニメが3巻分の内容で終わるなら、最後に盛り上がりを作って配置していけばいいのかなと考えました。それと、アニメーションにするとやっぱり気になるところが出てくるので、マンガでは行間があるのですっ飛ばしているところとか、3人で本当に作れるのかとか、3人が作った作品の内容がどうなっているのかとかについて、あまり当たり障りないように補完しながらやる方向で考えていました。

Q:
大童さんとは、ウサギ以外でそのあたりの提案に関してはあまり交渉してはいないんですか?

湯浅:
本当はいろいろな意見があったと思いますけれど、こちらから聞かれない限りは言わないというスタンスでおられた感じです。分からないことは質問すると、すごく答えてくれました。結構参考になったのが、水力発電所の「く号兵器」とも関係する、映像研の部室にある2つのアレはなんであるんですか?とか。

Q:
換気扇ですか?

湯浅:
聞いたら「そこから掃射して、何かを燃やしたってことを考えていた(※)」って言われて、「でもそれは描くかどうかまだ分からない」と。これは、何か意味ありげなところでアニメとして結果を出した方がいいなと思ってやりました。

(※編注:水力発電所のあった場所で「く号兵器」の照射実験が行われており、その標的が映像研が部室を構えることになった倉庫内に設置されていて、2つの有圧換気扇は標的が燃えたあとの排熱・換気用に設置されていた、という話であると補足説明をいただきました)

GIGAZINE(以下、G):
オープニング映像について、第1話放送時点から大きく盛り上がりました。最終回放送に合わせて、サイエンスSARUさんの公式Twitterで「オープニングアニメーション制作メモ」というのが公開されて、監督が持ってきたコンテをもとにアニメーターがそれぞれ細かい動きをつけた、ということなんですが、監督の頭の中では、あの踊りはどこまで固まっていたんですか?


湯浅:
ぼんやりとしか決まっていなくて「最初一人ずつのところこはとにかく体をばっと動かして、ばっと止まる」(笑)、そのあと段々早くなった後の、4人で踊る所はできるだけすごくゆっくりこういう踊りだ、って。例も出したんですが、膨らせてやってもらった方がいいんだろうなということで、枠組みを作って、みんなでアレンジしていいよ、みたいな感じでコンテを上げました。chelmicoさんの曲がすごくよくて、映像研の女子高生たちはあんまりキャンキャンしたところとか元気なところを表に出さないので、そういう部分をオープニングで元気にやれるといいかなと思いました。

TVアニメ「映像研には手を出すな!」OP動画【1/5(日)24:10~NHK総合テレビにて放送開始】 - YouTube


G:
映像にはキャラクターを示すアイコンがいっぱいでてきますけど、それに関しても、監督からは「こういうの入れた方がいいよ」というのは特に指示はなく?

湯浅:
はい。そこは具体的に細かく指定はしていないですね。たくさんばーっと出てきて、彼女達の好きなこんなアイコンやあんなアイコンのパターンがあるといいよ、と方向を出しただけです。

Q:
12話まで制作を終えた最初のご感想を伺いたいです。

湯浅:
最後はドタバタだったので、ちょっと悔いもありつつ「とりあえず上げきった」という感じで終了して、でも内容的には「できた」という感じでいました。感想は探して見ているのですが、最終回は賛否あって、「伝わっていないところがあるんだな」という風に思いました。

Q:
魂を込めた諦めと妥協の結石みたいな……

湯浅:
そうですね。精いっぱいの結果です。

Q:
12話の制作過程の中で、監督として印象に残っているエピソードってありますか?

湯浅:
最終話の作監の小林直樹君が、パーティクルっていう、ビルがばーんって爆発した時に上がる細かいカケラみたいなものをたくさん作っていました。木のかけらとか、ボルトとか、使えないくらいにものすごい量があって、小林君はすごく楽しそうに「これ使ってください」って言っていて、楽しそうに仕事する人に久しぶりに見た感じがして「なんかいいな」と思いましたね。

Q:
いろんなスタッフさんのアイデアも作品に反映されていったんですか?

