アマゾン盆地に点在する「小さな森」が1万年以上昔に農業が行われていた痕跡だと判明
by Umberto Lombardo
アマゾン川流域に広がるアマゾン盆地には、アマゾンと聞いて連想するような熱帯雨林だけでなく、草原地帯も存在します。そんなアマゾン盆地に位置するボリビア北部のモホスという地域には、草原地帯の中に点々と小島のような「森」が存在していることが知られており、研究者らはこの小さな森が「先史時代の人々が農業を行った痕跡」だという証拠を発見しました。
Early Holocene crop cultivation and landscape modification in Amazonia | Nature
https://www.nature.com/articles/s41586-020-2162-7
Evidence of 10,000-Year-Old Crops Points to the Amazon as an Early Agricultural Hotspot
https://gizmodo.com/evidence-of-10-000-year-old-crops-points-to-the-amazon-1842749202
Strange Forest Patches Littering The Amazon Point to Agriculture 10,000 Years Ago
https://www.sciencealert.com/the-amazon-basin-was-an-ancient-agricultural-hotspot-10-000-year-old-evidence-says
アマゾン盆地南西部に位置するモホスの草原地帯にある小さな森は、森は周囲の地面と比較して数フィート(数十センチ~数メートル)ほど高くなっており、合計で数千個以上も存在しています。研究者らはこの森が自然にできたものではなく、約1万年前に最終氷期が終わった後の完新世初期~中期に暮らした人類の住居跡だと考えてきました。
by Umberto Lombardo
この小さな森の謎を解き明かすため、スイスやスペイン、イギリス、ボリビア、ブラジルの研究者らのチームは、合計で6643個もの小さな森をマッピングし、そのうち82の森から土壌を採取して堆積物の分析を行いました。その結果、堆積物の中からプラント・オパールと呼ばれる、植物内部に作られるシリカの粒子が発見されたそうです。
プラント・オパールは、植物が根から吸収したケイ酸が特定の細胞の細胞壁に蓄積し、細胞内に形成されたガラス質の細胞体です。プラント・オパールは植物ごとに特徴があるため、研究チームは土壌中のプラント・オパールを分析することで、土壌に含まれていた植物の種類を特定することができます。また、放射性炭素年代測定を用いることで、プラント・オパールが形成された年代を特定することも可能とのこと。
研究チームが合計30の森で採取された堆積物のプラント・オパールについて分析した結果、キャッサバやカボチャ、トウモロコシなどの栽培作物が含まれていたことが判明。また、年代測定からキャッサバは1万350年以上、カボチャは1万250年以上、トウモロコシも6850年以上も古いものであることも判明し、なんと1万年以上も昔からアマゾン盆地の草原地帯では、これらの作物が栽培されていた可能性が浮上しました。
by Thomas Quine
以前から考古学者や地理学者、生物学者らは、アマゾン南西部でかなり早い時期から作物の栽培が行われてきたと主張してきましたが、これまでこの地域で古くから農業が行われていたという証拠は見つかっていませんでした。しかし、今回の発見によって中国・中東・メソアメリカ・アンデス山脈の4つに加え、アマゾン南西部でもかなり初期から農業が行われてきた可能性が示されたとのこと。
今回の研究を受けて、ブラジル・サンパウロ大学の植物学・考古学者であるジェニファー・ワトリング氏は、「これはアマゾンと南米の考古学にとって非常に重要な貢献です」と指摘。キャッサバは遺伝子研究から8000~1万年前に栽培され始めていたことが判明していましたが、カボチャも1万年以上昔から栽培されていたことは驚くべき発見だとワトリング氏は述べています。
エクセター大学の考古学教授で、研究チームの一員でもあるJosé Iriarte氏は、「私たちが見つけた証拠は、この地域の最も初期の入植者が単なる熱帯の狩猟採集民族だったわけではなく、作物を栽培していたことを示しています」とコメント。アマゾン南西部に住み始めた初期の人々が、草食動物や魚といった獲物に加えて、炭水化物を豊富に含む作物を食べていた可能性が高いと研究チームは主張しました。
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