湯浅:
たくさんではないですが、演出がいい巻は細かい所をしっかりやってもらっています。怪力線の掃射口にはガラスがあるんだとか調べていつのまにかついていたりとか。8話では背景描写が細かく指定されてあったり。でも全体的には方向を揃える事が結構困難で、そこは社内のスタッフに協力してもらいながらできるだけ揃える様にしました。

Q:
アニメのオリジナル要素も入っていると思うんですけど、そのあたりは監督が中心に取り入れられたんですか?原作者の大童さんの監修ですか?

湯浅:
それほどオリジナル要素はないんです。基本的に原作準拠で、原作ファンをあんまりがっかりさせないような形でやりたいなと考えていました。7話の水崎が乗っている布も「あれはどういう布なんだ?」と、どこにつながっているのか、ロボットの基地の発進口はどうなっているのかといったことは、大童さんに質問して作っていきました。全体の構成としては、脚本家の木戸さんや、プロデューサーさんたちと脚本会議で話をしながら……なかなか理解されないですけど、マンガをそのままアニメに置きかえることは無理なので、できるだけ「アニメだから面白い」というか、「アニメに置きかえた時に、どうやったら原作の良さが一番出るのかな」ということを考えながらやっていきました。それと、先ほども言った、原作ではちょっと分かりにくいところを前面に出して、1回見て分かるような感じにしたほうがアニメにする意味があるかなと思ってやっています。

Q:
先ほど「行間」の話がありました。動いていないものを動かすとなって、苦労はされましたか?

湯浅:
そうですね……「すごいアニメを作っている」という設定なので、「すごいアニメを作ればいいのかな」と思っていたんですけど、「すごくするのは無理だよな」って(笑) 「すごいアニメを見てる」体をどうやってやるかとか。やってるうちにキャラクターに愛着が沸いたりもして、小野なんかは人気がありました。「学園祭で盛り上がる」というのは、最初は脚本家の木戸さんがやり始めて、「そんなノリでもいいかな」と、ちょっと「うる星やつら」的な学園祭ノリかなと思ってやりました。


Q:
「すごいアニメ」は、マンガであれば読者に想像させられますけど、アニメでは「本当にすごいアニメを作らない」といけないというのが、すごく難しいと思いました。

湯浅:
そうですね。意外と本編を映すシーンは短くて、見ている人の反応を中心に1本目、2本目をやって、3本目はストーリーがあるので、「結果、どうしたんだろう」というのを最後に視聴者に見てもらう形にしました。

Q:
『映像研には手を出すな!』では、湯浅監督は「監督」だけではなくシリーズ構成もご自身で手掛けられていますが。

湯浅:
本編に「シリーズ構成」とクレジットはしてなくて、今回はたまたま最初にシリーズ構成はやるって言ってた名残が、活字であちこちに残っているんだと思います。いつもと変わらず、「自分がやりたい」という形を、みんなの意見をいただきながら、うまく着地させるというだけです。やってくれる人がいたらどんどん渡すし、なかったらこっちがやっていくという感じですね。全部の構成を自分が出したかというと、そうでない所もあるので、クレジットは外しました。今回は結構スケジュールもきつかったので、コンテや演出回を自分では持たずに、できるだけ人にやってもらう方向で、「サイエンスSARUの若手を使って演出を押さえながら、本人達にも成長してもらおう」と考えながらやっていました。

Q:
今回、作画面では特に若手からベテランの方まで、多種多様な方々が腕を振るってるという印象を持ちました。監督自身がアニメーターとしてのキャリアをお持ちで、アニメーションの表現に関してスタッフを動かすということには、どのように向き合ってこられたのでしょうか。

湯浅:
そうですね。「結構できるな」という方には方向性だけ示してうまくやってもらう感じで、「できてないな」と思ったらしつこく言う、という。

(一同、笑)

湯浅:
それでもできなかったら直していく、みたいな作業ですかね……。作品によって「こういう風にやったらいい」という考えはできるだけお伝えしていて、それにある程度沿ってくれる方は、何の問題もないです。そうでない方がたくさんいるので、それが大変なんですが。

Q:
キャラクターデザイン・総作画監督(第1話)の浅野直之さんに話を伺ったとき、「今回若手が多かった分、僕らベテランだとちょっと『ここはこうしないな』って感覚が生かされていて、そこがかえって面白くなっていた」とおっしゃっていました。それは感じましたか?

湯浅:
うーん……あまり分かんなかったな。

(一同、笑)

湯浅:
違和感はないですね。できるだけ寛容に、理解できる範疇の物を残しています。

G:
「すごいアニメ」として出てくる「芝浜UFO大戦」は放送内で8分もありました。ところが原作を読み直してみると、作品完成後、3人が中身を見ているところまで飛んでいて、背景のコマが出てきただけでした。いかにも原作にありそうなものがそのまま映像化されていましたが、いかにしてあの内容を作っていったんですか?

湯浅:
3巻を読んで「内容はどうなってるんだろう?」というのは気になっていて、それと「どういう風に作り上げたのか」も気になっていました。それを考えていくと「次はどうするか……学校から外に出て作る。最初に『町を舞台に』と言っているんで、町ということなんだろう。町といえば『町おこし』とか、そういう風にやっていくのかな」と。

G:
なるほど……。

湯浅:
「浅草はストーリーについてどう考えているんだろう……あまり設定から入る人って考えてないよな」というところで、「どういう風に考えていったんだろう」ということを考えて、ああいう風な感じになりました。原作もその後、そんな感じになっていって、「やっぱりストーリーが気になってたんだ」とか、町おこしみたいなのもあって「同じ方向に行くんだな」という風に思いました。大童さんがその方向に行くなら、自分も間違っていなかったかなと、ちょっとほっとする部分もありました、

Q:
アニメーションプロデューサーのチェ・ウニョンさんにお話を伺ったときに「監督は毎回作品ごとにいろいろ新しい挑戦をしている」と伺ったんですが、今回の『映像研には手を出すな!』ではどういう挑戦をされて、どう実現されたのでしょうか?

湯浅:
アニメーション内のアニメーションとか、イメージをどう表現するんだというところがあって、実際作っているアニメーションは線なしで中間カラーの多い、本編とは違う感じという風に考えて、イメージは水彩っぽくやろうと考えていました。撮影監督の関谷さんが、セルも撮影処理で水彩風にできるとおっしゃってくださったので、『ホーホケキョ となりの山田くん』のときほどは難しくないだろうと動画も水彩風にできるようになりました。そして1番考えていたのが「水彩の背景」は平面的になってしまうので、それに立体的に入っていったら面白いなということでした。『ピンポン』では「マンガのコマを生かした画面作りをする」、『四畳半神話大系』では「背景に柄を入れてみる」「あまり色を使わずにやってみる」「肌の色が白い」とかやってきましたが、『映像研には手を出すな!』では「水彩の絵が動いて、それが立体的に動く」というのが映像の1番のポイントになると考えていたので、特殊撮影の方にも入っていただいて、相談しながら、無理をお願いしながらやっていきました。


Q:
実際やられてみて、成果としてはどのように感じられていますか?

湯浅:
時間がなく、まだまだの部分はありますけど、関谷さん達が入ってくるまで無理だと思っていた様な事がたくさん出きました。全然面白い、『映像研』なりの映像になったかなと思っています。

Q:
「水彩のような表現で立体的なものをやってみたい」というお話でしたけど、その狙いとしては、どういう風なところを見せたいというのがあったんですか?

湯浅:
「絵の中に入っていく」という感じですね。書き割りだと「平面的に入っていきました」って記号になるんですけど、実際に水彩の背景が出て来て、「絵だな」と思っていたら急にそれにパースがついて立体的に動いたら面白いな、って。「きちんとした背景がきちんと3Dで動いている」という感じではなくて「適当な平面的な絵がが立体的に動いている」という、荒削りのイメージの中にちゃんと空間があるってのがいいのかなと思いました。

Q:
見る人はすごく驚いてたみたいですね。

湯浅:
そういう作品をアニメーションの映画祭で見かけたことがあって。多分、もっと簡単な「筆でさっと引いたようなものが立体的に動いていく」みたいな作品だったんですけど、できるだけちゃんとしてないものの方が、空間ができたときに自分も面白いと考えたので、「できるだけきっちりしないように」とやっていったんですが、逆に今回はそれが難しかったです。プロの方たちは「きっちり作る」のが仕事なので。そこが挑戦といえば挑戦かも知れません。

Q:
今後もその手法は使っていけそうな表現だと感じましたか?

湯浅:
必要があって、やれる方がいたらやっていく感じだと思いますが。まだまだやり足りないところも、もっともっとうまくできるんじゃないかというところもあるので、またいつか機会があれば挑戦してみたいですね。

Q:
現実世界と妄想世界を描き分ける点では、SEも、妄想の世界ではキャストの方が地声で発せられてるんですけど、あれはどなたのアイデアなんですか?

湯浅:
僕だと思うんですけれど、結構早くから言っていたのにあまり伝わっていなかったようで、音響監督の木村絵理子さんは「現場でそんなこと言われても」という感じでした。「あれ?俺、言ってたような気がするけどな……」と思いましたが(笑) やっぱり何か「作り物の世界」というか、人が話している世界に入ってる感じ? 柳沢慎吾さんがパトカーを声だけで演じる芝居、擬音を言いながらすごく楽しげに伝わって来ますよね。あんな感じなのかな。

(一同、笑)

湯浅:
ものすごい熱を込めてその情景を語っていることが、実際には絵になって僕らには見えている。なので、音も基本的には彼女らが発している、みたいな感じです。「イメージシーンは全部声でやろう」というのはやってみて「大変すぎて無理だ」となりましたが、それでもやってる感がでるようにお願いしてやっていました。

Q:
木村音響監督から、音楽に関しては木村さんが関わる前にすでに湯浅監督がオオルタイチさんに打診していたと聞きました。何かオオルタイチさんに頼みたいきっかけがあったんですか?

湯浅:
オオルタイチさんとはきちんとまだやれたことがなかったんですが、やりたいと思っていた音楽家でした。彼の非凡で明るいところが好きで、『映像研』の不思議でクリエイティブな世界に、きっと変なもの、想像のつかないものを入れてくれるんじゃないかと思ってお願いしました。でも、思った以上に変なものときちんとしたものができていて、「やっぱちゃんときちんとできるんだな」と思いました。

Q:
イメージや劇中で流れるアニメのシーンもありますけども、そのあたりも監督が音楽メニューをしっかり作り込んだ上で発注されたんですか?

湯浅:
ざっくりですけど。「ちょっと少なめだ」と言われたんですが、少なめのままいくことになっちゃいました。

Q:
なるほど。

湯浅:
選曲で合田麻衣子さんが入ってくださっていて、何度か一緒にやっていて、技や手口に学ぶ所がいっぱいあるんですよね。さすがのプロだなと思うんですが。ちょっとした曲の編集もしてくれて、後半では「こんな曲あったっけ?」って何かの楽器が抜けた曲が新鮮に聴こえたり(笑)、そういうのも合田さんにやっていただいてます。なんとなく想定で音楽の構成も考えているんですが、上手く合うのがあるとパターンにしていったり。後半になってくると「こういう風にしたい」というのがだんだん出て来て「この曲はこれに使いたい、あれに使いたい」というのはあるんですが、後半は音や音楽にフィーチャーするようになっていったので、それに合わせて作っていくような感じになりました。

Q:
監督の中で『映像研には手を出すな!』を象徴している曲は何かありますか?

湯浅:
PVに使われた曲は、学園祭をテーマに作られたものだったような気がするんですけど、もうこれがテーマになったなって(笑)

TVアニメ「映像研には手を出すな!」PV 第2弾 - YouTube


湯浅:
とても不思議で色んな文化がミックスされた様な曲で。それをイメージシーンのテーマみたいに使っていて。1話で合田さんが最初に置いたのかな?……ちょっと覚えていないですが、それで「いいな」という感じになりました。あと、各作中アニメーションにテーマ曲を1曲ずつ作っていただいてたので、それはできるだけその各本編でべったり使っていこうと考えていました。

Q:
音楽の話題では、「芝浜UFO大戦」の時には『映像研』のもとには大変な音楽がやってきて、はちゃめちゃなことになっていましたが、今回、オオルタイチさんから曲が上がってきたとき、監督としてはどんな印象でしたか?発注通りバッチリな曲でしたか?

湯浅:
最初は裏を行ってる曲が多いような感じがしました。「あれ?こんな曲、大丈夫かな?」みたいな。

(一同、笑)

湯浅:
でも、そういう意外性込みで頼んだんだから、とOKして。でも実際にやってゆくと、僕の考えが及ばなかっただけで、本当にしっくりくる曲を作っていたんだなと。最初は「自分のイメージした曲にぴったりくるのを望む」というよりは、「オオルタイチさんが作った曲をどうやってはめるか」のように考えていました。「これは楽しいときに使える曲なのか?どうやったら使えるんだ?今は使えないか」みたいに。「でも、こうすれば使えるか」とか思いながらやっていました。でも、後から考えると、全然しっくりきてて、全部ぴったしの曲だったんです。

Q:
曲に対して「これはダメだ」ということはなく、作品の側から合わせていった感じですか?

湯浅:
そうですね、リテイクはほとんど出していないです。「いいですね、でももうちょっとワーッとなるといいですね」くらい出しただけだったと思います。こちらの想像がつかない曲を作れる方なので、あまりこちらのベタな考えで縛りたくないと思いましたし、それが『映像研』の力になると思っていました。

Q:
12話全部終えられて、監督のTwitterで、今後の原作の展開と少しかぶっていたけど、続きは作れますということを書かれていました。続編に対する期待の声も多々あると思うんですが、その辺については「作りたいな」というご希望や、あるいは構想みたいなものはあるのでしょうか?

湯浅:
「やれ」と言われれば考えますが(笑) ただ、「僕がやりきれていないもの」で「大童さんがやりたいこと」あるだろうなと思うところもあって、もっとメカやSF考証に詳しい人が頭で作ったらどうなるんだろうと思います。続きを作るか、もし同じ内容が映画にまとまるなら、構成を全然変えた方が面白いかもしれないですね。マンガもあるし、テレビでも見たので、という人が見るなら、また違ったものが見られるもといいなと。

G:
監督の仕事として時間がかかった部分はどういったところでしたか?

湯浅:
キャラクターのお芝居とかが、結構大変でしたね。あまり僕はコンテを直す方ではないんですが、今回はなかなか意図がうまく伝わらなくて。上手く行ってない巻はかなり直しを入れて。そのキャラクターらしい芝居で、表現の方向が統一できるように、できるだけ努力しました。

G:
直しの前は、湯浅監督のイメージする映像研3人の動きではないような芝居の付け方だったのですか?

湯浅:
そうですね。わたしだけではないと思いますが。今までよりも意図が伝わっていないなと感じる部分があって。説明はしているけれどそうなっていないな、と。

G:
本作では、キャラクターたちの動きが特徴的だからという部分も理由としてあるんでしょうか?

湯浅:
特にマンガっぽい動きは浅草以外、そんなに意図してないので、理解力ですかね。担当される人によっては「ああ、この人は大丈夫だ」という話数もあってそんなでもないのですが、それが飛躍になったりすると、またどこまでのノリが許されるのかとかとかが問題になって。自分がキャラクターの特徴や動きの様式ににこだわりがあったのか「今まではそんなに直さなかったのに、なぜ今こんなに直しているんだろう」と思うこともありました。原作のポーズを意識して下さいと言っても、そうなってない事もたくさんありましたし。時期的なものもあるかもしれません。同時期にやっていたもっとわかりやすそうな様式の作品もそうだったので。出来る限り「キャラクターらしさ」という点は気にかけました。

G:
なるほど。

湯浅:
「金森らしい動き」「浅草らしい動き」「水崎らしい動き」で、「こういう表情はしないんじゃないか」「するんじゃないかな」とか。原作にあるショットはできるだけ原作通りにしたいという思いもあり、「これは原作通りになってないな」「そこはもっと原作っぽい方がいいな」というところを調整して、でもちょっと付け加えてある良いアイデアがあったらそこも生かしながら、みたいな感じですね。

G:
企画時点では第2巻が出るか出ないかぐらいのタイミングだったという話でしたが、これは、連載でちょうど映像研が3作目を作っていたから3章構成に、ということになったのでしょうか。

湯浅:
3巻を見て決めよう、みたいなところでした。見てみたら、1巻が浅草中心で2巻が水崎、3巻は金森にスポットが当たっていたので、これは3本やった方がよさそうだと考えました。それに、3本の方がスケールよくまとめられそうでもありました。


G:
『映像研には手を出すな!』を見ていて、そしていろいろな作品のスタッフの方々に話を聞いていて、アニメ制作は集団でのコミュニケーションが非常に大事であることがわかります。アニメ制作の初心者に向けて、「集団での制作におけるコミュニケーションでは、ここに気をつけるべきだ」や「ここが大事だぞ」というポイントがあれば教えてください。

湯浅:
みんな考えていることは違うんですよね。正しいことがはっきり分かっているという人はいないと思いますが、ある程度は協調性も必要です。この人が中心だという人がいて、その人を基準として考えないと全体がまとまらない。でも、「協調性」だけでもダメでちゃんと意見も言えなきゃいけない。もちろん自然とツーカーになれる仲間もいると思いますが……人と人って、なかなかわかり合えないんです。『映像研』の中でも、浅草が美術部に説明を失敗するシーンがありますね。あれは、自分と同じ人間だと思って話をしたから失敗したんです。皆、違う人間なんだ。考え方は色々あるんだ。自分がしゃべった事、見せた物以外は、自分が見た物を聞いた物を、見た事も聞いた事もないんだという、相手の体で話さないといけないし、しゃべっても人によっては半分も伝わらないと考えた方がいい。繰り返し根気よくコミュニケーションを続けていく事が必要です。それで分かり合えた人が仲間です。何が1番大事かというと出来上がる作品で、不本意で合わせてくれた仲間も、出来上がって内容が良ければ、そこで理解してくれます。基本は助け合いなので、自分だけ上手く出来てもダメで、上手く行ってない人がいたらフォローしてあげる。皆が目指すべき方向は作品の成功で、その為に全力で合わせたり、意見を言う。適当に作った物は感動もないです。年を取ってからだと、みんな自分の中にやり方が決まってきて、割とぶつかることも多いから、できるだけ若いうちに柔軟にいろんなものの見方や考え方ができるといいですね。

G:
なるほど。

湯浅:
自分の長所と短所、他の人の長所と短所を見て、それも全部違うかもしれないという考えも持って、臨機応変にコミュニケーションできるといいですけれど。そして「楽しく」できないと。作業自体は必ず大変になるんで、みんなが楽しい状況になった方がいいです。そういうことに全員が気をつけるのは難しいですけれど。『映像研』のような3人がそろうことはすごく理想的です。

G:
なかなか、こんなにも理想的な3人組はできない?

湯浅:
そうですね。みんな一長一短あると思いますし、やりたいことが被っているか違っているかもわからないし……難しいところです。

G:
監督の長いキャリアの経験と知識から、『映像研』のようなことを学生時代にやるのであれば、こうしておいた方がいい、みたいな点はありますか?

湯浅:
若い人になにか言うのは、「年寄りが何か言ってる」という感じがして嫌なんです(笑) でも、『映像研』って、できちゃうところがいいと思うんです。だからこそ、みんな飛びつくんだとも思います。そうですね……「そんな簡単じゃない」と言っておきましょう。でも、できる可能性は絶対にあって、そこが奇跡的にうまくいくと『映像研』になります。でも、『映像研』に至るのは簡単なものではなくて、いろいろな考えと努力が必要だと思います。

G:
ふーむ……

湯浅:
でも、大概はなんでもできるんですよ。やり方次第です。時間はかかると思いますけど、イメージで「やれる」と思ったことは大概できます。


G:
そうなんですね。

湯浅:
創作は難しいですけど……作品を作るなら、絶対に作りきったほうがいいです。作りきらないと分からないです。ほとんどの人は、作りきらずに終わります。作りきらずに終わったということは、多分何かがダメだったんですよね。でも、作ってしまえば「次はこうやろう」という課題が出てくるので、「とりあえず最後まで作り切ること」ということも言っておきます。僕も、会社に入ってくる人には必ず「1回は最後まで付き合うこと」と言っています。最初のうち「ああしろ、こうしろ」って言われていることは、何のためにそうしているのかわからないと思うんです。いろんな作品の経過を見て、最終的にこういう風にできあがるということがわかれば、「あれは、このためのものだったんだ」ということが分かります。それが分かった上で嫌なんだったら……辞めたっていいわけですし。作品はみんなで作るけれど、最後まで作らなきゃ何が良かったのか、何が悪かったのかは、たぶんわからないと思います。

G:
まずは完成を。

湯浅:
そうです。とにかく、何が何でも完成させるところからです。

G:
作品制作にあたっては「作りたいもの」と「実際に作れるもの」があって、そのバランスをどう取るかが難しいと思います。湯浅監督は、バランスをどのように取ってきましたか?

湯浅:
常に楽しみを見つけます。できる範囲で常に楽しいこと。みんなでできる100%のものを作ろうとすると破綻するので、「70%をキープしよう」みたいな感じでやっています。大変なことをしようとするなら、楽なところを必ず作って、大変なことも出来るだけ楽なコスパの高いやり方でやります。また、クオリティは低い部分はちょっとテコ入れすればどんどん良くなるんですが、クオリティが高い部分ほど、ちょっとクオリティを上げるにもかかる労力がどんどん大きくなっていくので、「どのあたりが一番コスパよく、いい作品に見えるのか」ということを念頭に置いてやっていきます。そして、「無理はしないこと」です。自分では無理をしていないつもりでも、必ず大変になっていくので、最初から大変なことを考えると破綻するというように思っています。ハードルを低く設定しても、高く跳ぶ人は跳んじゃうので、予想される人は飛んでも大丈夫な所に配置するとか。

G:
なるほど。

湯浅:
ハードルは低く、余裕は持っておく。「みんな、ハードルを跳ぶな」というと、それはそれでつまらない作業になっていくので「やれるならやってもいいよ」という感じです。

G:
そのお話の例だと、水崎はもう、あまりコスパが良くないような部分まで手を入れている感じがしますね。

湯浅:
まだ先が見えずに、とにかく枠が分かっていないんですよね。「自分のやりたいこと」があるけど、スケジュールや、自分のできることは分かってない。彼女が一部だといいのですが、作画全体を持っているので問題になってきます。浅草は金森と水崎の中間にいる人物なのかなと思います。ある程度「自分のできること」がわかっているし、金森から言われているからスケジュールなんかも気にはしている。やがては水崎もやっていくと思いますけどね。できるフリーのアニメーターは自分でスケジュールを作れる、計算できる人になっていきます。

G:
その2人を動かすのが金森です。

湯浅:
金森のすごいところは、すごく動いているところです。もしかしたら一番働いているんじゃないかという感じがしますが、そこはあまり見せない。浅草や水崎を使役しているようで、すごく尊重しているところがプロデューサーっぽいなと思います。そんなプロデューサー、現実にはなかなかいないですが、「できるプロデューサー」という感じがします。

G:
『映像研』では浅草、金森、水崎の3人に音響担当の百目鬼を加えた4人の、すごい才能を持った子たちが作品を作っていますが、湯浅監督が実際に作品を作っていくなら、どういった人がいいですが?

湯浅:
4人ともいいなと思います。いい人しかいないので。でも僕はダメな人というか、付き合いづらい人ともやりたいですね。その方が、作品は面白くなるような気がします。自分とは反対の考えを持っている人というのもいいと思います。大きく破綻させる人でさえなければ……そういう人もいっぱいいるので、そうじゃなければ大体いいなと。

G:
『映像研』では、そこまでの人は出てこないですね(笑)

湯浅:
そうですね(笑) 『映像研には手を出すな!』をやってて思ったのは「彼女らみたいな人たちが仲間にいるといいんだろうな」と思わされる3人だということですね。

G:
作中ですごく印象的だったのが、顧問の藤本先生の「遊びも休暇もなしに仕事できるわけないよな。必要以上に働くより隙を見つけては遊ぶ、それが仕事の極意」という言葉です。湯浅監督にとって「仕事の極意」はなにかありますか?


湯浅:
「とにかく楽しくやること」です。あまり深刻に考えない、大変でも深刻にはならない、臨機応変に。最初考えていた事がそのまま出来る様な現場は中々ないです。その時々でピンチをチャンスに変えて、より面白い作品になるよう、コスパ高い方法で、できるだけ楽しくやる。楽しい作品にする。「大変にならないようにいい作品が出来る」というのは無理だと思っているので、精一杯のところで楽しくやらないと、と。

G:
最後に、作品からは少し離れてしまうんですが、監督がTwitterで映画のことをツイートしていたときに、作品がかなり多岐にわたっていましたが、好みの映画はどういったものなのですか?

湯浅:
いろんなものを見たいんです。「このジャンルが好き」というのは自分の中にはなくて、「見たことがないもので面白いものがあったら見たい」。「人が面白いと言っていて自分が分からなかったら、自分が面白いと思えるまで見たい」という感じでしょうか。年を取ってくると、最初は理解できない映画もあるんです。「ティム・バートンは、なんでこんな壊れた映画を作るんだろう」って、好きなのは最初は美術だけだったんです。

G:
(笑)

湯浅:
でも、そういう壊れたところが、逆にリアリティだったり、彼の映画への愛情ということが分かってくると「ああ、なるほどな」と。自分の新しい扉を開いてくれるものは全部好きですし、新しいものが見たいです。「自分が見たことないもの」。食べ物もそうですね。同じものを食べるよりは、食べたことのないものを食べたい。

G:
そういうのが刺激になって作品作りにつながっていく。

湯浅:
楽しみですし、作品にもどんどんつながっていきます。何でも作品の参考になると思います。自分が感動したものって、必ず作品に使えるので、いつも何かに感動していたいですね。

G:
なるほど。本日はありがとうございました。

「映像研には手を出すな!」は、2020年4月1日(水)からダウンロード販売がスタート、4月15日(水)からはレンタル配信も始まっていて、手軽に全話を追いかけることが可能。また、Blu-Ray COMPLETE BOXが6月24日(水)発売で、絶賛予約受付中です。


また『映像研』は4月からドラマ版が展開されているほか、実写映画版の公開も控えており、まだまだ楽しませてくれそうです。

映画『映像研には手を出すな!』公式サイト
https://eizouken-saikyo.com/

©2020 大童澄瞳・小学館/「映像研」製作委員会

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「夜は短し歩けよ乙女」「夜明け告げるルーのうた」と映画2本が連続公開される湯浅政明監督にインタビュー - GIGAZINE

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